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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
プロローグ
2/368

P2 貴族の庶子は魔法学者!?

プロローグ〔2/4〕

 生まれてから数年の歳月が経過した。


 ここは、間違いなく異世界だったようだ。

 そして、この世界での俺の名は、「アレクサンドル・ベルナンド」。何と、辺境伯の庶子(しょし)(めかけの子)らしい。

 実の母親は、物心が付いた頃(出生の瞬間から自我があったけど、そういう意味ではなく、一般的に自我をもって行動することが出来る5~6歳頃)にはもう姿を見かけなくなった。後で知ったことだが、結構な大金を渡されて暇を出された、のだそうな。

 その為、俺の養育は使用人(メイド)が担当することになっていた。そして、メイドたちはごく普通に、魔法を使っていた。


 (かまど)に火を(おこ)すのに、着火魔法。食器を洗うのに、創水魔法。

 魔法といっても、単純なものから高位のものまで多種多様に存在していたのだ。


☆★☆ ★☆★


 俺は、幼い頃から、目につく本を片端から読み漁っていた。

 勿論(もちろん)、異世界転生物にありがちな、翻訳(ほんやく)魔法をデフォルトで持っていた訳ではない。というか、ステータス画面など生まれてこの方見たことがないし、スキル取得のアナウンスなど聞いたこともない。

 絵本を読み(メイドに読んでもらい)、言葉の(おん)と文字、そしてストーリーの脈絡から単語の意味を推察し、一通りの言葉を覚えた。そして、異世界語の文字と(おん)のルールを(おぼろ)げながら理解し、今度は歴史書に挑戦する。

 人間の生き方や国の興亡史などは、世界が変われど大した違いはない。なら文字がわからなくても、わかる文字を拾い、そこで語られている内容を推察すれば、わからない文字も予想がつく。

 その予想に基づいて全く別系統の本(この場合魔法書だった)を読めば、その文字について意味が正しいか間違っているかはわかるようになる(間違っていれば文章の意味が通らないから)。そのようにして、幼児らしからぬレベルで知識を深めていったのである。

 絵本と歴史書、そして魔法書しか読まなかった訳ではないが、その三種類を中心に文字通り濫読(らんどく)しながら文字を覚え、知識を(たくわ)えた。

 そして、知識を深めるついでに、魔法についても学ぶことが出来たという訳だ。


★☆★ ☆★☆


 魔法は、基本的に3種に分類される。

 属性魔法、共通魔法、無属性魔法、である。


 属性魔法は、火、水、風、土、の「精霊神」の加護を受けると使えるようになる魔法、らしい。但し、属性魔法は10歳になって精霊神殿で加護の儀式を経るまで使えない。どの属性の魔法が使えるかも、その時になるまでわからないのだそうだ。ちなみに、メイドたちは水属性と土属性の使い手が多く、風属性の使い手は少なく、火属性の使い手は警備役に多い、のだそうな。


 共通魔法は、どの魔法属性でも使用出来る魔法である。基本魔法ともいわれ、【生活魔法】(メイドが使っていた〔着火魔法〕や〔創水魔法〕などがこれにあたる)、【契約魔法】(商業契約や奴隷契約に用いる魔法)、【治療魔法】(怪我を治す〔治癒魔法〕、毒を消す〔解毒魔法〕、そして身体のダメージを回復させる〔回復魔法〕の三つがあり、術者によって効果が違う)、【神聖魔法】(「神聖」といっても精霊神の神官でなくても使える、不死魔物(アンデッド)を消滅させる魔法)、などがある。


 無属性魔法は、精霊神の加護を受けることが出来ず、その為属性魔法が使えない人が使う魔法、らしい。「加護が与えられない人たちに対する、精霊神の慈悲」とまで言われているとか。で、無属性魔法で何が出来るかというと、手も触れずに物を動かすことが出来る、のだとか。「棚の上にある物を取るのに便利かもしれませんね」、とはメイドの弁。


 また、魔法の使い方も大体理解した。

 まず、自身の体内、そして周辺にある魔力を感知する。

 次いで、その魔力を誘導し、成したい事象を引き起こすのに必要な魔力を集める。

 更に、成したい事象を正確に思い描き(イメージし)、そのイメージの通り魔力を解き放つことで、それを成し得た結果を観察(・・)する。

 これで魔法が発動する。「結果を観察出来る」ということは、「魔法が発動した」ということであり、逆に「結果を観察出来ない事象」は、「魔法を使っても叶えられない」ということでもある。


 こう考えると、無属性魔法は簡単である。「あそこにある物を取りたい」と考え、必要な魔力を集めて解放し、「あそこにある物」が「手元にある」姿を観察する。これだけで良いのだから。

 そして、【生活魔法】もその意味では同じだろう。火を点ける。水を創る。それをイメージするのは簡単だから。


 難しいイメージを、単純作業でクリアする方法があるのだそうだ。それが呪文。

 魔法書によると、呪文の言葉一音ごとに意味があり、その言葉を発するごとに魔力に命令を発し、呪文が完成すると魔法もまた完成する。だからこそ、呪文の詠唱は(おろそ)かにしてはならず、それを省略する「詠唱短縮」や「詠唱破棄」などを行うと、その効果も格段と減衰するのだという。


 が、それを踏まえてもなお、疑問が残った。

 「これ、ただのバッチ処理じゃね?」と。


 つまり、「こう唱えれば、このように処理がされ、結果このような事象が発動する」と教え込まれ、それを妄信レベルで信じている為、その通りの結果になるのでは、ということだ。


 これは、別の疑問にも通ずる答えかもしれない。つまり、神や精霊などの存在自体は、「実在するから大勢が信じる」のではなく、「大勢が信じているから実体を持つ」、という可能性だ。


 もしそうならば……

(2,263文字:2015/07/19初稿 2015/12/25投稿予約 2015/12/31 15:00掲載 2016/11/01衍字修正 2017/07/15誤字修正)

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― 新着の感想 ―
[一言] 量子力学ってやっぱほとんど魔法みたいな法則だよね……。猫を作る魔法もあるのかしら(・ัω・ั)
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