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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
最終章:「国王陛下は人類学者!?」
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第15話 爆撃と狙撃

第04節 新時代の戦争〔4/7〕

◆◇◆ ◇◆◇


 アプアラ軍の布陣は、変則的な横列陣。

 アプアラ軍五千が領都ウーラを背にして横に並んで陣を組み、リーフ軍一千がその後ろ中央に方陣を組む。


 一方ビジア軍は、紡錘(ぼうすい)陣。

 中央の一隊が突出した、三角陣形である。


 ビジア軍が少数であることと、この「疾風迅雷」と称して(はばか)り無い神速の行軍速度から、おそらく「中央突破・背面展開」を目論んでいると想像出来るだろう。実際、その想像は大きく間違ってはいないからだ。

 ビジア軍大将には、客将ながらカレンが立っている。カレンの正体は、フェルマール第三王女・シーナ。今更隠すまでもない。そして、カレンはやはり、細かい戦術を駆使するよりも、一戦を(もっ)て敵本陣に攻め上るという戦いをこそ好む。

 また、此度(こたび)の戦争に於ける演出効果も考えて、カレンは最前線に立っているのだ。カレンの旗印は、フェルマール王家のもの。その手にあるのは、フェルマールの宝剣『ゴルディアス』。そして、あからさまな中央突破狙いの布陣により、アプアラ軍兵に問うているのだ。「この()に及んで(なお)フェルマールの旗に弓引く気か?」と。


◆◇◆ ◇◆◇


 払暁(ふつぎょう)

 開戦の号砲は、しかし音もなくアプアラ(リーフ)軍の背後から放たれた。


 ほぼ真上。

 天空から逆落としする勢いで、有翼獅子(グリフォン)が急降下し、リーフ軍の将軍の身体を掴み、再び上昇した。


 いきなりの魔獣の襲撃を目で追うと、グリフォンの背には小柄な女性の姿があった。

 そして、その女性を乗せたグリフォンが向う先に、更に数十頭のグリフォンの姿が。

 また、そのグリフォンたちは、その背中から何かを落とした。


 火花を散らしながら落ちてくる、「何か」。

 それは、リーフ軍の本陣と、アプアラ軍後方にばらまかれた。

 そして、地面に落ちた数秒後。轟音とともに爆発したのである。


☆★☆ ★☆★


 ところで、一個大隊一千名。

 この数字を写実的に認識するには、どうしたら良いか?


 これにはバブル期の中学校をイメージするとわかり易い。

 一クラス42名×(かける)8クラス×(かける)3学年=(イコール)1,008名。

 全校集会の時、この人数が校庭に整列する。

 つまり、縦21人×(かける)横48列。

 縦横1m(メートル)ずつ空間が出来ると考えれば、奥行き21m×(かける)横幅48mが、千人で作る方陣の大きさ、ということになる。


 その上で、こうイメージする。

 2年4組の最後列付近で爆発音がし、血肉が飛び散る状況の時。

 1年1組の最前列の生徒は、全く衝撃波が届かないからと言って、そのまま「休め」の姿勢を取り続けることが出来るだろうか?


 軍人は訓練されているから、バブル期の日本人中学生よりは動じないかもしれない。

 けれど、「爆発」という現象を知らないこの世界の人たちが、動じずにいられるだろうか?


★☆★ ☆★☆


◆◇◆ ◇◆◇


 爆発は、リーフ軍が布陣している場所を中心に起こっていた。が、それによる恐慌状態(パニック)は、前列の三大隊に波及した。


 当然、全ての将兵がパニックに陥った訳ではない。

 自身の動揺を押し隠し、必死で部下を(しず)めようとしていた中隊長級の士官も確かにいた。


 が、次の瞬間。

 ビジア軍の更に後方から響いた破裂音とほぼ同時に、そのアプアラ軍士官の頭部が吹き飛んだ。


◆◇◆ ◇◆◇


 ビジア軍の後方を、包み込むように展開していたのは、ドレイク王国軍特務部隊。

 この時代の軍の隊列は、密集陣形が基本である。

 が、砲爆撃が当然である地球の近現代戦は、小部隊が散開する形で布陣する。

 特務部隊は、その例に(なら)って3~5人の少人数の分隊単位で行動していたのである。


 特務部隊の主兵装は、「魔力銃一型改」12.7mm(ミリ)狙撃(そげき)銃“ドラグノフ”。高精度スコープを持ち、最大射程1.2km(キロ)


 そして最初の狙撃を敢行したのは、ライ中隊長。『セラの孤児院』出身で、(かつ)て孤児院が襲撃された際観測手(スポッター)(にな)った少年である。

 彼我の距離、約400m。この距離でヘッドショット出来るような技量を持つ、数少ない狙撃手だった。

 実際、この距離での特務部隊員による狙撃の平均命中率は約10%。横幅約50mの方陣の、どこかに命中すれば良いというのなら話は別だが、特定の士官を確実にヘッドショットしたいとなると、それが出来る隊員は限られるのだ。


 だが、第二射からはそこまでの高精度狙撃は求めない。各員4発ずつ射撃を行い、彼らの任務は完了したのである。


◆◇◆ ◇◆◇


 この時代の飛び道具の最大射程は、長弓(ロングボウ)による曲射(やのあめ)で約200m、水平(ゼロきょり)射撃で約80m、特定個人に対する精密狙撃は30mといったところだ。

 だから布陣する場合、彼我の距離は近くても300mは離れることになる。


 常識で考えたら、届く(はず)もない距離から、目に見えないほどの弾速を以て、特定の士官の(かぶと)を貫通し頭部を吹き飛ばす。それは、いきなり襲撃してきた魔獣(グリフォン)の姿より、見たこともない爆発より、アプアラ・リーフ連合軍に恐怖を与えたのである。


 そして、特務部隊による射撃が終了するのを待って、カレンは全軍突撃を命じた。

 紡錘陣から、最も混乱が激しい敵軍中央部への総力突撃。


 この瞬間、この戦争は終わったと言えるだろう。


◆◇◆ ◇◆◇


 この時点でも、なお組織立って部隊を運用することの出来る中隊長級の指揮官も、残っていない訳ではなかった。

 しかし、混乱し恐慌状態に陥った友軍が(むし)ろ邪魔になり、ビジア軍の突撃に対処出来ずにいた。

 抑々(そもそも)全軍総大将である、リーフ軍の将軍がグリフォンに連れ去られ天の高みに昇ってしまった(こう書くと死んでしまったようだが、大して違いはない)以上、はじめから有機的な戦術指揮など期待も出来ない。

 そしてまた。ビジア軍の大将がシーナ王女(カレン)であったことも響いていた。結局アプアラの民は、フェルマールに対して敵意を持っている訳ではなかったのである。


 最終的に、アプアラ側は将兵散逸(さんいつ)か、中隊単位でのビジア軍への投降かを選ぶことになる。


◆◇◆ ◇◆◇


 新暦2年6月3日(カナン暦707年夏の一の月の22日目)。ウーラ郊外の戦いは、太陽が中天に昇るよりも早く、ビジア軍の圧勝により終結する。

 従来の戦闘と単純に戦果を比較することは出来ないが、それでもウーラ市民にとっては、ビジア軍がたった三千の戦力で、アプアラ・リーフ連合軍六千を、半日かからずほぼ被害もなく蹴散らした。それだけが事実なのであった。


 そしてその日のうちに、ウーラにいるリーフ王国の文官らを追放し、当面の戦後処理を行っていると、空から一羽の魔鷹(ホーク)鳴き(ピィと)声を響かせた。

 市民が、そしてビジア軍がその声に()かれて空を見上げると。

 大型の飛竜(ワイバーン)が城主館前の広場に下りてきた。


 その背にいたのは、ドレイク王アドルフ。その寵姫(ちょうき)シェイラ。そして。


 リクハルド・カトゥカ。


 このアプアラの、(かつ)ての領主その人であった。

(2,680文字《2020年07月以降の文字数カウントルールで再カウント》:2016/09/07初稿 2017/08/31投稿予約 2017/10/08 07:00掲載 2021/03/18誤字修正)

・ 地球の近現代戦では、味方の射線を遮らないように、そして一発の砲撃で全滅しないように、小部隊で散開して布陣します。一方西洋の中世は密集陣形が基本。個々人の技量より、「数の力」で圧殺する戦法が採られました。なお日本の戦国時代は、地形・気象条件などから密集陣形は取り難く、かなり散開した陣形だったようです。地域と時代、そして使用する武器によって戦術は異なるのです。

・ ドレイク王国有翼騎士団が投下したのは、発破用の「ダイナマイト」。近代兵器の爆弾や地雷のように、殺傷力を高める釘や金属片などは混入していませんから、実は単体の殺傷力は言うほど大きくありません。とはいえその爆発力は、充分脅威ですが。

・ 「ドラグノフ」の由来は、ソ連製の同名の狙撃銃です。が、オリジナルのそれは7.62mm(.30口径)の弾丸を使用します。

・ ウーラ市民が『飛竜(ワイバーン)』と認識したソレ(・・)の正体が真竜だとは、お釈迦様でも気付くめぇ。

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