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そして、
「郁斗の死に顔は、私の死に顔」
そうなんだ。
2人で1つの相思相愛な双子。同じ顔をしているのに、同じ次元にいない。
それを目の当たりにした葬儀参列者は動揺を隠せずに、凛子と郁斗の顔を見比べていた。
かく言う俺も、どっちがどっちなのか錯覚を起こす程、頭が混乱した。
2人は、似すぎていたんだ。
「郁斗は私を置いて逝ってしまったけれど……
私は郁斗を置いて年を重ねたくない……6月なんて、無くなってしまえば良い……」
凛子は生きながらにして、自分の死に顔を見た。
加えて、相思相愛の片割れを失ったのだ。そのショックは余りあるものだろう。
それでも、言い収まっちゃいられない。
肯定してしまったら、何処か死に急ぐ凛子の背を後押しするような気がする。
「6月が無かったら、お前は生まれなかったじゃねぇか」
「6月が無くなれば、郁斗は死なない」
郁斗は誕生日を迎える少し前に他界した。
6月は双子の誕生月なのに、郁斗の命日にもなる月だ。
「6月が無かったら、郁斗も生まれなかった」
「……」
そして 郁斗の意志により、遺骨はこの海に巻かれた。
「だって……私は、着いて行けない……」
砂を噛むような凛子の言葉。
「皆、郁斗がいなくても生きて行く……郁斗を良い思い出にして、生きて行く……
私はそれが出来ずにいる……郁斗の側へ逝く事も出来ずにいる!」
ああ、そうか。だから、凛子は良く笑う。
郁斗がいなくなってからと言うもの、バカばかりやっちゃ笑いの種にするんだ。
あの仮面は、回りと自分との隔たりを隠す為のカモフラージュ。
「いつまでも、いつまでも、私は郁斗を思えば悲しい……
だけど、そんな事言ったって誰も分かってくれない! 都合のイイ理由ばかりを並べる!!」
『郁斗の分まで、頑張って生きなくちゃね』
『郁斗が見守ってるよ、彼を心配させないように頑張ろう』
『悲しみはいつか癒えるから、安心して』
「どんだけ頑張ったって、私は悲しい! 苦しい! 痛い! 痛い! 痛い!
悲しみは癒さなくちゃいけない!?
いつまでも郁斗を思って悲しんじゃいけないの!?
死んだって郁斗は、私を心配しつづければ良いのよ!!
生きてた頃と変わらず、私を心配しつづければ良いのよ!!」
あぁ、泣いてる。
コレは本来の凛子。泣き虫で、寂しがり屋で、我侭な凛子。
郁斗はそんな凛子をいつだって心配してた。
『先立つのは不安だな……凛子は泣き虫だから……
でも、俺を思って泣く凛子は俺だけのものだって、そう考えれば、満更でもないのかな』
ザザァァ……ザザァァ……
ついでに、海まで泣いているように聞える。
「私は、郁斗が与えてくれる感情の全てを消したくない!
郁斗の苦しみも忘れずに、郁斗を思って泣いて、泣いて、悲しんで、
永遠に、こうして生きて……だから、皆のように心を癒して生きられない!
良い思い出だけで郁斗を括れない!!
だから、ウザイって思われるの解かるから、郁斗の事、話せなくなる!」
そうだろうな。ああ、そうだろうよ。お前は皆のようには生きられない。
だってよ、分かるんだ、お前の気持ち。俺も、郁斗を忘れたいと思ったから。
忘れれば笑って生きてけるって、勝手に思ってたから。
なに食わぬ顔をして生きてくには、郁斗の死は重すぎる。
神様、何で凛子から郁斗を奪ってしまいましたか?
よりにもよって、郁斗を。俺じゃ、駄目でしたか?
今からでも遅くねぇよ。取り替えっこしましょうよ。
俺が代わりに死にますから、郁斗を凛子に返してあげてください。
毎晩そう思ってる。郁斗がいれば凛子はそれだけで幸せなんだ。
俺は建前の笑顔じゃなく、凛子の本当の笑顔が在れば、それでイイと思ってる。
あぁ、だから分かる。あの時の、理想的な答えが。
『私の為に死ねる?』
(いいや、)




