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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第三章:「異邦人は歴史学者!?」
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第27話 遭遇――エンカウント――・2

第06節 未知なるベスタを迷宮に求めて(前編)〔4/7〕

 地底湖の滝の裏から続く道は、照明石で照らされていない。その為手前の灯籠(ランタン)と探索灯で足元を照らしながら前へ進むことになった。


 そして、それから数日が経過する。


 はっきり言って、この『ベスタ大迷宮』という迷宮(ダンジョン)に足を踏み入れてから正確に何日が経過したのか、もうわからない。地底湖に入る前に3回、地底湖(はん)で2回、滝裏の通路に入ってから8回野営しているが、時計がない為正確に24時間ごとに野営しているとは言えない。また昼と夜で明るさが変わる訳でもないので、一日の経過もわからない。

 前世に於いてどこかで聞いた話だが、人間の体内時計は一日25時間で、生活のリズムでそれを補正しているのだとか。それが正しいのなら、仮に体内時計に従って規則正しく野営していたとしても、野営回数で経過日数は計れないということになる。

 だから無理()り「野営回数=(イコール)経過日数」と定義して、既に13日が経過して14日目に入ったことになる。


 この数日間も、魔物との遭遇はそれなりにあった。

 多かったのは蜥蜴(リザード)(マン)。「(マン)」と()われていても、分類としては小鬼(ゴブリン)などと同じく鬼系の魔物とされる。水辺に多く生息し、ゴブリン同様武装を使い(こな)す。なおその肉は食用に足るというが……、俺もシェイラも解体して食べてみたいとは思わなかった。

 ただ、その(うろこ)はそれなりの値段で売れる。ので、魔石を抜いた後に()ぎ取れる限り剥ぎ取った(別にひとつ残らず剥ぎ取ろう、等と執念を燃やすつもりはないが)。


◇◆◇ ◆◇◆


 そんなある日。通路の先に光が見えた。

 行ってみると、照明石で照らされたかなりの大きさの鍾乳(しょうにゅう)(どう)に出た。


 そして、右手の方から金属を打ち合う音と、人間の声が聞こえた。


「聞こえたか?」

「はい、聞こえました」

「どうする?」

「何か面倒になりそうな気はしますが、同時に情報を得ることも出来ると思います。

 仮に何の情報も得られなかったとしても――ご主人様の御言葉を借りるのなら――『何の情報も得られなかった』という情報を得られるかと。

 行ってみる価値はあるかと思います」

「良し行こう」


 (しか)してそこでは、6人の冒険者たちが50を超える数のリザードマンに囲まれて戦っていた。

 冒険者たちのうち無傷の者は既に無く、武器さえ手放し仲間たちに(かば)われている者も二人いる。うち一人はかなりの深手を負っているようだ。

 一方でリザードマンたちは、後方にリーダーらしき個体が、前線に強い力を持つ個体がいて、その2匹を中心に(まと)まっている。どう考えても、冒険者たちはじり貧だ。


「シェイラ。お前は前線の個体を()れ。俺は後方の大将を殺る」

(かしこ)まりました」

「行くぞ!」


 俺たちは、まず〔空間(エアロ・)機動(マニューバ)〕でその体を鍾乳洞の天井近くまで運び、そこから重力の助けを借りて〔突撃(チャージング)〕でそれぞれの標的を攻撃した。ちなみにシェイラの(ハンド)手甲(クロー)と俺の戦闘(コンバット)ナイフには、〔加熱(ヒーティング)〕で赤熱化済みだ。


 後上方からの、致命的な威力を持つ奇襲で、両個体は即死した。


蹂躙(じゅうりん)しろ!」


 俺の号令にシェイラは返事もせずに、四方八方から迫りくるリザードマンたちを片端から()ぎ払った。

 俺もまた、リザードマンたちの後方から一気に攻め上る。

 いくら数を(そろ)えても、完全に奇襲が決まり一撃で大将と主力が(たお)れ、更に挟撃(きょうげき)された状態では、50が150でも踏み(とど)まれなかっただろう。

 (ほど)なくして、リザードマンたちは一匹残らずその場で(むくろ)と化した。


◇◆◇ ◆◇◆


「礼は言わないわよ」


 冒険者たちは、はじめは何が起こったのかわからないという(てい)で、そして同時に気力と体力が尽きたのか言葉を発する余裕も無いようだったが、次第に顔に精気が戻ってきて状況を把握しようとしていた。

 そんな中、彼らのうちの紅一点である女冒険者が、まずそう口を開いた。


「あんたたちが何者か知らないけれど、あたしたちはあんたたちに助けられなくても何とでもなったわ。余計なことをした相手に、礼を言う必要は無いでしょ?」


「なっ! 貴女は――」

「シェイラ、止めろ。」

「ですがご主人様」

「構わない。


 それから、余計なことをしてしまい申し訳ありませんでした。言うまでもありませんが、俺たちが斃したリザードマンの素材の所有権を貴方がたに対して主張するつもりもありません」

「フン、当然よね」

「ではこれで失礼します。


 シェイラ、行くぞ」

「……ご主人様、私は納得出来ません」

「良いんだよ。


 俺たちから見たら、傷だらけで〔回復魔法〕を使う余裕も無くても、武器すらも手放しているように見えても、俺たちのような経験の浅い冒険者には計り知れない何かがあって、彼らには何らかの秘策があったんだ。

 きっとこの後で同じだけのリザードマンと遭遇しても、彼らは笑ってそれを(しの)げるに違いない。

 俺たちのしたことは、だから余計なことだったんだ」


 そう。俺たちの助力を「余計なこと」と言い切るのならそれで良い。それ以上俺たちが彼らに気兼ねする必要は無いというだけのことだから。


「……そういうことなら、わかりました。ご迷惑をおかけしました」


 シェイラにも俺の気持ちが伝わったようで、彼らに慇懃(いんぎん)な態度で頭を下げ、(きびす)を返した。


「待ってくれ!」

「何か? 俺たちは貴方がたにとって邪魔者でしかないのでしょう? なら話すことなど何もないと思いますが」

女冒険者(セシル)のことは俺から謝罪する。あいつは余程(よっぽど)の相手でないと素直になれない(たち)なんだ」

「ツンデレ、って奴ですか。そういうのは身内でやってください。

 初対面の相手の態度を斟酌(しんしゃく)するほど、俺たちは物好きじゃありません」

「わかっている。俺たちが全面的に悪い。


 ところで、キミたちが見抜いているように、俺たちの中で戦えるのは俺とあと二人しかいない。補給(ベース)拠点(キャンプ)まで帰還出来るかどうかも(あや)しい。

 そこで、キミたち二人に護衛をお願いしたい。

 報酬は()()で払う」


「フム。では白金貨6枚(金貨600枚)で如何(いかが)でしょう?」

「ろく……。流石にそれはボり過ぎじゃないか?」

「そうよ巫山戯(ふざけ)ないで。(たか)が護衛に白金貨6枚なんてありえないわ」

「ではこの話は無かったことにしても構いませんよ?

 けど何故貴方は俺たちのような若造冒険者に護衛を頼むのですか?

 そうしないと拠点まで戻れないと思ったからでしょう?

 つまり、この依頼の報酬額は、貴方がたの命の値段です。

 おひとり白金貨1枚。これはどちらかといえば安いのではないですか?」

「……わかった。その金額で良い」

「では半分を前金(まえきん)でお願いします」

「それを持ち逃げしないという保証は?」


「ここで貴方がたを放置して、全員死亡が確認されてから装備と金貨を回収した方が、俺たちにとっては楽なんです。わざわざ持ち逃げする方が、手間ですよ」

(2,978文字:2015/12/02初稿 2016/07/03投稿予約 2016/08/20 03:00掲載予定)

【注:「人間の体内時計は一日25時間」というのは俗説で、National Geographic日本版「連載 睡眠都市伝説を斬る 第2回 体内時計25時間は嘘だった!」(2012年12月3日号掲載)(http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20121203/332679/)に拠りますと、24時間10分(個人差有)なのだそうです】

・ ツンデレ、って、それを赦せる(赦される)間柄なら可愛いのかもしれませんけど、そうでなければ腹立たしいだけでしょう。例え頬を赤らめながらのツンデレ台詞であったとしても。「惚れた女」が自分に対してのみツンケンするのならそれさえも愛おしいのかもしれないけれど、「ツンケンする女に萌える」感覚は、筆者には理解出来ません。

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