第十話 出会うpart1の1
「……さて。どうしようか……」
城から転移した颯太は、とある不思議な村に辿り着いていた。
人の気配は確かにあるのだが、姿が見えないのだ。
道具屋、武器店、防具店など、何処を見ても人がいないのだ。
「……?」
村を歩いていると、颯太は小さな家の前にさしかかった。
すると。
「こっちへ!」
家の窓から手が伸び、颯太を家の中に引きずり込んだ。
「ちょっ!」
どうやら家の中には、颯太を家に入れた少女しか居ないようだった。
「何故、こんな所に来たのですか?こんな村に、もう用事などあるはずがないでしょう」
少女は颯太を見据えて聞いてきた。
「旅の途中でな。転移魔法を使ったら、此処に辿り着いたんだ。で、この村は一体何だ?」
「……魔物達が…皆を、殺していった。皆、殺されていった……」
少女は悲しげに下を向き、肩をふるわせた。
「名前は?」
颯太は突然、少女に聞いた。
「な、名前?ク、クレア」
クレアは戸惑いながらも、颯太に答えた。
クレア LV69
HP 3500/5000
MP 2000/2000
魔法 銀属性
スキル 錯乱
商号 黄金の星使い
颯太はクレアのステータスを解析する。
しかし、気になることがあった。
「黄金の星使い?銀属性?」
「解析スキルをお持ちなのですね。……これは、私にもよく分かりません。生まれつきのものですから」
通常、魔法は、赤属性、青属性、緑属性、黄属性、白属性、黒属性の六属性から成っている。
希に颯太のように、無属性の者も居るが、人数としてはとても少ない。
しかし、クレアの銀属性は、今まで発見されたことがない。
そのため、どんなものかも分からないのだ。
「クレア、俺と旅をしないか?」
「はい?」
「嫌なら別に、無理しろとは言わない。但、此処に居ても何も良いことなんてないだろう?」
「……」
クレアは生まれ育ったこの村に愛着があるのか、黙ったままだ。
やっと口を開いたと思ったら……
「私が先程話した魔物を退治して下さい。そうすれば、仲間になります」
恐ろしいことを口にした。
*サンライズ草原*
「……で、此処にその魔物が居るのか?」
此処はサンライズ草原。
クレアの村を襲った、魔物が生活している草原だ。
颯太はクレアに案内されて、この草原へと足を踏み入れたのだ。
「はい。ですが戦うとき、一つだけ守って欲しいことがあります」
「……?何だ?」
「絶対に、魔物と目を合わせないで下さい。奴は、忘れ去りたい過去をはっきりと映し出します。そのせいで戦闘不能に陥ることも、少なくないとか」
「過去……か。分かった気を付ける」
颯太は、草原を進んでいく。
これから始まる戦いの全貌を、知らないまま……。