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第67話「みどり・みーつ・ポン太&ポン吉」

 学校のポン太・ポン吉です。

 そんな二人を見て、みどり叫びまくりなの。

「敵」って……そっか……

 みどりは動物園からさらわれてきたんです。

 ポン太・ポン吉と仲良くなってほしいんだけど……


「アンタ、さっさと準備しなさいよ!」

「ポン姉おそ~い」

 みどりはランドセル背負って、レッドは幼稚園カバンです。

「はいはい、じゃ、行きますよ」

 今日も学校付き添いです。

 でもでも、昨日とはちょっと違うんです。

 しっぽをモフモフしているレッドにチョップです。

「いた~い!」

「なに、しっぽ、モフモフしてるんですか!」

「だめですか?」

「ダメに決まってるでしょ!」

 今日は配達なしです。

 だから両手が空いてるんです。

 右手はみどりとつなぎます。

 左手をレッドに差し出します。

「ほら、レッド、手をつなぎますよ」

「えー、しっぽすてきなのに」

「ほら、早く!」

「みどちゃとつなぐ~」

 むう、レッド、みどりと手つないじゃいました。

 むむむ……気にいりませんね。

 みどりとは手をつなぐのはどーしてよ?

「レッド、なんでみどりとは手をつなぐの?」

「?」

「みどりのしっぽじゃないの?」

 そう、レッドはみどりのしっぽをわたしのしっぽと思ってたそーです。

 みどりのしっぽも、きっといいモフモフ心地なはずです。

 レッド、みどりのしっぽをモフモフしてます。

 みどりは……別にモフモフ嫌じゃないみたいですね。

 レッド、みどりの顔を見ながら手をつないじゃいました。

「しっぽじゃないの?」

「めがねがみえないので!」

 この眼鏡スキーめっ!


 もう学校も二日目ですから、職員室には行かないで直行……

「ポンちゃんおはよう」

「千代ちゃんおはよう」

 あいさつしている間にもレッドとみどりは千代ちゃんに取り付いちゃいます。

 レッドはともかく、みどりには初めての友達だから当然か。

 わたし、もう用なしみたい。

 さっさと帰って店員やりますか。

 わたしがいないとコンちゃんの機嫌が悪いんです。

 帰ろうとしたら、今度は職員室のドアが開いて、

「ポンちゃん、ちょっといいかしら?」

 村長さんが手招きしてます。

 なにかな?

 行ってみたら……

「ポン姉っ!」

 職員室にはポン太とポン吉です。

「二人とも、どうしたんですか?」

「ボクとポン吉、学校に通う事になったんです」

「へぇ……って、前はどうだったんです?」

 ポン太、しっぽをさわりながら、

「ボク、しっぽあったし……」

「ああ、なるほど~」

「ポン姉……」

「どうしたの、ポン太?」

「ボク、働かなくていいんでしょうか?」

 ポン太は「ぽんた王国」で味噌や醤油を作ってたから、働かないと不安そう。

「今はおそば屋さんだけですよね?」

「ううん……ボクはお豆腐屋さんのお手伝いなんだけど……」

「お豆腐屋さん、嫌なの?」

「朝、作ったら学校行っていいって……」

「ここは『ぽんた王国』より田舎ですよね?」

「うん……車も少ないし」

「土日だけお店、手伝えばいいと思うよ」

「そう……なんですか……」

「しっかり勉強したら、お豆腐屋のおばあちゃん達、褒めてくれますよ」

「うん……じゃあ、勉強頑張る」

 しかしですね……ポン太、わたしの予想じゃ勉強余裕ですよ。

 問題なのはポン吉です。

「ポン吉、学校初めてですよね?」

「オレ、超楽しみっ!」

「……」

「さっき運動場でドッチやってた、早く行きたいっ!」

 ポン吉、絶対勉強ダメって思うけど、学校に馴染むの早そうです。

 レッドとみどりに挟まれて千代ちゃんやって来ました。

「あの、新入生の案内で来たんですけど……」

「きゃーっ!」

 叫んだのはみどりです。

 眼鏡の奥の瞳から滝のような涙。

 へたりこんでしまいました。

「みどり、どーしたの?」

「ててて敵ーっ!」

 叫んでから、気を失っちゃいました。

 いきなりなんなんでしょうね?

 村長さんびっくりして、

「千代ちゃん、ポン太くんとポン吉くんを案内して」

「はい、先生」

 千代ちゃん、ポン太に会釈すると一緒に行っちゃいます。

 千代ちゃんを挟むようにポン太とレッド。

 あれ、ポン吉はどこに行っちゃったんでしょう?

「ねぇねぇ、ポン姉」

「あ、ポン吉、行かないと……」

「こいつタヌキだ……ポン姉の妹?」

「みどりはわたしの妹じゃないよ」

「そうだよな~、ポン姉の妹じゃなくてよかったよな~」

 むう、久しぶりに「しっぽブラ~ン」って思ったら、ポン吉みどりを抱きかかえて、

「保健室とか連れて行かないでいいのか?」

 ポン吉、なかなか男前じゃないですか!


「ううう……」

 みどり、目を覚ましました。

「ううう……」

「みどり、大丈夫?」

「あ……ポン……」

「大丈夫か?」

 ポン吉が覗き込みます。

 途端にみどりの顔が真っ青。

「ててて敵ーっ!」

 さっきから「敵」って言ってます。

「みどり……どーしたんですか、敵って?」

「こ、こいつ敵! 人さらい!」

 わたしにしがみついてきます。

 すごい力です、本当にこわがってますよ。

 言われたポン吉は……ポカンとしてますね。

「ねぇ、みどり、この子はポン吉」

「て、敵、人さらい」

「運んでくれたのはポン吉ですよ」

「人さらい、敵、人さらい、敵……」

 震えてます……落ち着くまで待ちましょう。

「みどり、説明してください」

「こ、こいつはワタシをさらった仲間」

「?」

「ワタシ、動物園からさらわれて、この子に!」

 あー、そうでした。

 みどりはわたしの身代わりでさらわれて来たんです。

「みどり……さらったのはポン吉じゃないよ」

「だ、だって、この子からゴハンもらった……」

「ゴハンくれたけど、さらってきたのは別のじゃなかった?」

「……」

 しばらく考えて、コクコクと何度もうなずいてます。

「ポン吉はいい子だから」

「ほ、本当にほんとう?」

 って、ポン吉、くるりと背を向けてしっぽアピール。

 みどりも目、見開いてます。

「オレ、タヌキなんだぜ!」

「本当だ……しっぽある……」

「お前……みどり……一度来たあのタヌキなのか?」

 ポン吉の言葉に頷くみどり。

 もう、ポン吉嬉しそうにみどりの手を取ると、

「あの時のタヌキなんだ~」

「う、うん……」

「すげー、どうやって人間になったんだ?」

 それ、ポン吉が聞くんですか?

 ポン吉どーやって人間になったんですか!

「オレ、あの時人間にならないかな~って思ってたんだ」

 もう、ポン吉、握った手を嬉しそうに上下してます。

「オレ、ポン吉、タヌキ同士、仲良くやろうぜ!」

「う、うん……」

 ポン吉、みどりに顔を近づけます。

 キスでもしそうな接近っぷりです。

 ポン吉の手が、みどりの眼鏡を取りました。

 むむ……まさかポン吉、キスするとか!

 お子さまと思っていたのに!

「みどり……」

「な、なに?」

「ポン姉に似てなくてよかったな~」

 即チョップです。

「ゴフッ」って音だって出るんですよ。

 でも、音ほど痛くないはずです。

 わたし、そーゆーのはちゃんと加減してるんだから。

「なんですか、ポン吉、叩きますよ」

「た、叩いてるじゃねーか!」

 わたし、不愉快。

 でも、ポン吉とみどりは笑ってます。

 二人が仲良くなってくれて、よかったかな?


 別に帰っちゃってもいいかな……って思ったけど、

「待ちな!」

「吉田先生なんですか?」

 髭面の吉田先生に捕まっちゃいました。

「せっかく来たんだから、一緒に勉強しろよ」

 えー!

 さっきポン吉は勉強ダメとか思ったけど、わたし自身もさっぱりな気が……

「え、えっと、わたし、お店あるし……」

 でも、吉田先生、放してくれません。

「ほら、勉強道具もないし」

 吉田先生、顔を近づけてきます。

『レッドの面倒見てくれればいいんだよ』

『レッド……お絵描きの世話?』

『隣に座ってテキトーやってていいから』

 って、吉田先生、クレヨンとスケッチブック置いて行っちゃいました。

 しょうがないですね、レッドと一緒、しますか。

「うふふ、ポン姉といっしょ~」

「レッド、うれしいですか?」

「レッドがはくとよんでくだされ」

「はいはい、画伯、何色クレヨンですか?」

「じょうねつのあかとか……レッドゆえ」

 あ、静かにした方がいいのかな?

 教室じゅう、クスクス笑ってます。

 でもでも、教室に残ったのは、よかったです!

 一番後ろの席だから、ポン太やポン吉見えるんです。

 ポン太は千代ちゃんと席を並べてます。

 教科書ないから席をひっつけてるけど……静かに勉強。

 ポン吉はみどりと席を並べてます。

 みどり……静かにマジメに勉強してます……わかるんだ、スゴ!

 案外みどりは頭、すごいいいのかもしれません。

 ポン吉は……最初は脂汗ダラダラだったけど、途中で飽きたのか、よそ見が多い~

 もう、運動場を見つめてしっぽ振りまくりです、遊びたそうなの。

 むむ……みどり、ポン太をチラ見してます。

 見たら……震えてます。

 むう~、まだポン太を敵と思ってるんでしょうか?

 ポン吉とは仲良くなったのに……

 さっきポン太は千代ちゃんと一緒に行っちゃったからなぁ。

「じょしゅ、じょしゅ!」

「おお、画伯、なんですか?」

 そーでした、レッドの相手しないといけないんです。

「くーるなあおをください……えいごだとぶるー」

 わたし、クレヨン渡しながら、ポン太とみどりが気になってしょうがないの!


「待ちな!」

 ま、またですか……

「吉田先生……レッドは村長さんが連れていきました」

 そうです、レッドは校長室でおにぎりタイム。

 それが終ったら算数やひらがなの勉強。

 村長さんがやるから、わたし、する事なさそう。

「今から体育なんだよ……ドッチだから入っていけよ」

「むー……」

 吉田先生だけなら「イヤ」とか言えるんだけど……

 子供達が「じーっ」と見てるんです。

「しょうがない……でもでも……」

「ヤッター!」

「早いはやい……わたし、メイド服なんですけど」

 子供達、ポカンとしてます。

 しっかし……なにをいまさら「ヤッター!」ですか。

 たま~に昼休みのドッチに入ってるんですよ。

 吉田先生が真顔で、

「ポンちゃんにはちょうどいいハンデ?」

 それ、どーゆー事ですか!

 まぁ、メイド服、着慣れたもんだから余裕ですけどね。

 スカート、ヒラヒラさせながら、でも、チラリとも見せずに移動できるんです。

 投げるのだって、コンパクトにシュート。

 飛んで来たボールだって、両手でしっかりキャッチ、メイド服汚したりしません。

 それそれ、子供たちを次々撃破、血祭りです。

 よく考えると、メイド服がハンデなんてないですね。

 わたし、メイド服でたまおちゃんの「ちぇすとー」を破り……

 シロちゃんの「タイホー」を破り……

 ゴットファーザーだって「ホシ」に……

 もう格闘ゲームのキャラになってもいいくらいに強いんだから!

 ドッチなんて「お茶の子」なんです。

 さて、敵の内野はポン太とみどりだけになっちゃいました。

 でも、こっちもわたしだけなの。

「それそれ~、回せ回せ~」

 パスを繋いで翻弄です。

 むー、みどりは女の子だから動きが鈍いんでしょうか?

 でもでも、千代ちゃんとか、素早いですよ。

 それともポン太がキビキビ動いてるんでしょうか?

 そうです、ポン太、眼鏡で頭でっかちっぽいけど、泳ぎとか達者です。

 ボール、わたしに回ってきました。

 みどり、逃げ遅れです。

 目も合っちゃいました。

「シュート!」

 っても、女の子のみどりに投げるんだから加減くらいしてます。

 あー。

 みどり、しゃがんじゃいました。

 獲ったどー!

「!!」

 みんなびっくりです。

 わたしとみどりの間にポン太割り込み。

 ボールはポン太の腕にしっかりキャッチ!

「なっ!」

 ポン太の眼鏡がキラリ。

 ダッシュ、ジャンプ、シュート。

 眼鏡のキラリにやられて、ボール見失いました。

 わたし、すぐさま後退したら、すべって転んじゃいました。

 そんなわたしの顔面にボールがヒット。

 わたし、完敗です。とほほ。

 地面に転がってほこりまみれのきな粉餅状態。

 ようやく立ち上がったら、ポン太、ヒーローになってますよ。

「女の子守るなんてカッコイイ~!」

 みんなに持ち上げられてるけど、ポン太微笑んで、

「大丈夫? えーっと、みどりだっけ?」

「は、はい!」

 ポン太の差し出す手にみどりも手を重ねます。

 二人も仲良くなったみたい。

 ってか、みどり、ポン太の手を握って赤くなってますね。

 恋心が芽生えたかもしれません。


「わくわくです~」

「遊びじゃないんですよ~」

 わたしとレッド、お外でお休み。

 今は一緒にダンボールの中なんです。

 並んで、肩寄せあって、真っ暗な駐車場を見つめているの。

 わたしはドッチでメイド服汚したから。

 レッドは……お絵かきの時にわたしのメイド服汚したらしいの。

 気付かないうちに背中をやられてたらしいです。

「TV見れなくてつまらなくないですか?」

「あれっ! アレッ! なにっ!」

 月にちらちら影が映ります。

「あれはコウモリですよ」

「おつきさまからとんでくるの?」

「お月さまにはうさぎさんがいるんです」

「でした~」

 レッドはダンボールの刑、効果なしですね。

 楽しそうなんだもん。

 って、カウベルがカラカラ鳴りました。

 だれかな?

「みどり……どうしたの?」

「……」

 出てきたみどり、わたしの隣に座ります。

 なにかいいにおい。

 みどり、メロンパンを出しました。

 お店で売ってるパックのコーヒー牛乳も出てきます。

「みどり……パンは残り物だからいいけど……」

「ちゃんと言ってきたんだからいいの!」

「はぁ……」

 レッドはパクパク食べちゃってます。

 むう……プチキャンプ気分?

「みどり……どうして?」

 そーです、バツを受ける理由ナシ。

「きょ……今日はありがとう」

「は?」

「あ、アンタのおかげで、ポン太やポン吉と仲良くなれたから!」

 もう、学校に付き添う必要ないみたいですね~


「コン姉はどうしてるんですか?」

「コンちゃん? お店でボンヤリしてるんじゃないかな?」

「こっちには来ないんです?」

「……」

 ポン太、コンちゃんに来てほしそうにしてますよ。


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