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第69話「ポン吉vsシロちゃん」

 ポン吉もシロちゃんとデートしたいみたい。

 でも、シロちゃんの早撃ちに勝てるのかな?

 ポン吉は遊びの天才だけど……

 勝負はどーなんだか……

 でもでもシロちゃんも困っているし……


 今日もレッドと一緒にお豆腐屋さんに行きますよ。

 工事中でも営業してるんです。

「こんにちは~」

「いらっしゃい、弟も一緒だね」

「おばあちゃ、こんちは」

「はいはい、挨拶できるの偉いねぇ」

 おばあちゃん、レッドに油揚げプレゼント。

 レッド美味しそうに食べてます。

「ねぇねぇ、おばあちゃん」

「なんだい、あんたも揚げ、欲しいのかい?」

 おばあちゃん、一枚出してくれます。

「いや……コンちゃんのお土産用に欲しいです」

「そうかい……で、なんだい?」

「油揚げなんですが……」

 レッド、嬉しそうに食べてます。

「そんなに美味しいですかね?」

「……」

 おばあちゃん、考え込んでます。

 レッドに近付いて、しっぽを触りながら、

「まぁ、この子とお稲荷さまはキツネだからね」

「コンちゃんとレッドの食べてるのを見ると……」

「うん?」

「すごく美味しいかと思ったらそうでもないです」

「……」

「お味噌汁やいなり寿しになったらおいしいけど」

「ま、それが普通じゃないかね」

「レッドもよく、こんなのモリモリ食べれますね」

「ウマウマです」

「そうかなぁ~」

 すると奥から声です、ポン吉。

「なんだとー!」

「!!」

「ポン姉、オレの揚げに文句かよっ!」

 ポン吉、声は怒ってます。

 でも、ニコニコ顔で出てきました。

「ポン吉、怒ってるんですか怒ってないんですか?」

「オレもイマイチ、味わからない」

「作ってる本人がそんなのでいいの?」

「揚げる時の『ジュワ』ってのが好きなんだぜ」

「そうなんだ」

「ふふ……オレ、これ作ってるだろ」

「うん、それで?」

「コン姉に褒められたぜ」

「そう、よかったね」

 わたし、言ってから不安になりました。

 ポン吉をつかまえて、耳元でささやきます。

『ポン吉っ!』

『な、なんだよポン姉っ!』

 わたし、ポン吉をつかまえたまま、周囲を確認。

 うん、都合いい事にポン太はいません。

『ポン吉……まさかコンちゃん好きになったりしてませんよね?』

『はぁ? なんだよそれ?』

『だって油揚げ、褒められたんだよね』

『うん』

 わたし、ポン吉の目をじっと見ます。

 ポン吉キョトンとして見返してくるばかり。

「褒められただけなんですね」

「だから、褒められたって言ったじゃねーか」

「だから……褒められたから恋心が芽生えたんじゃないかなって」

「オレ、シロ姉が好きだもん~」

「むー、わたしに言わせるとですね」

「なんだよ?」

「シロちゃんもコンちゃんも、どっこいな感じですよ」

「……」

「どうですか?」

 ああ、ポン吉、真剣に考え込んでます。

「綺麗度からすると、一緒かも……」

「でしょ」

「でも、シロ姉が好き~」

 ポン吉の気持ちは確認出来ました。

 外見だけじゃなさそうですね。

 シロちゃんのどこがいいか、ちょっと気になるところです。

「ねぇねぇ、ポン姉!」

「なになに?」

「オレ、アニキみたいにシロ姉とデートしたい」

「はぁ? ポン太とシロちゃん、デートしたの?」

「あ、いや、そーじゃなくて……アニキ、この間、コン姉とデートしてたんだ」

「え……わたし初めて聞いた」

「この間、なんかあったんだろ?」

 そーですよ、途中でレッドが割り込んで、デートかっさらっていったんです。

「アニキ、すげーへこんでてさ」

「それで?」

「プレゼントしたらよくね……って、オレの揚げを持ってったらデートしたんだって」

 そうなんだ……結局コンちゃんはモノで釣れちゃうみたいです。

「オレもシロ姉とデートした~い」

「すればいいじゃないですか……ってか、しょちゅうしてませんか? デート」

「え?」

 そうそう、わたし、知ってるんです。

 ポン吉学校の帰りにシロちゃんと一緒だったりするんですよ。

 別に帰り道だけじゃなくて……

「ポン吉、シロちゃんと一緒な事、結構ないですか」

「うん……そうかも」

「デートしてるじゃないですか」

「でもでも、デートって約束とかしてないし」

「はぁ……」

「ポン姉、なんとかなんないかな?」


 お風呂はわたしとシロちゃん、レッドです。

 わたし、レッドの背中をこすりながら、

「……ポン吉に相談されたんです」

「はぁ……」

 湯船に浸かっているシロちゃんは生返事してから、

「本官、犬ですからタヌキとはちょっと……」

「デートしてあげたらいいのに……ってか、いつもデートだよね」

「一緒にいるだけであります」

「それがデートでは?」

 レッドの体、洗い終わりました。

 頭を洗うのはシロちゃんの仕事です。

 わたしも出来るけど……レッド嫌がります。

 わたしが頭からお湯を掛けるからです。

 子供だから、頭からやられると泣いちゃうんですよ。

 レッド、すぐにうろちょろするから、しっぽを踏むの。

 そんな踏んだしっぽを交代して、わたしが湯船へ。

「もしかしたら、シロちゃん意識してるとか?」

「!!」

「ひゅーひゅー、夫婦、ふうふ」

「ポンちゃん、小学生みたいでありますよ」

「そーですよ、ひやかしてるんです」

 わたし、湯船の縁に寄りかかって、

「一緒にいるんだから、デートでは!」

「違うであります」

「えー、そうかなー」

「では、ポンちゃんはですね……」

「なになに?」

「お店で店長さんと一緒な事、あるでありますよね?」

「うん……いそがしい時なんか一緒にレジやったり」

「配達も……」

「うん、一緒に行く事、あるよ」

「それをデートと言うでありますか?」

 そ、そう言われると、一緒にいるからデートではないですね。

 一緒にいると……楽しいかも……

 でもでも、デートとはちょっと……いや、全然違うかも。

「デートと言うでありますか?」

「そ、そうだね……シロちゃんの言う通りかも」

 シロちゃん、レッドを膝に乗せて髪を流します。

 レッド、気持ちよさそう~

 わたしなら「ザッパーン」とやっちゃうところですよ。

「本官はコンちゃんのようにポン吉を子供扱いは出来ないであります」

「……」

「ポン吉、本官を本気で好きみたいであります、目を見ればわかるであります」

「そうなんだ……って」

 洗い終わったレッドを受け取って、肩まで浸からせます。

 しっかり肩をつかまえて、「10」数えさせるの。

 ゆっくり数えるレッドを見ながら、

「シロちゃんってさ……ポン吉を振るって事は好きな人がいるんだよね」

 なんとなくわかってるけど聞いちゃいます。

 シロちゃんポッと頬を赤らめて、

「て、店長さんが好きであります、キャーっ!」

 な、なにが「キャーっ!」ですか……舞い上がってもう。

「ポン姉~、おわった~」

「ああ、レッド、数え終わったの?」

「は~い」

 レッド、ニコニコ顔でシロちゃんを見ながら、

「シロちゃ、けっとうするの?」

「レッド、何を言うでありますか」

「ぽんた、コン姉とけっとうしてたし」

「本官、ポン吉とデートを賭けて決闘しないといけないでありますか?」

 ふくれ面のシロちゃん。

 でもでもレッドはニコニコで、

「おもしろいのに~」

 まぁ……でも……

「わたしも決闘、するのがいいと思うよ」

「ポンちゃん……」

「シロちゃんが勝てば、気持ちよくポン吉を振れるしね」

「むー」

「シロちゃん、勝つ自信ないの?」

「そうではないでありますが……」

「どうしたの?」

「本官が負ければデートで……勝てば振れるであります」

「うん、で、勝っちゃうよね」

「それからポン吉とどう接すればいいでありますか?」

 なんか気まずの、想像つきますね。

 でもでも……そうです、コンちゃんがいます。

「コンちゃん、ポン太とデートしたってよ」

「あ、本官も見たであります、一緒に散歩していたであります」

「テキトーでいいんじゃない?」

 わたし、軽く言っちゃいます。

 シロちゃん唇歪めて、

「コンちゃんと一緒にしてほしくないであります」

「スチャラかだもんね~」

「しかし……コンちゃんよくポン太とデートしたであります」

「ポン吉からの情報によれば、油揚げでデートしたそうです」

「決闘、どーでもいいでありますよ」

 そ、そうですね……

 コンちゃん本当に雌狐、気分屋さんです。


「ねぇねぇ、ポンちゃん」

「なんですか、ミコちゃん?」

「あの子はシロちゃんが好きなの?」

 今日は決闘の日です。

 あのお風呂の翌日、ポン吉が来て申し込みがあったんですよ。

 わたし、コンちゃん、ミコちゃん、店長さん、レッドで見守りです。

 お外のウッドデッキのテーブル席でお茶をしながらね。

 お客さんはいなくて、駐車場もガラガラ。

 わたしたちはさっきから、駐車場に注目なの。

 今日もまた西部劇決闘モードなんです。

「ポン吉、勝負するでありますか?」

「オレ、絶対勝ってデートするぜ!」

「たまに一緒に帰っているでありますよ~」

「オレ、デートがしたい!」

「デートも一緒に帰るのも一緒でありますよ」

「デ・エ・トしたいっ!」

 ポン吉、ゆずりませんね、参考になります。

 って、わたしの服、ミコちゃんが引っ張ってます。

 なにかな?

『ねぇねぇ、あの子はなんでニンジャ姿なの?』

『ポン吉はぽんた王国でニンジャ屋敷の案内してたの』

『う……あのポン太くんの……』

『弟だよ』

 ミコちゃん、この間ポン太が爆弾発言してから、長老関係人物苦手みたい。

 コンちゃん、あくびをしながら、

「ポン吉は強いかの?」

「うーん、ポン太よりは弱いらしいけど」

「では、シロの勝ちじゃろう」

 店長さんため息まじりで、

「面倒くさい事にならないといいけど……」

 勝っても負けても、きっとめんどうくさくなりますね。

「ねぇねぇ、ポン姉、それたべていい?」

「はいはい、わたしのどら焼きあげますよ」

 レッドは食欲ですね。

「では、勝負でありますっ!」

 シロちゃん、抜きます。

 発砲。

 ポン吉、なべ蓋シールド。

「銀玉鉄砲なんかに負けないぜ~」

 って、ポン吉、手を振りました。

 なにか投げましたよ。

 手裏剣です、手裏剣!

 シロちゃん、後ろに飛んで避け。

 激しい攻防です、下手なTVより迫力満点。

「二人とも熱くなってるわね」

「ミコちゃん、止めなくていいの?」

「うーん……そうねぇ……」

 コンちゃんがお茶を飲みながら、

「ポン、おぬし、気付かぬか?」

「は?」

「シロは遠慮しておる……負ける気ではないかの」

「え……そうなの? 見てわかるの?」

 店長さんも頷きながら、

「シロちゃんの腕なら、あっという間に勝負がつくって思ってたもんなぁ」

「そ、そうなんですか……わからなかった」

「シロちゃん、なにかあったの?」

「そう言えば……昨日お風呂で気まずくなるって言ってました」

「シロちゃん、負けてあげるんじゃないのかな?」

 と、コンちゃんが、

「はたしてそうかの?」

「え? 負けてあげるのが大人の対応では?」

 コンちゃん嫌そうな顔をしました。

 でも、すぐに真顔に戻って、

「シロは店長が好きなのじゃ、真面目ゆえ、ポン吉とデートするかのう」

「え……それ、本当だったのっ!」

 この前のお風呂の「キャー」って冗談じゃなかったんだ。

「シロは店長といろいろあったのじゃ」

「て、店長さん、なにがあったんですか?」

 わたし、もう、決闘なんかどーでもいいです。

 店長さんつかまえて揺すっちゃうの。

「見てっ!」

 いきなりミコちゃんの声。

 勝負、ついたみたいです。

 シロちゃんとポン吉、固まって一点を見つめてます。

 って、二人の視線の先にはレッド。

 輪ゴム銃を構えて笑ってます。

 ポン吉のニンジャ服に輪ゴムが張り付いています。

 シロちゃんのミニスカにも輪ゴム。

「ぼくのかち~!」

 レッド、シロちゃんとポン吉の手をとってピョンピョン跳ねてます。

「あそびにいこ~」

 二人、レッドに引かれて行っちゃいました。

 でもでも、シロちゃんもポン吉も笑ってます。

 レッドが割り込んでくれてよかったのかもしれません。


「な、なぜじゃ」

「わたしだって、そう思いますっ!」

 わたしとコンちゃん、ダンボールの刑です。

 レッドが輪ゴム銃持ち出したからなんだって。

 わたし、隠していたのに、レッドが勝手に引っ張り出して来たんですよ。

 って、背後のお店のドアが開きます。

 カウベルがカラカラ鳴って、

「ぼくもきゃんぷー!」

 キャンプじゃないです。

 レッド、なんだか楽しそうですね。

 あ、コンちゃんレッドをつかまえてお説教です。

「これ、レッド、輪ゴム銃を人に向けてはいかんではないか」

「すみませぬ~」

「わらわには撃たなんだのに、シロには何故撃つか?」

「シロちゃとぽんきちとでーとしたかったから~」

「ふむ」

「おふろできいたから~」

 ああ、あそこから話、聞いてたんですね。

 わたし、コンちゃんからレッドを奪って、

「レッド、デートってなにかわかってますか?」

「いっしょにおさんぽ、あそんだり」

 全然わかってないみたいです。

 ま、でも、勝負はレッドが勝って丸くおさまったみたいですよ。


「観光バス五台だって……大丈夫?」

「『ぽんた王国』の時に経験ありますから」

「いや……このおそば屋さんは『ぽんた王国』より小さい」

 むむ、お客さんがすごそうです。

 長老、大丈夫かな?


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