4月18日②(わずかな不安)
「よし、スーパーで買い物して行こう」
敦志は梨絵の機嫌を取るため、子供たちを喜ばせるために少し楽しそうに言った。
「ヤッター!」、「行くー!」
予想通りに葉菜と亜依が大喜びで盛り上がり、それを見た梨絵も少し笑顔を見せてくれて敦志はホッとした。
自宅に車で帰る途中、スーパーに寄って敦志と梨絵は晩酌用の酒とつまみを買い、子供たちはそれぞれ好きなお菓子を買った。
この一家はちょっとした楽しみとして、休みの前の夜は夫婦はお酒を飲み、子供たちはジュースとお菓子を食べて少しだけ夜更かしをすることが定番となっていた。
ささやかだが、1週間に一度のこのイベントは子供たちが喜んでくれて、ゆっくりと家族で過ごせる大切な時間になっていた。
「もう11時だから寝るよ」
1ヶ月振りに家族が揃った楽しい時間はあっという間に過ぎ、いつものように梨絵の号令で終了を迎え、みんなで2階にあるそれぞれの寝室に入った。
寝室は燐太郎と葉菜が同じ部屋で、敦志と梨絵と亜依が同じ部屋になっており、夫婦は亜依が小さいためベッドは別々になっていた。
「梨絵・・・」
「梨絵・・・」
「梨絵・・・」
ベッドに入り約30分が経ち、亜依が寝たことを確認して敦志は梨絵を呼んだが返事が無い。
約1ヶ月、一人で過ごした敦志は自分が梨絵を求めることはごく当たり前で、梨絵も待っていると決めつけていた。
しかし、予想外に梨絵は呼んでも反応が無い。
梨絵が少し飲み過ぎて寝てしまったのかもしれないと敦志は考え、起きて欲しくて梨絵のパジャマの間から体を触った。
すると、梨絵はわずかに反応したがいつものように起きようとはしない。敦志は少しイライラしながら、体を触り続けたが、それでも梨絵は無言のままだ。
とうとう敦志は、自分の欲求と梨絵の無反応な冷たさに我慢が出来ずに梨絵のパジャマを脱がそうとした。
「ごめん、今日はできない」
梨絵が小さい声で言った。
「・・・」
敦志は欲求のまま強引に求めた自分が恥ずかしくなり、
何も言わずに自分のベッドに戻り、布団に入って梨絵に拒否された原因を考えたが、酒の酔いも手伝い答えは出ないまま眠りについた。
ただ、敦志の違和感がより強くなり、わずかな不安が頭をよぎった。
そして、このわずかな不安は翌日に現実のものとなる。