4月18日①(わずかな違和感)
「パパー」
3人の子供たちが大きな声と笑顔で出迎えてくれた。
「少し太ったんじゃない?」
続けて、妻の梨絵からいつもの厳しい一言で帰ってきたと実感が湧いてきた。
約1ヶ月の出張を終え、自宅から近い新幹線の駅に妻と子供たちに来てもらい、妻の運転する車で久し振りの我が家へ向かった。
「パパ、仕事忙しいのに何で太ったの?」
今年10歳になる長女の葉菜は梨絵が聞いてきそうな質問をしてくる。
夫の敦志は大きくなるにつれて妻に似てきたことを改めて感じながら答えた。
「旅館にずっといて贅沢したからね、それにいつも食べない朝ごはんも毎日食べたからだね」
長女の質問に答えるとほぼ同時に、梨絵からいつもの厳しめの一言が飛んできた。
「明日から今まで通り朝ごはんは無いから」
「わかってるよ」
少し憮然としながら敦志は答えたが、心では今回の出張を機会に規則正しい生活を送りたいと考えていたので、梨絵のこの一言に気分が沈むことを感じると同時に、梨絵がいつからこのように厳しい女性になってしまったのか考えるが答えは簡単には見つからない。
「燐太郎はちゃんとお兄ちゃんしてたか?」
気分を無理矢理変え、もうすぐ12歳になる長男の燐太郎に声を掛けてみる。
「・・・」
「・・・うん」
いつも通りゲームに夢中で空返事が返ってきた。
「あーちゃんもいい子にしてたよー」
代わりに今年3歳になった次女の亜依が元気いっぱいに答えてくれた。
敦志は妻と子供たちのいつもの会話しながら、いつもの日常に自分が帰って来れたことが嬉しかった。
ただ、梨絵が自分のことを避けるように顔を合わせないようしていることに少し違和感を覚えたが、機嫌が少し悪いぐらいに簡単に考えて気にしないようにした。
この少しの違和感の正体が翌日になって突然わかるとは敦志は思いもしていなかった。