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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第二章:「ご主人様は教育学者!?」
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第08話 挨拶廻り

第02節 新年~将来を見据えて~〔2/5〕

☆★☆ ★☆★


 奴隷契約。

 奴隷となった時点で〔契約魔法〕をかけられる。この場合、奴隷商人が仮の主人として魔法に登録され、無許可で主人のもとを離れた場合などは脱走奴隷と看做(みな)される。

 次に主人を定めると、労働奴隷の場合その主人との間に内容と期間、そして禁止事項を織り込んだ契約を〔契約魔法〕で交わされる。これにより、その奴隷の行動半径はその契約に(のっと)る形になる(旅商人に従う労働奴隷の中には、主人のもとを離れて独立した商隊を率いる者もいる)。

 そして主人との間で交わされた契約が満了すると、〔契約魔法〕が消滅し、その奴隷は解放される。


 脱走奴隷となると、〔契約魔法〕がその(ひたい)に【脱走紋】と呼ばれる紋様を浮き上がらせる。脱走奴隷に対しては、第一義的にその主人が対応しなければならないが、その一方で脱走奴隷は完全な意味で人権が認められず、【脱走紋】を持つ相手に対し誰が何を行っても罪にならない。

 だからこそ単独行動する奴隷は、逆に額を隠すことは禁じられている。


★☆★ ☆★☆


 シェイラが俺のもとに来たときは、()()えず主人(あるじ)の登録のみ済ませていた為、奴隷市場を離れても【脱走紋】が浮き上がるようなことにはならなかった。

 けれどこれからお互いの立場をちゃんとする為には、色々細かく取り決める必要がある。


 にもかかわらず。


「必要ありません。無条件、無制限、無期限。それで良いじゃないですか」

「良くないだろ! それじゃぁお前の意思はどこにある」

「私の意思は、ご主人様と共に。明確です」

「いやだから……」


 これである。自主自律の精神をこの世界で涵養(かんよう)することは、そんなに難しいことなのだろうか?


「なら、こうすれば良いんじゃない?」

「セラさん?」

「条件は、『アレク君の意思に従うこと』

 禁則は、『シェイラちゃんが嫌がることを命じること』

 期間は、『三年。(ただ)しどちらも契約終了を望まなければ、更に三年間自動更新』

 ……どう?」


 つまり、俺がシェイラの自由を最大限尊重するのであれば、この契約内容なら実質、シェイラは何をしても良い、ってことになる。


「オーケー。それなら。

 シェイラは?」

「私も良いです。

 不束(ふつつか)者ですが、末永く宜しくお願いします」

「それ、違うから」


 ともかくこれで、シェイラは正式に俺の奴隷となった。


◇◆◇ ◆◇◆


 奴隷市場を出た俺たちは(馬車はもう商人ギルドに返した)、まず【リックの武具店】に行ったが、残念ながら店番のスーしかいなかった。ので、BBQ(バーベキュー)パーティーの招待状だけ渡し、続いて【ミラの店】へ。


「あらいらっしゃい。

 あれ? そっちのマントで顔を隠している子、はじめましてよね?」

「ええ。ちょっと見せびらかしに知り合いのもとを(たず)ね歩いているんです。

 シェイラ、店に入ったらマントを脱いで」

「はい」

「ともかく紹介しますよ。

 俺の新しい家族。シェイラです」

「初めまして。ご主人様の奴隷です」

「そのネタは商人ギルドでやったから」


 店に入り、シェイラがマントを脱ぐと、さすがに本職、ミラさんは目の色を変えた。


「生地や染めが良いのはうちが卸した(しな)だから当然だけど、この縫製……。

 オリベ! ちょっと来て。

 これを縫ったのは、ミリアちゃんよね?」

「はい、そうですが」


「どうしました、店長」

「この子の着ているドレスを見て」

「え……。これ、まさか」

「ええ。孤児院製だそうよ?」

「参りました。もうこれだけの技術を身に付けているなんて。

 (むし)ろ『孤児院』って看板を外したら、明日からでも貴族の注文を受けられますね、あの子」


「一応、本人としては、まだまだミラさんやオリベさんから学びたいようですが」

「本音言って、あまり嬉しくない。

 あっという間に追い抜かれちゃうから」


「ただ俺としては、このミリアの現時点での最高傑作を見事着こなし、神聖金剛石(アダマンタイト)神聖金(オリハルコン)の輝きにさえ負けていない、うちの新しい家族のことも、もう少し見てくれると嬉しいんですが」

「当然見てるわよ。

 ねぇ、ドレスと宝石とワンセットで、この子頂戴(ちょうだい)?」

「駄目に決まってます」

「ケチ」


 ともかく、こちらもBBQパーティーの招待状を渡して、【ミラの店】をお(いとま)した。


◇◆◇ ◆◇◆


 最後に訪れたのは、鍛冶師ギルド。ここにはリック親父とシンディさんもいた。


「あれ? 何かの会合中だった?

 なら出直すけれど」

「いや構わん。先月お前が持ち込んだ素材の件だからな」


 大鬼(オーガ)の骨や、牛鬼(ミノタウロス)(ツノ)などの処遇についてが、今日の議題らしい。


「お前さんから、何か要求はあるか?」

「既にギルドに売却したものだ。どうしてくれても構わないよ。

 ただ、本音を言うとあまり冒険者たちにはその由来を知られたくないな。

 誰が『鬼の迷宮』を攻略したんだ、って話になるから」

「それはそうだな」


「では、出所がわからないように細かく砕き、微量を使うようにすれば良いな。

 大量に使うときのような明らかな違いはないが、それでも使わないのとは明らかに違う。それくらいの使い方なら問題はないだろう」

「任せるよ。本当に俺には何ら発言権はないんだから。


 それはそうと、シンディさん。

 改めてお礼を言いたくて捜していたんですよ」

「あたしに、お礼? 何の事?」

「シンディさんが作ってくれたナイフ(メス)のおかげで、一つの命が救われました。

 シェイラ、挨拶しなさい。あの人もお前の命の恩人だ」


「はい。初めまして、シェイラです。

 私の治療をする為にご主人様が使われたナイフを、貴女様がお作りになったと聞きました。有り難うございます。

 貴女のおかげで(なが)らえましたこの命、必ずやご主人様のお役に立ててご覧に入れます」

「いや、だから違うから。


 シンディさん、なんかこの()、変な方向に覚醒(かくせい)しちゃっているみたいで会う人会う人皆にこんな調子だけど、あまり気にせず仲良くしてあげてくださいな」


「ん~、なんとなくわかった。

 はじめまして、シェイラちゃん。こちらこそよろしくね。

 ……でも嬉しいわ。料理の役に立ったとか、戦いで生き延びることが出来た、って報告はこれまで何度も聞いたけど、あたしの作ったナイフで直接的に命が救われた、って報告は、初めてだから。


 刃物は命を奪うモノ。


 それが当たり前のことだと思っていたから、刃物で命が救えたって話は、ちょっとびっくり。今度、ゆっくりその話を聞かせてね」

「はい、必ず」


「っていうか、わざわざ“今度”なんて言わなくても良いんじゃないか?」

「え?」

「そもそも今日の会合が、この間の戦利品についてだろ?

 ならもう一つあるじゃないか」

「何のこと?」

「肉。ミノタウロスの肉で、BBQパーティーするって話。

 正月に決定したから。


 ギルドの皆も是非参加してください」

(2,804文字:2015/10/07初稿 2016/02/28投稿予約 2016/04/20 03:00掲載予定)

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[一言] ここまで〜 >ご主人様の奴隷です。 ?「私はマスターのサーヴァントです」 意味は同じなのに前者の犯罪臭よw w w
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