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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第一章:「駆け出し冒険者は博物学者!?」
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第46話 フィールドワーク・1

第08節 ジャイアント・キリング〔3/5〕

 迷宮(ダンジョン)を、「()の世界の常識」で計ることに意味はない。(いわん)や「前世(ちきゅう)の常識」をや。


 「ダンジョンを()れば世界を知ることが出来る(かもしれない)」と思っていたが、それは流石(さすが)に思い上がりというべきものだったようだ。

 それでも、常識を踏まえてダンジョンを見てみると、それはそれで結構面白い。


 たとえばこの『鬼の迷宮』。

 第一から第九までの階層と、第十一・第十二の階層は、あたかも人工建造物のような様相を(てい)している。道具を使う小鬼(ゴブリン)にとってはもってこいのフィールドというべきだろう。また第十階層は(さえぎ)るもののない平原。数を(たの)みとするゴブリンの、やはり独擅場だ。


 一方で第十三階層から、自然物のような外観に変わる。

 第十三階層は、高温多湿の熱帯雨林(ジャングル)

 第十四階層は、湿地帯。

 第十五階層は、石灰質の鍾乳洞。

 第十六階層は、岩肌の洞窟。

 第十七階層は、見通しの悪い岩山。


 だがこの構造に、人為(じんい)(というより何者かの意思)を感じるのは気の所為(せい)だろうか?

 第十二階層まではそこを主戦場とするゴブリンにとって都合の良いように。

 第十三・第十四階層は、同じく豚鬼(オーク)にとって、第十六・第十七階層は同じく中鬼(ホブゴブリン)にとって、それぞれ都合の良いように設計されているような気がする。……第十五階層は誰にとって有利な戦場なのか、いまいちよくわからないのだが。


 生物(魔物・魔蟲・魔獣等)も、その地形に相応(ふさわ)しいモノが(うごめ)いている。


 悩まされたのは、第十三階層の(ホーネット)、第十四階層の(ひる)と第十五階層の蜥蜴(リザード)である。特に蛭は、ここまでくると魔蟲なのかただの虫なのかわからないが、大きさは指先サイズのものから握り(こぶし)大のものまで、数も1匹から数百・数千の群体まで、様々だった(【群体操作】を試したいとも思わなかった)。結局、松明(たいまつ)で一匹ずつ焼き払うのが、一番単純な対処法だった。

 なお蜥蜴は毒を持っているが、毒を抜けば食用に足る。毒抜きが面倒なのと生理的嫌悪感から、好んで食べる人は少ないそうだが。


◇◆◇ ◆◇◆


 第九階層までは暗闇の中だったが、第十階層以降はダンジョン全体が明るい。


 第十・第十三・第十四・第十七の各階層は天井自体が明るく、昼のよう。

 第十一・第十二・第十五・第十六の各階層は、一定間隔で光源があり、視界の確保に労はない。


 第十五階層の鍾乳洞ではっきり確認出来たのだが、その照明はクリスタル質の石が純粋に光っているものだった。これは、『水晶に火魔法を封入して魔石を燃料にする』魔法照明と同質のものと考えられる。使い(みち)があるかもしれないと、鍾乳洞が暗くなり過ぎない程度に回収することにした。


 十三階層以降は、予定の地質調査も行う余裕が作れた。


 とはいっても、前世の俺もそれほど地質に詳しい訳ではない。だから知識より、無属性魔法Lv.2【群体操作】で既知の金属を誘導することで、それらが存在することを確認出来る程度だろう。


 発見出来た面白金属は、以下の通り。


 第十三階層……特になし。

 第十四階層……泥炭(ピート)

 第十五階層……石灰岩・砂金・神聖金(オリハルコン)(微量)・照明石(仮称)。

 第十六階層……石炭・神聖金剛石(アダマンタイト)

 第十七階層……特になし。


 砂金とオリハルコン、石炭とアダマンタイトが同じ場所から発見されたことは、俺の仮説(神聖金属は通常金属の魔力同位体)を裏付ける証拠の一つと言えるかもしれない。

 特にアダマンタイトは、事実上『鉱床』の形で発見出来た。それも石炭鉱の表層部分が板状にアダマンタイト化していたのだ。これの事実一つを採ってしても、「石炭鉱の表層を高濃度の魔力に長時間(さら)した結果、アダマンタイトが生成された」と主張することが出来ると思われる。

 なおこのダンジョン内の石炭は、俺が所有する炭鉱の石炭に比べ硬度が高い。後で比較分析の余地があろう。また泥炭は「最も質の悪い石炭」と言われるが、酒造りに使われるという話を聞いたこともある。もしかしたら何かに使えるかもしれない。


 これらも当然、〔無限(インベン)収納(トリー)〕の容量無限を良いことに、採掘出来るだけ採掘しましたが、何か?


◇◆◇ ◆◇◆


 他の冒険者たちは、第十二階層まではときどき見かけたが(声をかけたりすることは(ほとん)どない。すれ違う場合は挨拶する程度)、第十三階層からは全く見なくなった。

 とはいっても第十三階層と第十四階層は見通しが悪く、仮に他の冒険者がいたとしても(先日の女性冒険者たち(エミリーたち)のように)大声を上げなければ気付かないだろう。そして密林や湿地帯というのは意外に五月蠅(うるさ)いから、自然騒音と戦闘音はかなり近くでなければ区別がつかないものだ。

 更に第十五階層と第十六階層では、俺自身ダンジョン攻略をほったらかして趣味に邁進(まいしん)していたから、俺に敵意を向けない相手のことなどどうでも良かった。

 そして第十七階層。

 ここでは血糊(ちのり)のついた布切れや、折れた武具などが見つかることがあった。古い物からそれなりに新しいものまで。つまり、この辺りが最前線(フロントライン)だったのだろう。


 一方俺の方は、出現する魔物に対して、もはや問題なく対処出来るようになっていた。


 オークやホブゴブリン相手では、残念ながら一撃で仕留められることは、殆どない。

 が、『一撃(ワンターン)必殺(・キル)』が通用する相手にしか勝てない、というのは「自分が弱い」と言っているようなもの。戦闘は、敵の攻撃を避け、自分の攻撃を当て、ダメージを蓄積させていって最終的に(たお)すものである。つまり、ようやくまともな戦闘が出来るようになった、という訳だ。


 オークをあしらうのはそれほど難しくないが、ホブゴブリンはゴブリンの上位種だけあって頭が回る。こちらの戦術を読み、こちらの動きに対して先手を打って策を(つぶ)しにかかる。

 けど、ゴブリンほど策に頼る真似(まね)はしない。単体戦闘力と防御力に自信がある所為か、小賢しい真似をするくらいなら正面から跳ね返す、という(おとこ)らしい性質を持っている。また集団戦時には組織立った動きをすることも少ない。


 だから、それらが(すき)になる。

 相手が一体の時は、むしろ正面から斬り込みダメージを蓄積させる。

 相手が複数の時は、他のホブゴブリンを盾にして同士討ちを狙うつもりで翻弄(ほんろう)する。


 戦闘に時間がかかり、非常に神経を使うが、それでも不意を突かれない限り負けることはない、と自信を持てるようになってから、第十八階層に下りることになった。

(2,794文字:2015/09/30初稿 2016/02/01投稿予約 2016/03/31 03:00掲載 2016/10/11誤字・衍字修正)

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