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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第三章:「異邦人は歴史学者!?」
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第41話 300年の毒

第08節 軍靴の音が聞こえる〔4/5〕

 更に進んでマートル村へ。ここでは久方ぶりのプリムラとの再会を喜んだ。

 そして、プリムラの両親から、モビレアでこの一年に起こった騒ぎについてを聞かされた。


 結論を言うと、冒険者ギルドのギルドマスターは復権を果たし、代わりにミルトン侯爵は貴族法院の長官職を追われたのだという。ただフロウ男爵と『悪神(ザコルス)の使徒』との関係はただの商取引に過ぎないと、無罪放免となった。

 おっさん(マティス)は副ギルドマスターの地位に就き、おっさんが率いていた旅団(パーティ)【夜啼き鴉】は、ギルド直属の特務となったのだとか。


 どうやら全ては良い方向に向かっているようだ。

 俺たちも安心して、モビレアに戻ることにした。


◇◆◇ ◆◇◆


「久しぶりだな、アレク。嬢ちゃんも随分(ずいぶん)綺麗(きれい)になった。

 おや? そちらの美女は初めてだよな?」

「あぁ、ちょっとした理由で同行することになった――」

御屋形(おやかた)様の奴隷の、リリスと申します。(おも)に身の回りの世話を担当させていただいております」

「……、をい(おい)。その歳で性奴隷は早すぎないか?」

「違う! 何というか、シェイラのときと同じで、彼女の立場を保護する為には俺の奴隷という形を採るしかなかったんだ。だがリリス自身が何もしないのは(しょう)に合わないと言い出して、けど戦闘に出すつもりはないから、結局身の回りの世話をしてもらうことになったんだ。別に性処理までさせるつもりはないよ」

「その必死振りが、全力で『(うそ)です』って言っているように聞こえるぞ?」

「マートルに帰って耳掃除してもらえ。可愛い(めい)っ子はもうしてくれないのか? ならおっさんこそ耳掃除してくれるような綺麗な嫁さん見つけろよ」

「余計なお世話だ!」


「それはともかく、大体のことは聞いた。大変だったみたいだな」

「そうだな。だが、まだだ」

「? まだ、とは?」

「フロウ男爵だ。何故か公爵閣下があの男を(かば)ったんだ。まだ必要な男だから、と。

 だが俺たちは、調査を進めるうちに、ミルトン侯爵よりむしろフロウ男爵の方が本命だったのではないかと思うようになった」

「何故?」

「『悪神の使徒』どもが国境の関を越える際、商人としての手形を使っていたことが分かった。その手形は、フロウ男爵麾下(きか)の隊商のモノだった」

「つまり、最低でも現場と直截(ちょくせつ)の関わり合いがあるのはフロウ男爵の方だ、と」

「そうだ。魔法技研の所長と繋がるのはミルトン侯爵、現場の『悪神の使徒』と繋がるのはフロウ男爵、という関係だろう」

「だがそれを追及する前に、領主である公爵が出てきた。なら、公爵こそが黒幕、という可能性は?」

「ある。が、そうだとしても、フロウ男爵を擁護(ようご)出来ない形で断罪すれば、結果的に公爵閣下の力も()ぐことになるだろう。そうなれば、閣下も余計な火遊びは(つつし)んでくださるに違いない」


 一冒険者の立場では、仮に証拠があったとしても、公爵(王族)を断罪することは出来ない。もし公爵が黒幕なら、本来なら(あきら)める以外の選択肢はないのだ。にもかかわらず、『力を削ぐ』という。おっさんたちの出来る、ぎりぎりの線という訳だ。


「俺たちで、何か手伝えることはあるか?」


 気が付くと、口が勝手に動いていた。俺たちがハティスを出るきっかけになった事件だ。完全に決着出来る可能性があるのなら、放り出したら落ち着かない。


「そうだな。一つ頼みがある」

「それは?」

「商人ギルドの方を調べてほしい。

 商人としての身分もあるお前なら、向こうのギルドでも自由に動けるだろう?」

「わかった。


 俺自身も商人ギルドで調べたいことがあったしな」

「それは何だ? 差し支えなければ聞かせてもらえないか?」

「俺は、コールの町へ行き、そこからモビレアまで戻って来たんだ。

 だが、西から東への商隊は少ないが、東から西への商隊はかなり多く、且つ大規模だった。

 フロウ男爵の一件と係わりあるのかはわからんが、もしそうなら――」

「もしそうなら、フロウ男爵が敵国マキアに物資を流している可能性がある、か。それは立派な利敵行為・売国行為だ。公爵閣下であっても庇えない」

「フロウ男爵と係わりある話なのかどうかも分からない」

「ああ。だが俺としては、係わりある話だと思う。

 調査の最中(さなか)に『300年の(カンタレラ)』という言葉が出て来たんだ」

「『300年の毒』?」

「300年前といえば、スイザリア建国の頃だ。

 建国は383年だから、317年前だ。そしてスイザリアとマキアの戦争が終結したのは399年、(まさ)に301年前。それに399年に交わされた条約はあくまで停戦条約で、終戦条約じゃない。今に至っても、終戦条約も講和条約も交わされていないんだ。

 そして、フロウ男爵は爵位こそ低いものの、マキアとの戦争の際補給を担当した功績で叙爵(じょしゃく)された貴族だ」

「つまり、フロウ男爵はスイザリアをマキアに売り渡す為に、300年かけて準備をしていた、と?」

「強引過ぎる推理かもしれない。だが、その『300年の毒』という言葉から、そう連想出来るんじゃないか?」


「よくわかった。『300年の毒』。その言葉に注意して調べてみるよ」


☆★☆ ★☆★


大陸史〔抜粋:南西部・帝国崩壊後〕

84年 アザリア教(おこ)る。

311年 フェルマール王国建国。

312年 リングダッド王国建国。

351年 フェルマール王国、大陸南西部の覇権を賭けてリングダッド王国と戦端を開く。

354年 マキア王国建国。フェルマールとリングダッドの間の戦争から避難した者たちが興した国であった。

355年 マキア王国、フェルマールとリングダッドの戦争に介入する。

360年 マキア王国、リングダッド王国と同盟締結。

362年 フェルマール王国・リングダッド王国・マキア王国の三者間で講和条約が締結される。大陸南西部はリングダッドとマキアの両国が二分し、フェルマールの一人負けの様相を(てい)することとなった。

383年 スイザリア王国建国。フェルマール・リングダッド・マキア三ヶ国間の戦争に於ける戦場となった地域の者たちが、何処(どこ)の国にも(くみ)さないとフェルマール王国からの独立を宣言したのである。

同年、スイザリア王国とリングダッド王国の間で戦争が始まる(「200年戦争」)。

384年 マキア王国、リングダッド王国との同盟を理由に、スイザリア王国に宣戦布告。

399年 マキア王国、リングダッド王国との同盟を破棄。スイザリア王国と単独交渉により停戦が成立。

402年 フェルマール王国、スイザリア王国並びにマキア王国に対し宣戦布告。

同年 マキア王国、スイザリア王国との間に対フェルマール臨時協定を締結。フェルマール王国との戦争時に限り、共戦体制を取ることとなる。

407年 フェルマール王国、マキア王国と単独講和。南部ベルナンド地方全域(南西ベルナンド地方はマキアの、南東ベルナンド地方はスイザリアの占領地であったが)の領有権をマキア王国に認めさせる。

411年 フェルマール王国、リュースデイルの戦いでスイザリア軍を撃破。これによりベルナンド地方全域の支配権を確立する。同年、スイザリアと講和が成立。


★☆★ ☆★☆

(2,962文字:2015/12/06初稿 2016/07/31投稿予約 2016/09/17 03:00掲載 2016/10/11誤字修正)

・ 「カンタレラ」は、15世紀のイタリアの貴族チューザレ・ボルジアが政敵を暗殺する為に使用した毒の名称です。なおその毒の正体は諸説あるようです。

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