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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第一章:「駆け出し冒険者は博物学者!?」
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第42話 挑戦開始

第07節 ダンジョンアタック!〔4/5〕

 迷宮(ダンジョン)があれば、そこに冒険者が集まる。

 冒険者が集まれば、冒険者相手の(あきな)いが出来る。


 ということで、大抵のダンジョンの近くには、門前町が出来るのだという。


 『鬼の迷宮』にもまた、門前町がある。

 冒険者相手の商売をする人間の町らしく、業種は特化(というより偏向)しており、子供や老人が少ないのが特徴といえるだろう。

 水や食料、薬草や毒消し草などの消耗品はハティスの街の倍近くする一方で、武器防具或いはそれらの補修に係る値段はハティスに比べて3割方安い。また解体処理場の使用料は無料となっている。

 また、宿は個室ありで小金貨五枚。ハティスに比べかなり高い。長逗留(とうりゅう)する客が少ないことが理由のようだ。

 迷宮に持ち込む為の食糧は高いが、酒場で出される酒や食事はハティスより安い。


 つまり、「可能な限り長くいてほしい、また来てほしい。けど命に関わるものは足元を見る」というのが、この門前町の商業方針のようだ。


◇◆◇ ◆◇◆


 門前町には、冒険者ギルドの出張所、ではないが冒険者の寄合(よりあい)となる建物がある。ダンジョンに挑戦する冒険者は、ここで自分の所属するギルドにダンジョン挑戦(アタック)の許可を得たことを報告するとともに、冒険者同士で情報交換をしたりもする。


 ここに足を踏み入れた時、やはりというか俺は注目の的だった。

 またお約束を繰り返すのか、と思ったが、さすがにそれはないようだ。ここに来ているということは、ギルドの許可があるということだし(野良の冒険者は直接ダンジョンに向かう(はず))、許可があるということは、銅札(Cランク)に到達しているということだ。

 なら相応(そうおう)の経験と実績があるということになり、見た目で判断したら後悔することを百戦錬磨の冒険者たちは理解しているのである。


 それでも、(いとけな)い子供が、それも一人(ソロ)でダンジョンアタックするということを危惧(きぐ)した人は、一人や二人ではなかったようだ。


「よう坊主。お前もダンジョンに挑戦するのか?」

「えぇそのつもりです」


他の(パーティ)仲間(メンバー)は?」

「いません。今回は一人です」


「おいおい、大丈夫か? さすがに無理じゃねぇの?」

「悪いことは言わない、俺たちの旅団(パーティ)に合流しろよ」

「有難うございます。けど今回は、一人でどこまで出来るか試してみたいんです。

 お気持ちは有り難いですが、遠慮させてください」


「でもやっぱり危険よ?」

「無理はしないつもりです」


「野営時とかはどうするの?」

「一応野営出来るだけの準備はしてきましたけど、一人だと見張りがいませんからね。

 毎日町まで戻ってくる予定です」


「地図はどうする? 必要なら売るぞ」

「最初は地図無しで挑戦してみたいと思います。後日必要だと思ったら声をかけても良いですか?」


 etc.etc...

 ……いくら何でも、ここにはお人()ししかいないのか?

 とはいえ理由は明白だ。俺が彼らに悪を()すには(おさな)過ぎ、またガキが成し得る悪(掏摸(すり)、かっぱらい等)を警戒するには彼らは自身に自信があり過ぎる。

 逆に彼らに悪意があったとしても、それを向けるには俺は幼過ぎ、獲物に相応(ふさわ)しくない。

 結果、彼らにとって俺は文字通り毒にも薬にもならない為、たとえ悪人であっても善良さを見せられる相手になってしまうのである。


 たとえ見せかけといえども、善意は善意。好意的に対応して、そのまま宿に入った。

 酒場でお(すす)め料理とやらを食べても良かったが、今日は遅い。毎日日帰りする予定なんだから、早く寝よう。


◇◆◇ ◆◇◆


 ハティスの街を出てから5日目。いよいよダンジョンアタックの開始である。


 ダンジョンに入り口は、ダンジョンによって様々(さまざま)だという。

 そしてこの『鬼の迷宮』は、入り口から縄梯子(なわばしご)を伝って10m(メートル)程度下りて、そこからダンジョン、となっている。

 こういう形にしているのは、中にいるのが鬼系の魔物である為だ。万一の時は縄梯子を回収するだけで、魔物の氾濫(スタンピード)を阻止出来る。

 ちなみに各階から地上に転送する魔法陣(ポータル)といった便利装置はない。そもそもこの世界、転送魔法は開発されていない。帰ってくるときは、えっちらおっちら歩いて戻ってこなければならないのだ。

 だから、食料や水や薬草や、体力や魔力は、帰路の分を残しておかなければ、仮にダンジョンコアを入手出来たとしてもダンジョン内で息絶えることになる。


 そして、ダンジョン踏破の方法は、基本的に3通りある。


 ひとつはマッピング。

 各階層をスミからスミまで歩き、その地図を完成させるやり方。踏破には時間がかかるが、予期せぬ危険がなくなるから、結果的に安全に踏破出来るようになる。


 二つ目はレベリング。

 この世界にレベルという概念はない為本来の語義とは異なるが(いや、もしかしたらこちらの方が本来の語義か?)、とにかく次の階層の適正レベルを把握し、そのレベルに達するまでは前の階層で修行(レベルあげ)(いそし)しむやり方。こちらも時間がかかるが、自身の実力を上げてから次の階層に進む為、これも結果的には安全に踏破出来るようになる。


 三つ目は、タイムアタック。

 一切の無駄を排し、寄り道をせずに、最短距離でダンジョン踏破を目指すやり方である。この場合、戦闘行為そのものも“無駄な行為”と考えるから、ダンジョンマスターさえ無視してダンジョンコアのみ奪取し、また最短距離で帰ることが、この世界に()けるタイムアタックといえるだろう。


 俺の目論見は、タイムアタック寄りのレベリング、というべきだろう。


 肉体的にはまだ幼い為、正面突破力には劣る。鉄串は効いて小鬼(ゴブリン)まで。豚鬼(オーク)中鬼(ホブゴブリン)に対しては、決戦力足り得ないだろう。

 苦無(くない)もオークやホブゴブリンに対しては、一撃必殺とは言えない(はず)。ましてや大鬼(オーガ)一つ目巨人(サイクロプス)相手にはダメージが通るかどうかもわからない。

 また戦闘(コンバット)ナイフの斬撃は、多分オークレベルまで。オーガレベルの肌に効果があるとは思えない。

 オーガレベルに対して効果があると思われる秘密兵器も用意してきたが、オーガ程度に使わなければならない状況になるのなら、到底ダンジョンマスターには(かな)わない。


 よって、難易度をこの三段階に設定し、第一(ゴブリン)段階(レベル)を戦闘ナイフだけで突破出来るようになったら第二(オーク)段階(レベル)へ進む。

 第二段階を戦闘ナイフとその他の小技で危なげなく切り抜けられるようになったら第三(オーガ)段階(レベル)へ。

 第三段階も楽勝、とまではいかなくても負けないと言える状況になれば、ダンジョンマスターを目指す、というのが基本方針となる。


 人生初のダンジョンに浪漫(ロマン)を求め、一歩一歩縄梯子を下りて行った。


 いざ!

(2,868文字:2015/09/27初稿 2016/02/01投稿予約 2016/03/23 03:00掲載 2016/10/11誤字修正)

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