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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第一章:「駆け出し冒険者は博物学者!?」
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第11話 旅団の名称・1

第03節 ゴブリン退治〔1/6〕

 孤児院の改造は、いくつかの設備が完成するまではその先に進めることが出来ない。

 その為基本的には手押しポンプ完成までは、計画の実現性の検討と指導者の選定などで時間が(ついや)やされることになる。


 そんな折、アリシアさんからちょっとした話を持ちかけられた。


「なぁ。あたしと旅団(パーティ)を組んで依頼を受けないか?」

「え? パーティですか?」

「あぁそうだ。受けたい依頼(クエスト)があるんだが、単独での受注が出来ないんだ。だが信頼出来ない相手とチームを組むのは危険(リスク)が大きすぎる。

 その意味でアレクなら丁度良いんだ」

「どんな依頼を請けるつもりなんですか?」

小鬼(ゴブリン)退治だ。街道を一日歩いた先にあるカラン村に、ゴブリンの群れが出没するようになったらしい。その退治だ」

「最低受注単位がパーティ、ということは、ゴブリン自体も一匹や二匹ということはないんでしょ?」

「そうだな。具体的な数は不明だ。だがその近くにあるゴブリンの集落の個体数は大体把握されているが、その(ほとん)どが既に死んでいることが確認されている」

「……どうやって?」

「お前が確認したろ? あの廃坑にいたゴブリンは、ほぼ間違いなくあのあたりの集落から株分けされた連中だ。もしかしたらあの廃坑を新たな集落にしようとしていたのかもしれないな」

「そういう話なら了解しました。先日の依頼の続きという意味でも受けざるを得ませんね」


◇◆◇ ◆◇◆


 そして翌日。冒険者ギルドに(おもむ)き、依頼の詳細を聞いた。


()()えずの依頼内容は、ゴブリンの撃退です」

「“取り敢えず”、ですか」

「はい。状況が良くわかりません。おそらく先日の廃坑に棲み着いたゴブリンと同じ集落に棲んでいたゴブリンと思われますが、何故集落を出ることになったのか。

 変な言い方になりますが、東の森の集落のゴブリンとは、うまく棲み分けが出来ていたんです。にも関わらず、ここにきてカラン村に現れて作物を荒らすようになった。おそらく何かが起こっているんです。

 ですから取り敢えずの依頼内容は、カラン村を荒らすゴブリンの撃退。

 そのうえで出来るなら、その原因の調査。

 勿論(もちろん)、原因を突き止めることが出来たら報酬を上乗せさせていただきます。そこまでいかなくとも、カラン村に現れるゴブリンの規模を確認出来るだけでも追加報酬を出します。

 冒険者の中には『自分が死ぬことで、その脅威度をギルドに知らせる』などと(うそぶ)く連中もいますが、そんな情報に価値はありませんから。危険だと思ったら、逃げて帰ってきてください。情報は生きて持ち帰ってください。今回は、それで十分価値があります」

「了解しました。この依頼、受けさせていただきます」


「ではパーティ名を確認させてください」


 ……あ。パーティ単位での受注なのだから、パーティ名がなければ受注出来ないのは当然だろう。


「アリシアさん。パーティ名はどうしましょう?」

「ふむ。何かアイディアはないか?」

「……っていうか、アリシアさんはないんですか?」

「ない」

「いや、そんなきっぱりと言い切らないでも」

「ないものはないんだから仕方がないだろう」

「……そもそもこのパーティのリーダーはアリシアさんなんだから、アリシアさんが決めてくださいよ」

「あたしにそんなセンスはない。アレクが決めろ」


 ……それで良いのか? けど良いというのなら、アイディアはある。


「では【Children(セラ) of ()Seraph(こどもたち)】では如何(いかが)でしょう」


「ちるどれんおぶせらふ? 変な名前だな」

「古い言葉で【熾天使(セラ)の子供たち】、という意味です」


 実をいうと、子供たちの卒院年齢を引き上げ、冒険者ギルドに登録させるという案を出した時からこの名称のアイディアを(あたた)めていた。

 ただその時は、複数の旅団(パーティ)を束ねる氏族(クラン)の名前として考えていた。このクランの下、いくつかのパーティを編成してそれぞれ依頼を受ければ良いのだから。


「……セラの子供たち、か。だがお前の場合、既に子供たちの父親役をしているように思えるがな?」

「というと、セラさんは俺の奥さん、ということに?」

「……10年早い」

「いやでも10年後じゃセラさんは30過ぎちゃいますよ?」

「ならお前が甲斐性を見せて、5年以内に求婚(プロポーズ)するんだな」

「良いんですか?」

「お前が今のまま成長していけば、5年後には誰も文句は言わないだろう」

成程(なるほど)。頑張ります」


「……プロポーズするのは5年後で構いませんが、依頼を請けるのは早めにしてほしいです」


 あ。忘れてた。


「失礼しました。ではパーティ【Children of Seraph】で、ゴブリン退治の依頼を受注させていただきます」

「はい、受け付けました」


 こうして【Children of Seraph】は、カラン村に向かうことになった。


◇◆◇ ◆◇◆


 カラン村までは徒歩で丸一日。とはいっても、大荷物を持っていなければそんなに遠くではない。朝出れば、遅めの昼食を村で取れる程度の距離である。

 カラン村に着き、すぐ村長の家に向かい、話を聞くことにした。


 カラン村は以前から、近くに集落を持つゴブリンとの間で一種の協定を定めていたのだという。これは、相互の領域を定め、その領域を侵した側は相手によって何をされても文句は言えない、というものあった。にもかかわらず、ゴブリンは問答無用で村を襲撃するようになった。その規模も、少ない時で3匹程度、多い時は10匹以上なのだという。

 村の防衛力(腕自慢のおじさんたち)では追い払うことが精一杯で、それも無理ならそれぞれの家に(こも)って通り過ぎるのを待つしかないのだという。

 既に村を覆う(さく)(こわ)され、先日は収穫物を(たくわ)えておく倉庫が破壊された(収穫期前だから大した損害はないが)。

 人的被害はまだ大きくはないが、今後被害が拡大することのないように手を打ちたい、ということらしい。


 そして夜。


 村長の家に泊めてもらう、というよりも迎撃の拠点にさせてもらい、ゴブリンの襲撃を待った。

 時刻にしておおよそ午後8時過ぎ(ちなみにこの世界に時計はない)。

 北側から、ゴブリン6匹が現れた。


 物見役を買って出た村人から報告を受けた俺たちは、すぐに現場に向かった。

 俺は、ゴブリンの最大数が10匹ほどと聞いた時から、それほど苦労する依頼ではないと考えていた。

 というのは、苦無(くない)を〔投擲(エイミング)〕で投擲(とうてき)した時の破壊力はこの世界の常識を絶する。

 つまり、「一投一殺」を保証出来るのだ。

 そして、苦無は消耗品だが現在手元に13本ある。また接近したら小剣(ショートソード)を使えば良い。加えてアリシアさんの戦力もあれば、ゴブリンの10匹や20匹、大して苦労なく(ほふ)れる。そう考えていたのである。


 実際、この夜俺もアリシアさんも全くの無傷で、ゴブリン6匹を撃退した。当然村にも被害はなかった。


 この自惚(うぬぼ)れのしっぺ返しがどのようなものになるかを、今日初めて魔物相手に実戦を経験した俺には、想像出来なかった。

(2,935文字:2015/08/18初稿 2015/12/25投稿予約 2016/01/21 03:00掲載 2016/03/14誤字修正)

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― 新着の感想 ―
加減してクナイを発射するという発想は無いのか 紐を付けるのも回収の為だと思ってた
[一言] >「というと、セラさんは俺の奥さん、ということに?」 >「……10年早い」 なるほど、ここでフラグが立ってたのですね?わかります?
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