表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
最終章:「国王陛下は人類学者!?」
331/368

第11話 建国宣言

第03節 建国〔3/3〕

「我が言葉を聞く、(かつ)てフェルマール国民であった、ネオハティスの市民たち。

 諸君らに問いたき()がある」


◆◇◆ ◇◆◇


 迎賓館のバルコニーから、貴賓(きひん)席のフェルマール貴族たちを背に、中央広場に集まった市民に向けてアディは演説を行う。

 この声は、【気流操作】により増幅・共鳴され、中央広場に集まった市民たちの耳に届いている。


 衣装は普通の冒険者が着るような平服。ただその手には、フェルマールの宝剣である『ゴルディアス』が抜き身で示されている。


 抑々(そもそも)、『王権(レガリア)』とは本来、形あるものではない。

 が、時として形あるもの(王笏(おうしゃく)玉璽(ぎょくじ)、宝剣など)に仮託(かたく)される。

 そして王権の移譲は、多分に形式的なものになる。何故なら、その多くは敗戦国が侵略者に国を(ゆだ)ねる場合に行われるからである。王権を移譲する代わりに、国民の安寧(あんねい)を、と。

 しかし、ドレイク王国はフェルマール王国を侵略した事実はない。けれど、王権移譲の儀式を行うことにより、事実上ドレイク王国はフェルマール王国の後継、と認知されることになるのだ。


 そして、抜き身の宝剣を手にした平服の冒険者が、名だたる貴族たちに背を向けて、建国の演説を行う。


◇◆◇ ◆◇◆


「フェルマールの王家は、悪しき統治者であったか? 諸君らにとって憎悪の対象であったか?」


 本音の部分では、フェルマール王家は善良だったが有害なレベルで無能だった。それが、王国の滅亡(ほろび)(もたら)した。けれど、今この場でわざわざそんなことを口にする必要はない。


「否! 王家の方々は皆善良にして、愛すべき資質をお持ちであった。

 では、何故フェルマール王国は(ほろ)びた?」


 善良さも、愛すべき資質も、国を導く力にはならない。正しく導かれたその上で、善良で愛すべき統治者は国の力になるのだが。


「それは、貴族たちが王家の善良さに付け込み、その役割を放棄して、私腹を肥やし、享楽(きょうらく)頽廃(たいはい)(ふけ)ったからだ」


 貴賓席の貴族たちが(ざわ)めくが、無視。


「その結果、何が起きた?

 侵略者たちが、国土を蹂躙(じゅうりん)した。

 家は焼け、畑は……、踏み荒らされた。そして君らはこんな北の果てまで流れて来ざるを得なかった!」


 ――コルホーズ、と続けようとして、自重する。けど後に、サリアから「ここはシベリアだったのね」とツッコミが入ったけれど。


「この国は、我らの国だ!

 王家の善良さに頼り切る国ではなく、

 貴族が(わたくし)する国でもない。


 この国の民、一人ひとりが国を支える柱となる、俺たちの国だ!

 貴族であっても、無能であれば国の(かじ)取りを任せることはしない。

 平民であっても、有能なら国政に参加してもらう。


 たとえ王の息子でも、無能なら職人の御用(ごよう)聞きをして糊口(ここう)(しの)ぐことになるだろう。

 たとえ娼婦の娘でも、有能なら国軍を指揮することも出来よう」


 たとえばフェルマールの最後の国王(ムートたちのパパ)のような愚王の即位を許すくらいなら、容赦なく廃嫡(はいちゃく)する。

 たとえば民間出身者であっても、優秀ならその能力に(あたい)する立場を与えてその(さい)を試す。


「だから諸君。

 学ぶことを、知識を得ることを、そして考えることを躊躇(ためら)うな。

 今は無駄だと思っていても、学問を否定するな。


 今、この国は。

 否、これから生まれるこの国は。

 しかし、既に世界のどこより秀でた国となっている。


 先日、某国の王女が身分を隠してこの町を訪れた。

 そして、一般市民に向けて開放された宿の一室を見て、自分の城の部屋より豪華だと驚いていた」


 某国、というより亡国の王女であるカレンは、憮然(ぶぜん)とした表情で顔を伏せた。


「この秋。

 世界中を、日照(ひで)りが襲った。その結果、多くの人々が暑さと疫病(えきびょう)()せることになった」


 その原因が俺の魔法〔摩訶鉢特摩(ニブルヘイム)〕だとは、口が裂けても言えないけれど。


「この冬。

 異常気象の結果、歴史的な大凶作となり、世界中で小麦不足になり、多くの民が()えに苦しんだ。


 しかし。

 この国で、(やまい)に臥せった民は少なく、またその者たちもすぐに回復した。

 作物の収穫量も、去年よりは(わず)かに少なかったものの、諸君らに充分行き渡りなお余りあるほどのものであった。


 諸君。我らが国を誇れ。

 諸君は、多くの力に(まも)られている。

 諸君は、既に難民ではないのだ。


 (こうべ)を上げよ。空を見よ。

 そこに何が見える?」


 ――太陽(かみさま)! と子供の声が聞こえた。


「諸君らは、太陽(かみ)の加護を、その身に感じることが出来るか?」


 ――出来るわ! と女性の声が響いた。


「たとえ精霊神が加護を齎さなかったとしても、太陽(かみ)は変わらず我らを護ってくださる」


 ――そうだ! と野太い男の声がする。


「それを知っている諸君らは、我々は、この国は。

 精霊神の加護が薄い、こんな北の果ての地にあって。

 なお世界のどこよりも恵み多き国となっている。


 我は今ここに、ドレイク王国の建国を宣言する!


 この国は、皆が笑って過ごせる国。

 子供が()えることもなく、空腹にも、寒さにも、寂しさにも、涙することがない国。

 誰もがやったことのないことに挑戦出来る国であり、常に新しいことを追いかけ続けられる国。

 一人ひとりが()すべきことを自覚し、為すべきことを為す国でありながら、皆がのんびり暮らせる町がある国だ。


 皆の願いが、形になる国だ。

 だから皆、夢を持ち続けることが出来る国であり、皆の願いを皆で守らなければならない国だ。


 そして。

 我はここに誓言(せいげん)する!

 我はここに、ムート王子に誓いを立てる!


 今、カナリア公国にて幽閉されている、フェルマール王国第一王女、ルーナ殿下をお救い申し上げることを!


 だがこれは、我ひとりの力では為し()ぬことだ。


 よって、ドレイク王国の民よ。

 諸君らの力を借りたい。


 フェルマール王国より齎された恩に報いる為に、諸君らの力を貸してほしい!」


◇◆◇ ◆◇◆


 中央広場から。

 多くの声がウェーブを作っていた。


 ドレイク王国万歳。

 アドルフ王万歳。

 フェルマールに栄光あれ。

 カナリアを討て!


 俺は彼らを、戦いに駆り立てる。

 ルーナ王女を救出する為に。


☆★☆ ★☆★


 新暦元年12月2日。

 ネオハティスの地にて、ドレイク王国が建国された。


 (のち)に、多くの文化と知識、そして技術の発信地となる、それは王国であった。

 同時に、それは精霊神を否定(とまではいかなくても軽視)する国であり、アザレア教国をはじめ精霊神殿からは異端、()しくは敵対する国として、警戒されることになる。


 そしてこれは、宗教と科学が(たもと)()かつ。そのきっかけでもあることに気付いていた者は、この当時一人もいなかった。


★☆★ ☆★☆

(2,849文字:2016/09/04初稿 2016/12/14第二稿 2017/07/31投稿予約 2017/09/30 07:00掲載 2017/10/01脚注修正)

【注:「家は焼け、畑は(コルホーズ)」というフレーズは、ある特撮ソングの替え歌の歌詞を原典としております。替え歌の歌詞は著作権管理されていませんが、二次著作権があると解されます。しかし当該替え歌に関しましては、二次著作権保持者が著作権を放棄しています。

 当該引用が原曲の歌詞の著作権に抵触しないことは2016年12月22日にJASRACに確認(問合せ番号93669)しております。

 また引用の性質上、「オリジナルである特撮ソングの替え歌の掲載」には該当しないと筆者は判断します(当該特撮ソングのオマージュではなく、あくまで替え歌のテーマの引用だから)。なおJASRACは「著作権隣接権については管理していない為、責任ある回答とは言えないが、原曲の著作者人格権を毀損しているとは思えない」と評価してくださっております。

 当該引用がオリジナルの特撮ソングの著作者人格権の侵害(毀損)に該当するか否かは原著作権者の申し出の有無によりますので、「小説家になろう」の規約に則り、原著作者の要請がありましたら、即座に当該部分を修正致しますことをお約束致します】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ