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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第二章:「ご主人様は教育学者!?」
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第13話 魔法学者

第03節 春~修行開始~〔2/6〕

 魔法学者。

 言うまでもないことだが、前世にはそんな職業は存在しない。


 だが、前世では多くの(オタク)が「虚構(フィクション)として」魔法を研究し、体系化し、また考察していた。俺もまたその一人だった。

 “魔法が実在する”と()う前提に立てば、「魔法を研究する」ことは、俺にとって前世からの統一テーマであるということが出来る。


「でも、だとしたら逆に疑問かも」

「スー、何が?」

「エミリーは気にならない?

 そこまで魔法に造詣(ぞうけい)が深いのなら、どうして加護が無いのかな?」

「それは逆だってさっき言ってたじゃない。加護が無いから魔法を研究したんだ、って」

「それ、違う。

 彼が言っていたのは、『加護が無いから無属性魔法を研究した』ってこと。

 魔法をここまで深く考察する人に、何故精霊神は加護を与えなかったの?」

「あっ……」


「それは、俺自身が加護を拒否したからです」

「!」


「アレク君、どういうこと?」

「加護を拒否するなんて、お前何考えてんだ?」

「いやアリシア、それ以前。

 加護を拒否するなんてことが出来るなんて、聞いたことがない」

「確かに。ルイス、お前はそんな話聞いたことあるか?」

「ないわ。

 加護を得られることは有り難いことだもの。

 そもそも拒否する理由がない(はず)よ。

 加護を得る方法があるなら誰もが知りたがるでしょうけど、得られる加護を拒絶する方法なんて、あっても知りたがるとは思えないわ」


「『加護を拒否した』というのは言葉の(あや)です。

 正しくは、『加護を得られないように自分の中の魔力の方向性を調整した』です。

 これは、逆に言うと『好きな加護を得られるように訓練出来る』ということでもありますけどね」


「好きな加護を……。それが本当なら、加護無しで泣く子はいなくなる」

「ええ。孤児院(うち)としては、是非知りたいことだわ」

「だけど、何か問題はあるのか? 副作用とか、代償とか」


「ないです。

 今年加護を得られた3人を見て、(むし)ろ俺の仮説の正しさが証明されたと思っています」


「では、具体的には?」

「自分の中の魔力。

 俺はこれのことを、『()』と呼んでいます。

 魔法は本来、この氣を(もっ)て外界の魔力を誘導し、それに術者の意思を載せて形を作り、解き放つモノなんです。


 そして、ある程度自我が確立する年齢である10歳。

 この頃には、氣が指向(嗜好(しこう))する方向が定まります。

 だからこそ、加護の儀式を以て四大精霊神のうち、いずれか一柱(ひとり)――場合によっては近しい神を含めた二柱(ふたり)――に縁を結ばせるんです。


 すると、神殿で教える呪文を唱えさえすれば、自動的にその神に言葉が伝わり、術として魔力の形を整えることが出来るようになるんです。


 なら、幼い頃から精霊神と親しく付き合えば、その精霊神の加護を受け易くなるでしょう。


 例えば、小さな頃から鍛冶場や炭焼き小屋に足を運んでいれば、火の精霊神の加護を。

 井戸や風呂場で水と(たわむ)れていれば、水の精霊神の加護を。

 空気を感じ、風を()る生活をしていれば、風の精霊神の加護を。

 土に触れ、植物や地中の生き物などと親しくしていれば、土の精霊神の加護を。


 それは嫌々(いやいや)するのではなく、自ら望み、進んで行うことで、自分の氣がその方向を指向するようになるんです。


 これまでの孤児院は、どうしても『生活の為に』やらなければならなかったのでしょう。

 そこに、子供たちの嗜好は配慮されなかった筈。


 けど、最近の子供たちは、自分で好んで仕事を選ぶ。

 それだけ精霊神の加護を得(やす)くなっているんです」


「自分で望んで精霊(しごと)を選ぶ。

 それが出来るのは、ある程度の余裕が必要。

 だからこそ、貴族の子弟は簡単に加護を得られ、貧民の子らはそれが出来なかった、という訳か」

「補足すると、『加護を得る為』という打算的な考えでは、加護を得られないでしょう。

 何故なら、重要なのは精霊神でもなければ外界の魔力でもない。氣、そのものですから」

成程(なるほど)神様(たにん)(あざむ)けても、(じぶん)は欺けない、ということか」

「そうです」


「でもそれなら、大人になってからでも加護を得られる可能性があるってことなんじゃない?」

「二重の意味で無理です。

 一つは、今言った通り『加護を得る為』という打算的な考えでは加護が得られない。

 大人になってから加護を得る為に何かする、ということは、その時点で既に打算です。


 もう一つは、仮に加護が得られても、神殿は大人に対し加護の儀式をしないでしょう。

 神殿としてはそれをする理由がないですし、そんなやり方で加護が得られるなんて認めるとは思えません。

 神様は天界に御座(おわ)しましても、神殿は地上にあり、人間の社会構造の中に組み込まれています。

 たとえ神様が認めても、その儀式を(つかさど)るのが人間であるのなら、その人間が認めなければその儀式が行われることがないんです」


「じゃあ神殿は悪なのか?」

「いいえ。誰もが簡単に魔法を使えるようになった。

 その威力の強弱は術者の能力だとしても、誰でも簡単に〔治癒魔法〕〔回復魔法〕が使えるから、人々は怪我(けが)を恐れないで済むようになった。

 誰でも簡単に〔着火魔法〕が使えるから、人々は生肉を食さずに済むようになった。

 誰でも簡単に〔創水魔法〕が使えるから、人々は(かわ)きを恐れる必要がなくなった。

 そして精霊神の加護を得られれば、出来ることの幅は飛躍的に広がってゆく。

 これらは間違いなく神殿のおかげです。


 俺の魔法を戦闘に使おうとすれば、既に術として構築が完了しているものを除いて、非常に時間がかかるでしょう。また理論が完成していなければ、その術を起動させることすら出来ません。

 けど、属性魔法は起動が速いです。大規模魔法の場合は長い呪文の詠唱が必要になりますが、それでも呪文を唱えそれに必要な魔力を注ぎ込めば、その現象を顕現(けんげん)させる理論が確立していなくとも、その術を発動させられるのです。


 俺が目指すところは『魔法学者』です。

 つまり、『呪文を唱えさえすれば、理論がなくても発動する』魔法には、用がないんです。

 理論が先に立ち、それを実現する為に魔力を借りる。それが、俺の目指す魔法です。


 ……逆に、神殿が教える“呪文”そのものは、俺にとって一つの研究課題ですけどね」


「魔法って、考えても意味がない不思議な力だと思ってた。

 それに答えを求めるなんて、やっぱりアレク君って、変態」

「聞こえの悪いことを言わないでほしいね、スー」


 ちなみに、前世日本語で「魔法」とは、というより「魔」とは、「訳のわからないもの」とか「常識の範疇(はんちゅう)から逸脱したもの」という意味である。


 だからこそ、「魔」を駆逐(くちく)するのは学者の使命、なのだ。


 前世の近代ヨーロッパで、ラプラスという科学者は「私には神という仮説は必要ない」と豪語したという。まさにそこが、科学の終着点。だからこそ、魔法学者として“魔法を科学する”ことを目論(もくろ)んだ俺は、その理論の構築とその力の源泉として神の名を使うことは出来ない。


 神に頼ることは、学者としての敗北を意味するのだから。

(2,945文字:2015/10/12初稿 2016/02/28投稿予約 2016/04/30 03:00掲載予定)

【注:ピエール=シモン・ラプラス(Pierre-Simon Laplace)1749~1827、フランスの数学者、天文学者、物理学者。Wikipediaによると、長さ(メートル)の定義を提唱した人物でもあるそうです。なお本文中の言葉はナポレオンが宇宙を創造した者について問うた時の答え〔湯川秀樹他編「『世界の名著65』現代の科学I」中央公論社S48.09.20 P50〕だと言われます。彼の傲慢さを表すエピソード、とも言われていますが】

・ 「俺の魔法を戦闘に使おうとすれば、既に術として構築が完了しているものを除いて、非常に時間がかかるでしょう」という台詞。ちょっと誤解を生む可能性があるので解説を。

 例えば〔投擲〕の魔法は、その術を発動させようと意図すれば、無意識領域で術の制御が構築されますので、これは瞬時に発動出来ます。しかしこれに自動追尾の要素を折り込もうとすれば、発動前・発動中、それに対して綿密な術式を構築する必要があるので、実戦には役に立たないモノになってしまいます。実戦で使う為には、「発動したら目標まで最短距離で飛翔し、残りの距離30cmになったところで最大加速して目標に突っ込む」みたいな設定を事前に構築し、魔法として登録しておく必要があります。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 前話からでついにタイトル回収。 以下ネタばれ なお、未来で独自に魔法学を進めた大魔導士、そして彼とアレク双方の弟子とも言えるウォーモ(げふんげふん)第二の賢人妃がいるらしい?
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