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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第七章:「建国の師父は人文学者!?」
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第34話 凱旋

第07節 新しい歴史〔2/4〕

「あ、帰って来た」


 真竜・クリスとの激戦の後。俺はほぼ24時間寝込むことになった。

 そして目醒(めざ)めてすぐに行ったことは、迷宮(ダンジョン)(マスター)の権能の一つ、〔眷属(けんぞく)召喚〕の使用であった。

 情報伝達速度の重要さを知る俺やサリアにとって、高速通信が可能ならそれを使わない手はないのだ。

 そして召喚した魔鷹(ホーク)に手紙を(たく)し、ネオハティスの町に飛ばした。

 召喚した眷属には、主たるDM(ダンジョンマスター)の知識や記憶の一部を転写することが出来るので、初めて行く町でも迷うことはないだろうし、人を見つけることも難しくない。

 そして、冒険者ギルドのギルマス・オードリーさんか、町長代理・セラさん、町長代理補佐のシア(アリシア)の三人のうちの誰かに渡すよう魔鷹に指示を出していた。


 その魔鷹が戻ってきたのだ。


「でも良いな。あたしも鷹匠(たかじょう)やってみたい」


 魔物(モンスター)使い(テイマー)志望のサリアがそういったが、


()めた方が良い」

「どして?」

「サリアは飛竜(ワイバーン)を育てるんだろう?」


☆★☆ ★☆★


 猛禽(もうきん)は、(つが)いを生涯一羽しか持たないという。

 それもあり、鷹匠は、一対一で真剣に(タカ)と向き合うことが求められるのだ。

 もし鷹匠が他の鳥に気を向けることがあったら、鷹はその(くちばし)で鷹匠を(つつ)くか、鷹匠を見限り離れていくという。(あたか)も浮気者の亭主に対する女房のように。

 ちなみに、野獣は群れの序列を優先する。

 上位の(オス)は下位の複数の(メス)(はべ)らし、また同様に上位者と定めた人間には、ほぼ無条件で従う。だから複数(どころか群れごと)飼い()らすことも出来るのだ。


★☆★ ☆★☆


 つまり、ワイバーンと一角獣(ユニコーン)を一緒に飼うことは出来るが、ワイバーンと魔鷹を一緒に飼うことは出来ない、ということだ。

 俺はDMの権能で、複数の猛禽を同時に使役することも出来る。その一方で、俺の作る国では、魔鷹のみならず、ワイバーンやユニコーンの戦力化や、牡魔牛(トーラス)牝魔牛(カウ)魔猪(ボア)などの家畜化も計画している。しかし、将来のことを考えたら、それらを“DMチート”に頼るのではなく、サリアのように真剣且つ誠実な方法で魔獣たちと向き合うべきだろう。


 それはともかく、そういった事情をサリアに説明すると、


成程(なるほど)、よくわかったわ」


 と、理解を示してくれた。


「――けど、そう考えるとハーレムって、女側の協力があって成り立つんだって改めて実感するわね」


 ……余計な一言を付け加えてきたが。


「どういう意味だ?」

「別に。何か深読みする根拠でもあったの?」


 ったく、白々しい。


◇◆◇ ◆◇◆


 オードリーさん(だけじゃなくセラさんの署名も併記されていた)からの返事を読み、けれど俺の気持ちは180度後ろを向いた。


「……帰るの()そうかな…………」

「何があった?」


 ルビーが心配してくれたが、


「町に帰った後の二人の御小言(こごと)の時間と、溜まった書類の山を想像すると、怖気(おぞけ)が走った」

「……知るか! 私にはその領分の手助けは出来ないんだから、(あきら)めろ!」

「……だよなぁ~~」


 ともかく。

 数枚の重要書類に目を通し、あるモノはそのまま決裁の署名(サイン)を、またあるモノは再提出(リジェクト)のマークを付けたうえで改善案を記し、そして最後の一枚に向き合った。


「……攻略の報告書(レポート)、か」


 これが意外に難物だった。


 真竜を(くだ)し、俺が迷宮(ダンジョン)(マスター)になった。


 ……こんなこと、一体誰が信じる?

 クリスを連れて行けば、そしてリリスが証言すれば、一定の信憑(しんぴょう)性が担保されるだろうけれど、書類でそれを余さず表現することなど、出来よう筈がない。


 で、ふと思いつき、取り敢えずこの旅の行程をレポートに(まと)めた上で、スマホを魔鷹に持たせてもう一度町に飛んでもらった。

 スマホの操作は、リリスかシンディなら出来る。そして、スマホには証拠になる写真は山とある(勿論(もちろん)真竜(クリス)関係のは無いが)。

 そして対真竜戦の顛末(てんまつ)は、帰ってから口頭で、と付記しておいた。

 これで(納得出来ないにしろ)当面は充分だろう。


◇◆◇ ◆◇◆


 そして、数日後。

 ほぼ毎日、魔鷹(いつの間にか『ノトス』という名が付けられていたようだ)を介し書類の遣り取りをしていた為、あまり時間が経ったという気がしないのだが。


 ともかく、俺たちは山を下り、森を抜け(先導無しで森を抜けるのは不安があった為、ノトスに先導させた。書類(メッセージ)の遣り取りは、その為夕刻と早朝になった)、そして。


◇◆◇ ◆◇◆


 俺たちが街に入ったとき、住民たちは大歓声で迎えてくれた。


 処女にのみその背を許すと(うた)われた、ユニコーンに乗った一行。

 俺がユニコーンに乗っていることをどう評価したのかは知らないが(DT(どうてい)だから、と評価されたら俺は羞恥心で死ねる)、それは(まさ)しく女性陣の純潔を証明しているようで、多くの住民たちが祝福してくれる(残り2頭のユニコーンは、人化したクリスが徒歩で綱を()いている)。

 先導するのは、魔鷹ノトス。知らないうちに町の人気者となっていた彼は、時に空で弧を描き、時に俺が乗るユニコーンの背に()まり、そして時に町の人たちの前で愛嬌(あいきょう)を振り()き、人々の笑顔を招いていた(女性にばかりサービスしているような気がするのは気の所為か? (いや)、ネオハティスは女性の人数が多いからそう感じるだけだ。現に子供たちの前でも愛嬌を振り撒いている)。


 そして。(俺たちにとって)期せずして起こったパレードの終着点は、冒険者ギルドだった。ギルドの建物(仮)の前には、ギルドマスター・オードリーさんと、町長代理のセラさん、そして市主力冒険者旅団(パーティ)R.A.S(セラのみぎうで)】のメンバーなどが、並んで俺たちの帰還を待っていた。


「ギルドマスター。迷宮(ダンジョン)竜の(ドラゴンズ)食卓(・テーブル)』の攻略、完了しましたことをご報告申し上げます」

「ご苦労様でした。詳細な報告を受けたいと思いますので、お疲れのところ恐縮ですが、第一小会議室までお越し願えますか?」

「かしこまりました。馬の世話はお任せします。それから、鷹の世話も」

「ええ。希望者が殺到していますから」


◇◆◇ ◆◇◆


 会議室にて。

 手紙に書かなかった、真竜(クリス)との一戦とその顛末を話したところ。

 皆開いた口が(ふさ)がらない、という表情になった。


 確かに今、クリスは人間の、20代後半の男性の姿を採っている。

 しかし、彼が「実は龍なんです」といっても、信じられる人は(まれ)だろう。


 困惑した表情のオードリーさんは、しかし意を決して、リリスに(・・・・)問いかけた。


「アディ君が(うそ)を言っているとは思えませんけど、それでも証言が必要です。

 リリスさん、あの方は本当に真竜なのですか?」

「何故、(わらわ)に聞く?」


「だって、貴女は『ベスタ大迷宮』のダンジョンマスターでしょう?」

(2,992文字:2016/08/03初稿 2017/06/30投稿予約 2017/08/23 03:00掲載予定)

・ ワイバーンは猛禽類ではありませんが、鷹は同じく「空を征くモノ」であるワイバーンを、自分と同じ鷹匠に飼育されることを望まないでしょう。

・ DM権能〔眷属召喚〕。「スライム迷宮」とも呼ばれる『ベスタ大迷宮』のマスターとしての立場も持つアディにとって、もしかしたらスライムも眷属に数えられる? だとしたら、彼は自分の眷属を、ダンパーの衝撃緩衝材に使ったりガラスを練り込んだり、好き勝手していたことになりますね(笑)。

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