第71話「温泉の神ふたたび」
ポン太は大丈夫そうだけど……
ポン吉は絶対温泉の神さまを怒らせると思います!
でもでも、レッドが一緒だから大丈夫かな?
今回も子煩悩な温泉の神さま、登場です。
こんな神さまだったら、温泉すごく楽しいかな??
「レッド、あんまりはしゃいじゃダメですよ」
「えー、たのしいのに~」
「むー」
今日も夕飯のおかずに豆腐をもらいに行くところです。
レッド、お鍋を持ってさっきからクルクル舞ってますよ。
いつも楽しそうですね、レッド。
「じゃ、はしゃぐのは行く時だけですよ」
「なにゆえ~」
「だって、お豆腐もらってから踊ったら、お豆腐グチャグチャ」
「なるほど~」
って、まぁ、帰りのお鍋はわたしが持つのがよさそうですね。
さあ、お豆腐屋さんです。
「こんにちは~」
「あ、ポン姉、豆腐もらいに来たのかよ」
「うん、ポン吉」
「油揚げも持ってくか?」
「うん、コンちゃん喜ぶから」
ポン吉、レッドから鍋を受け取ると早速お豆腐を入れてくれます。
奥からポン太も出て来ました。
「ポン姉……」
「あ、ポン太」
「今日もコン姉じゃないんだ」
「悪かったね、わたしで」
「そ、そんな事ないけど……」
ウソです、ポン太、すごい落ち込んでます。
「ねぇ、ポン太、ポン太がお豆腐配達してくれたらいいと思うよ」
「そうなんですけど……」
レッド、ポン太の足に抱きついています。
ポン太が眼鏡だから甘えているんでしょう。
「配達してくれると、わたしも楽できるんだけど」
「お店、任されてるから、離れられないし」
「え、おじいちゃんとおばあちゃんは?」
「おじいさん達は昼、ここで働いています」
「うん、そうだね」
「ボクとポン吉が学校から帰ってきたら交代して、買い物に行ってるから」
「ふうん、ポン太とポン吉だけなんだ」
「ポン吉は遊びに行っちゃう事あるし」
ポン太がにらんだら、ポン吉愛想笑い。
「まぁ、なんでもいいから、理由つけてパン屋さんに来ていいよ」
ポン太、レッドを抱き上げます。
レッド、ポン太の眼鏡にしっぽ振りまくりです。
「ぽんたすきすき~」
ああ、もう、ポン太は男ですよ、誰にでもチューしますね、レッドは。
わたし、目で語りかけます。
『ポン太、レッドを怒ってもいいんだよ』
『子供ですし……』
『ポン太、大人ですね』
『そう……パン屋さんに遊びに行っても……』
『うん?』
『遊びに行っても、レッドがいたら……』
『あー!』
そうです、レッドがいたら、ポン太はコンちゃんに近づけないかも。
『まぁ、レッドがいない時もあるから、運だよ運』
『じゃ、お店終ってから豆腐、配達してもいいかも……』
『よろしくお願いしますよ』
「あ、そうだ!」
「どうしました?」
「おじいさんからコレを預かったんです」
ポン太がポケットから出したのは温泉の鍵です。
「掃除の仕方、ポン姉から習うように言われました」
「えー! わたしが教えるのー!」
温泉掃除を教えるために、わたし一緒に行く事になりました。
ポン太・ポン吉・レッドにわたし。
ただ、行く前から、不安もあるんです。
温泉といえば「温泉の神さま」。
アレがきっと出るんです。
最初、お風呂掃除と一緒だから、なにもわたしが教えなくてもって思ってました。
でも、アレが、神さまが出るなら、教えておかないとダメでしょう。
ってか、多分今日は、ポン太・ポン吉は掃除になりません。
きっと神さまにびっくりするはず。
「ポン太もポン吉も、温泉入った事は?」
二人とも首を横に振ります。
ポン太が、
「ぽんた王国の近くに温泉はあったけど……しっぽあるから」
「あ~、なるほどね」
「この村は……あんまり気にしませんよね」
「わたしやコンちゃん、シロちゃんもいるいね、レッドも」
「なんだか、しっぽを気にしているのが……バカらしくて」
「ポン太はなにもされないの?」
そうです、なんでポン太はなにもされないのでしょう?
「ねぇねぇ、ポン太はしっぽ、モフモフされないの?」
「はい……別に」
わたし、今でも生徒にモフモフされます。
レッドもしょっちゅうされてるの見ますよ。
レッドはくすぐったいだけで嫌じゃないみたいだけど……
わたしはしっぽをモフモフされるのは嫌なんです!
ポン太のしっぽをつかまえて、手触りをチェック。
「ポン姉……なにを?」
「いや、わたしのしっぽと一緒と思うんだけど……」
違い……イマイチわかりませんね。
そんな事をしているうちに温泉です。
「ポン吉!」
「なになに、ポン姉~」
ポン吉はレッドと手を繋いでいます。
「ポン吉は大きなお風呂、入ったことありますか?」
「うんにゃ」
「じゃ、大きなお風呂を見てはしゃいじゃダメですよ」
「おまかせだいっ!」
返事はいいんですけどね~
たまらなく不安~
いや、楽しみです……うふふ。
「みんなが入る温泉だから、浸かる時は先に体を洗ってね」
「は~い」
「レッド、守れますか?」
「おっけ~」
レッドも不安だけど……ま、レッドがやられちゃう事はないでしょ。
なんたってレッドは神さまのお気に入り。
わたし、さっさとスク水に着替えです。
ポン太、そんなわたしをポカンと見てます。
「なんですかポン太、わたしのスク水にドキドキ?」
「いや……水着持って来てないから」
「ポン太達は裸でいいんですよ」
「え?」
「いいから、さっさと脱げーっ!」
もう、ポン太・ポン吉の服を剥ぎ取っちゃうんです。
レッドは自分で脱いでますね。
さ、温泉に突入です。
「ぽ、ポン姉っ!」
「なんですか、ポン太」
「ボクは裸で掃除を?」
「デッキブラシを持っているのは誰ですか?」
「え……ポン姉……だけ?」
わたしとポン太が話していると、ポン吉が叫びます。
「すげーっ! プールかよっ!」
ああ、ポン吉ダッシュです。
ジャンプ。
湯船にダイブ。
お湯がプルプル震えて龍の形になって盛り上がり!
飛び込んだポン吉も、持ち上げられてびっくりしてます。
龍の形の温泉の神さま、じっとポン吉を見ます。
ポン吉、神さま見てびっくりしているみたい。
ああ、今からポン吉は茹でタヌキになっちゃうんです。
かわいそう……でも、一度痛い目にあえば、いい薬ってもんでしょう。
って、神さま、急にわたしの方に向き直りました。
そしていきなり口を開いて熱湯噴射。
「ちょっ、神さま、なんでわたしをっ!」
そーです、飛び込んだのはポン吉です。
それに熱湯攻撃、わたしだけですよ!
隣のポン太には当ってないんです。
「タヌキ娘よ……子供を連れて来る時は躾てからにせぬか!」
「むう……そう言われればそうですね……一応教えたんですよ」
って、わたし、しっぽを引っ張られます。
隣のポン太が引っ張ってるの。
「なんですか、ポン太!」
「ぽぽぽポン姉……あれはなにっ!」
「あの龍は温泉の神さまなんですよ」
「は……温泉の神さま?」
ポン吉がポン太の横に降ろされます。
神さま、ポン太達に顔を寄せて、
「仔タヌキ達よ、名を名乗るのじゃ」
「ポン太です」
「オレ、ポン吉」
「けのいろがあかいからレッド」
わたし、神さまにテレパシーします。
『じゃ、わたし、男湯掃除します』
『うむ、頼んだぞ』
『神さまもお願いしますよ』
『何をじゃ?』
『ポン太やポン吉にも温泉マナー教えておいてください』
『うむ……』
って、わたしと神さまが目をやると……ポン太・ポン吉・レッドが並んで洗いっこしてます。
『儂の仕事はなさぞうじゃの』
『ま、テキトーに遊んでていいですよ』
途端に神さまの体の輝きが増します。
『そうか、今日は子供が三人もいるのじゃ!』
子煩悩な神さまです。
さ、わたしは男湯掃除ですよ。
一人で掃除は大変か……って?
そりゃ、一人でやるのは大変ですが、神さま遊ぶから、女湯掃除、今日はなしでしょう。
男湯だけならおまかせです。
さーて、男湯掃除、コンプリートです。
女湯に戻る……までもなく、楽しそうな声が聞こえてきますよ。
ドアを開ければ、レッドとポン吉、神さまに乗ってジェットコースターやってます。
「どうじゃーっ!」
「きゃー!」
「神さまスゲー!」
レッドもポン吉も楽しそうです。
あれれ、ポン太はどうしたんでしょう?
って、見れば湯船の隅でポカンとしてますよ。
「ポン太、どーしたんですか?」
「ポン姉……あれは神さまなんですよね?」
「そーですよ」
「いいんですか?」
「……」
止めた方がいい……思った時です。
女湯のドアが開きました。
覗き込むのはミコちゃんです。
覗き込んだ瞬間はいつものミコちゃん。
でも、神さまジェットコースターを見た瞬間、髪がうねります。
「何やってんですかっ!」
ミコちゃんが腕を振るうと雷発射。
雷、温泉の神さまに命中して、崩れ落ちてしまいましたよ。
ミコちゃん湯船の所まで行くと、
「まったく、神さまなんだから、しっかりしなさいっ!」
湯船のお湯、ピクピクしてます。
「わ、儂のせいではないのじゃ」
「じゃ、何ですかっ!」
「レッドが可愛いのがいかんのじゃ」
「このバカ神っ!」
ああ、ミコちゃん雷連射です。
それを見て、レッドもポン吉も、そしてポン太も小さくなってます。
「ねぇねぇ、ミコちゃん」
「あ、ポンちゃん、いたんだ」
「そろそろ神さま折檻するのやめたほうが……」
「?」
「みんな、びっくりしてるよ」
ミコちゃん、レッド達を見ます。
震えている三人。
あ、レッド、走ってきました。
ミコちゃんに抱きついて、
「ミコ姉すご~い」
レッド、感動で震えてたんですね。
わたし、ポン太とポン吉に近付きます。
「二人とも……温泉で遊ぶと折檻ですよ」
ポン太、わたしにしがみついて、
「あの人は……すごかったんですね!」
ポン太も感動で震えていたんです。
ポン吉もわたしの腕を引っ張って、
「しっぽないのに……すげー姉ちゃんだ!」
ポン吉もびびってるわけじゃなさそう。
そして二人とも、「ポッ」って赤くなります。
「綺麗な人ですね」
「すげー美人だ!」
ポン太もポン吉も言いますね。
「二人とも……」
「はい、なんですか、ポン姉」
「なんだよ、ポン姉」
「ポン太はコンちゃんが好きで、ポン吉はシロちゃんが好き……」
二人とも、また「ポッ」ってなります。
「ミコちゃん見て、赤くなったの、コンちゃんやシロちゃんに言おうかな~」
途端に二人とも青くなりましたよ。
「千代ちゃん、食べてはいけません」
「?」
「メロンパンは百円なんですよ」
「これ、ポン、千代はよいではないか」
タダ出ししてるから、お店に子供、来ないんですよきっと!