第14話 成長期と魔法再編
第03節 二人の旅路 phase-2〔2/3〕
結論を言うと、プリムラの手術は行われることになった。
だが、プリムラの両親が立ち会うこと。これを条件として提示された。
「という訳だから、おっさんは席を外してくれ」
「……何故だ!」
「おっさん、自分の姪っ子の裸を見たいのか?」
「なに? お前はプリムラの裸を見る気か?」
「俺は見なければ手術出来ない。おっさんはどうだ? ご両親を納得させられるだけの理由があるのか?」
「うっ……」
「そういう訳で、出てってくれ」
「貴様、プリムラの身体を変な目で見たら承知しないからな」
「自己紹介、乙。俺はおっさんと違うよ」
そして、プリムラの服を脱がせ、身体を触診した。
はっきり言ってシェイラより出るところが出ている少女である。それを隈なく触るというのは(おっさんにはああ言ったが)男としてクるものがある。しかし治療の為、と自身に言い聞かせ、理性を総動員し、何とか下半身を制動して、無感動を装いながら、魔石が埋め込まれた場所を特定した。
脇腹。よく見てみると、切開手術痕が見て取れる。
この世界の治療術は、〔治癒魔法〕と〔回復魔法〕に頼ってしまう為、傷口に雑菌が付着してしまうことを拒めない。傷口表面だけだから生命に異常を来すことはない(だから〔解毒魔法〕の必要性に思い当たらない)が、逆に(上手くやれば傷痕を全く残さない治療も理論上可能な筈なのに)傷痕を必ず残してしまう。
その為、切開もその傷跡に沿って行うことにした。
摘出した魔石は小さいもので、まだその周辺に脂肪等が纏わりついていなかった。つまり、単純に埋められた魔石を摘出しただけ、で終わったのだ。
今回は〔血流操作〕の魔法で出血そのものを無くし、摘出後も〔治癒魔法〕〔回復魔法〕で傷口を縫合することで、その手術痕は目立たない程度の大きさに抑えることが出来た。
◇◆◇ ◆◇◆
「何とお礼を言ったら良いのか」
「別にお礼なんていりませんよ。俺としても、何か持ち出しがあった訳ではないですしね」
「それでは気が済みません。何かお礼をさせてください」
「そうですか。では……
革製品の加工は出来ますか?」
「簡単なモノなら、ですが」
「では、シェイラの鎧を見てほしいんです。
一応大き目の鎧を見繕ってきたんですが、もうシェイラの体に合わなくなってきているんで」
「そんなことで良ければ喜んで。アレク君の鎧も見させてもらいますよ」
流石に俺は5cm程度、シェイラに至っては10~15cm程度身長が伸びている。今後のことも考えると、もう少し遊びが欲しい。
このマートル村は養蚕と綿花で生計を立てている村のようで、それらの細かい作業を皆得意としていた(皮革オンリーの原始人は俺たちくらいだろう)。ついでに二三、植物繊維の柔らかい衣服や布類、毛布や布団をこの村で調達することにした。
この村で欠けているもの。それは肉類だった。熟成済み、(燻製や塩漬け等)加工済み、どちらも結構需要があった。俺も調子に乗ってイノシシ一頭単位、クマ一頭単位で肉類を貯蔵していたから、一部を放出してもかなり村人からは喜ばれる結果になったのである。
◇◆◇ ◆◇◆
この、のんびりした時間で、俺はもう少し自分のことを行った。
具体的には、魔法の整理である。
例えば、無属性魔法Lv.1【物体操作】派生01a.〔投擲〕。
最近では、ナイフ等を投げる為より自身の身体を宙に運ぶ為に活用するシーンが目立つ。
この魔法は、「投擲」と名付けているものの、物を投げる為の魔法(つまり物体に力を作用させる魔法)ではなく、物に運動を課す為の魔法である。そう考えると、そもそもの命名が間違っていたということになる。
よって、〔投擲〕は〔射出〕と名称変更し、同時に自身の身体を宙に運ぶ為の魔法を派生06.〔空間機動〕として再定義した。空中静止の魔法はまだ確立出来ていないが、これで空中戦が更に容易になる。
続いて、ロープワーク。シェイラの故郷の集落での戦いで、敵を縛る為に【物体操作】の基本魔法を使っていたが、これを術として定義し、派生07a.〔縛縄〕とした。ついでに縛りに限定しない、ロープを自在に動かす魔法として派生07b.〔自在縄〕も定義する。
Lv.4【気流操作】も、もう少し戦闘向きの魔法を研究した。殺傷力より制圧力を優先した攻撃魔法、派生03.〔気弾〕。勿論、使い方によってはかなりえげつない殺傷魔法になるが。
ちなみに、この魔法を開発した副産物として、気圧操作が出来るようになった。そして、一般的に気圧が高まれば内部分子の運動は加速する。つまり、温度が高まるのである。
分子運動の制御(温度の制御)が出来れば、無属性魔法Lv.5【分子操作】、加熱/冷却/凍結といった現象を発現出来る。物理学的には加熱は冷却よりエネルギー効率が良いが、魔法的には加熱(加速)も冷却(減速)も大差ないのだから。
実をいうと、先日聞いた神話級魔法。俺にとって、あれの殆どは実現可能だ。とは言っても大半は単純な力不足で不可能だが、そのハードルを越えさえすれば再現出来る自信がある。
そして、現在の魔法使いたちが実現出来ない理由も、よくわかる。
例えば、〔星落し〕。「天空の星を落とす魔法」と解釈し、天の星を落とそうとしているのなら。
その魔法が対象となる星に届くとは思えないし、届いたとしても術者の魔力で星を動かせるとも思えない。更には動かすことが出来たとしても、その星をこの星まで持ってくるのにかかる時間はどの程度だ? オマケに、全部成し得たとしたら。場合によっては太陽より大きな星をこの星(惑星であるこの星など塵以下のサイズだろう)にぶつけることが出来るのだとしたら、その瞬間(というかある程度近付いた時点で)この世界は終わる。
時折天から落ちてくる星は、天の星が落ちてくるのではなく、天の空間に偏在している欠片に過ぎない。それを知らなければ、この研究は完成する筈がないのだ。
新しい可能性に目を向けつつ、俺は次なる冒険に気持ちを馳せていた。
(2,667文字:2015/11/19初稿 2016/05/31投稿予約 2016/07/25 03:00掲載予定)
・ 本文に於いて「皮革オンリーの原始人は俺たちくらい」と言っていますが、下着や肌着は植物繊維質の生地(ミリア作)です。




