第十五話 憂鬱
「助ける……ねえ」
そう言った颯太の表情は……
「ええっ!思いっ切り嫌そうな顔しないで下さいよ!」
ご想像にお任せする。
「お願いします!何でもしますからっ!」
「……って言われても、俺そんなに優しくないから」
当然のごとく、颯太は一瞬で斬り捨てる。
「ソウタさん……」
クレアは、そんな颯太に恐る恐る声をかけた。
「ん?あー、クレアは助けたいのか」
クレアとドワーフ達に見つめられながら、颯太は黙り込んだ。
「……何でもの内容によるな。本当に、信じて良いんだな?」
「はいっ!命に代えてもっ!」
ドワーフが答え、更に颯太は考え込む。
「別に、助けてやっても良い。だが、それ相応の報酬が欲しい。結果的に、それがお前らの望んだ結果になるとは、限らないがな」
「え……?それって……まさか」
「どうする?俺が手伝う代わりに報酬を払うか、それとも手伝わない代わりに今までと同じ生活を続けるか……。それは、お前らが選べ」
今度はドワーフ達が悩む番。
「お願いします!助けて下さい!」
では無かった。
「じゃあ、行くか。此処からの距離は?」
颯太は、ドワーフに聞いた。
「約…三キロメートル程……でしょうか?」
「成る程。方向は?」
「三時の方向です」
ボオォォォ。
颯太を中心として、強い風が吹く。
「目を瞑ってろ」
そして、その風がやむと……
「ここは……王国!?」
「行くぞ」
驚くドワーフ達を横目にみながら、颯太とクレアはどんどん先に進んで行く。
「あ、あの……これは一体?」
「詳しいことは教えられないな。取り敢えず、王宮に向かうか」
「で、ですが……警備が厳重なので、入れないと思いますよ」
ドワーフ達の後に続いて、颯太とクレアは歩いていく。
「此処が王宮です」
一言で表すと、デカい。
「この王宮は、兎に角広い。全ての部屋を回ろうとすると、休まず歩き続けても二日間はかかります。無闇に歩き回っても、迷いに迷って最終的には餓死します」
「……後は、俺の管轄だな。クレアは後ろについて、後衛を頼む。まあ、前衛に回っても問題ないがな。ドワーフ達は全員、俺とクレアの間に入れ。何かを見つけたら、すぐに報告しろ」
颯太は、二人の兵士が警備しているにも関わらず、ドアに向かって進んで行く。
が、当然ながら止められる。
「用件は?」
「此処の国王に会わせろ」
「無理だな。引き取り願う」
「そうか……残念だ」
颯太が兵士の眼を見て、何かを呟く、すると。
「申し訳ございません。どうぞ。此処からお入り下さい」
兵士はそう言った後、その場に膝をついた。
「先を急……」
「あのっ!」
颯太が言いかけたとき、一人のドワーフが声を上げた。
「何だ?」
「今、何をなさったのですか?」
「……企業秘密だ」
別に言っても問題無かったし、良かったのだが、喋るのが面倒くさいから言わなかったとの理由で、企業秘密と言う言葉を使ったのだ。
「面倒臭い……」
歩きながら欠伸を噛み殺す颯太であった。