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決勝戦 アルフVSルーシャ

小説を読んで下さった方、出来れば評価や感想をお願いします。作者が小躍りして喜びます(笑)



 それは、今から15年前の話。


 都市『エクステルミ』と、都市『マグナセラフ』が、戦争を起こした。


 勃発の理由は、エクステルミ側に移住したマグナセラフの民を殺害した、との事だった。


 が、エクステルミ側はこれを真っ向から否定した。

 両都市間は昔から仲が悪く、互いをいがみ合っていた。その背景は歴史上いろいろあったらしいが、詳しくはよく分からない。


 すると、マグナセラフは報復行為として、エクステルミを攻撃してきた。


 報復に報復が重なり、ついに都市規模での戦争になった。


 だが、エクステルミはその後すぐに混乱することになる。

 マグナセラフの隠密部隊により、国王が暗殺されたのだ。


 その隙を突き、マグナセラフはかなりの魔術師を殺した。

 しかし、その際に一般市民をも巻き込んでしまい、エクステルミはこれを激しく糾弾した。


 それに勢いを削がれたマグナセラフは攻撃の手を緩め、そしてそのまま争いは自然消滅的に収束した。


そして、これ以降、国王の身を守るという名目で結成されたのが、護衛魔導団だった。





     ★





 入団テストは面接の後、32人が選び抜かれ、一週間かけてトーナメントが行われる。


 そして、ベスト8その成績順で第一班から第八班まで分けられ、稀に団長、副団長からの推薦で決まることもある。


 俺が狙うは当然優勝。第一班だ。そこにあの人がいる。



 そして、俺が孤児院を出てからちょうど一週間後。



 見事決勝戦へと駒を進めることが出来た。


 ホントは一回戦から書きたいのだけど、時間がかかるので割愛。

 なにはともあれ、俺は今、会場で対戦相手と相対している。


 相手は、俺と同じ歳くらいの女の子だった。


 さっきの実況で、ルーシャと言う名前だと分かった。

 魔術師にとっては大事な試験だが、一般人には娯楽要素の方が強いからだ。


と、試合開始の合図が鳴り響いた。


 俺は身構える。選手は自分以外の試合の観戦を見ることを禁じられているため、相手がどんな魔術を使ってくるか分からない。


 ルーシャは砲を構えた。

(……砲?)

 俺は内心で少し驚く。今は魔術が発達したため、武器の技術は廃れ、精々護身用位にしかされていない。

 武器を主体にした魔術と言うのは数が少なく、珍しいのだ。


「さぁ! 戦いの合図が鳴り、両者が臨戦体勢に入った!」

 決勝戦だけあって、実況も気合いが入っている。


 さて、相手の出方を待つのも手だが、ここは先手必勝とやらでいこう、と俺は思った。

 俺は右手を水平に構え引いた。指は大きな物を掴む様な形に。


 そして、思いっきり前に突き出す。


「っ!」


 ルーシャは何か危険を感じたのだろう。ほぼ同時に砲を撃つ。




 二人の魔力が、中心でぶつかり合う。




 爆発が起こった。砂煙が舞い上がる。

 観客たちは喚声を上げた。

「おおっと、両者ほぼ同時に攻撃開始!! 戦いの火蓋が切って落とされましたぁ!!」


 俺は魔術を出したと同時に横に走っていた。同じ所には長居出来ない。それが砲使いなら尚更だ。

「意外と反射神経いいな」

 今までの相手なら、最初の一撃は必ず当たっていたのだが。


 と、なんとルーシャも俺と同じ方向に走っていた。


「気が合うな!」


今度は、彼女から仕掛けてきた。走りながら砲を撃つ。実弾ではなく、当然魔力だ。


 が、距離が遠い。いくら遠距離武器と言えど、これくらいなら避けられる。


 地面と平行に飛んできたそれを、俺は身を低くして避けた。


(よし!)

 そして、彼女との距離を詰めようと前に走り出す。


 その時、俺は確かに見た。



 ルーシャが、微かに笑ったのを。


 嫌な予感がした。

 俺は前に進む動作を止め、横に跳ぶ。

 直後、さっきまで俺がいた所に、何かが衝突した。


(何だ!?)


 一瞬思ったが、その正体はすぐに分かった。


(……さっき撃った砲の弾!? でもそれは俺がさっき避けたはず……!)


 後ろからやって来たのだろうか? だがあり得ない。一直線に進んだものは方向転換などできるはずがないのだ。


 ……普通なら。


 俺は再び腕を突き出す。今度は俺の魔術が直撃し、後方に吹き飛んでいく。



(チャンス!)


 俺はそう判断し、一気に接近する。



 が、彼女も直ぐ様体勢を立て直し、同じく走り出した。


(こいつ、まさかわざと……!)


 騙されたと分かっても、もはや止まるものではない。



 二人はぶつかり合う。

 ルーシャの砲が俺を止めるようになり、二人はしばらくその場で拮抗する。


「……今、攻撃を受けて大体読めたわ」



 この時、俺はルーシャの声を初めて聞いた。


「“衝撃”か何かかしら? 詳しくは分からないけど、さっき私に当てたのはそれよね」


 驚いた。まさかいきなり魔術のネタを見破られるとは。流石は決勝戦の相手だ。

 が、俺だって。

「あんたこそ。何だ? “魔力の弾を戻せる”のか?」

 俺がそう言うと、彼女は驚いた様に目を見開いた。

「……やっぱり、もう一発フェイク入れとくべきだったわね。あなた思った以上に足速いんだもの。焦っちゃった」


 それもそうだろう。走る時も俺は魔術を使っているのだから。


「どうしたアルフ、ルーシャ!! 密着したまま動きません!」

 実況うるさい。

 だが、確かにこのままでは状況は動かない。

 俺は何とかして掌をルーシャに向けた。


「!!」


 俺は“衝撃波”の魔術を撃つ。


 だが、彼女は一瞬早く後ろに退がり、ダメージを最小限に抑えた。


 少し距離が空き、俺と彼女は互いの目を見る。


「さぁ」


 互いの魔術のおおよそは分かった。ここからは、対策と行動力がものを言う。


 ルーシャも、同じことを言ったのだろうと分かった。




「仕切り直そうか」

「仕切り直しましょう」





     ★





「サーシャ姉! まだアルフ兄怪我してないぞ!」

 観客席でキウロが興奮気味に叫んだ。


「そうね」

 サーシャは心ここに有らずで答えた。今はそれどころではない。

(大丈夫かな……やっぱし相手も強そうだし……)

 一応、彼女は本気で心配している。魔術のことはよく分からないが、何事にも無事が一番なのだ。


(魔術には相性も大事だとか言ってたけど……それはどうなのかな) それもアルフが言っていた。魔術には自身の力か自然の力がなんとやらと。


 それにしても、とサーシャは思う。

それにしても、魔術とはなんと不思議なものなのだろうか。


 アルフの衝撃波の魔術は、目に見えないからあまり実感がなかったが、対戦相手を見るとそれが如実に現れる。


 だって、真っ直ぐに撃ち出したはずの弾がまるで生きているようにくねくねと曲がるのだ。

 しかも、それは生ゴミにたかる蝿の様にアルフの周りを飛び回っている。何個も、何個も。


(――あっ、危ない!)

 サーシャは思わず立ち上がりそうになった。弾のひとつがアルフをすれすれで通ったのだ。


「サーシャ姉、大丈夫だぞー。アルフ兄は勝つから。ちょっと心配し過ぎなんじゃないかー?」

 隣に座っていたリミがそう言う。


「そうそう。大丈夫だって。ところで腹減った」

「あんたは黙ってなさい」


 ピシャリとタロウに言い放つ。「うわ、ひでぇ」

「あんたは少し食べ物控えなさい」

「サーシャ姉! リメアが探険するっつってどこかに走ってった!」

「はぁ!?」

 サーシャは思わず変な声を上げてしまった。あの子はもうじっとできなくなったのか。

「あら? でもその前にトイレ行きたいって行ってなかったかしら?」

 ミコが首を傾げながら言う。大人なお姉さんに憧れるだけあり、喋り方は確かにそれっぽい。

「わかった! じゃあぼくがさがしてくる!」

「だめよリン! あなたまで迷子になったら大変よ!」


 走り出そうとするリンを押さえつける。

「おー、なら私に任せるんだなー。そうだ、トイレを探すんなら、前からやってみたかったんだー。

 アルフ兄に化けて女子トイレに行ったらどうなるか……」

「あんたもだめぇ!!」

 必死に抗議の叫びを上げる。

 今日もいつも通りの雰囲気である。

「ねぇ、それより腹減った」

「そうだな、腹減った」

「あれ? タロウが二人いるぞ?」

「違うよキウロ兄。そっちはリミだ」

「むー、ネタばらしが早すぎるんだなー。それじゃつまんないぞー」

「ねぇ、はやくリメアさがしにいかないの~?」

「ふわぁ、私もどこか出かけようかしら?」

「そうよ、リンの言う通り。どうすんの?」

「ねぇ、それより腹減」




「――うぅるっっっさいねあんたらぁ! ちょっと大人しくしてなぁ!!」




 遂にマリーからの一喝が入った。サーシャもろともビクッと肩をすくめる。

「キウロ、ほら自警団の仕事だよ! リメアを捜索してきな!」

 マリーがそう言うと、キウロの目がぴかーん! と輝いた。


「ご依頼、承りましたぁーー!!」

 元気よく声を張り上げるや否や、ピュウッ! という表現がぴったりな程の勢いで走り去っていく。


「あ、こらキウロ~待ちなさーい!」

 ワンテンポ遅れ、エマが彼の後を追いかける。


「……あれ? 確かリメアって女子トイレに……」

 サーシャが思い出したようにそう呟くと、マリーは「しまった」という顔をした。

「……まぁ、エマがついてるから大丈夫だろ」

 それより、とマリーは顔で闘技グラウンドを示す。


「そろそろケリつきそうなんじゃないかい?」

 その言葉で、皆の視線がそこに注がれる。



 ……この後ちょっと向こうの方が騒がしくなったが、サーシャはあえて無視した。




     ★





 この入団テストのトーナメントには、勝敗に関する明確なルールはない。

 この闘技グラウンドのどこかで見ている審判が、「勝負有り」と思った任意のタイミングで、終了の合図が鳴らされる。


 上手く言えないが、その時にいい感じだった者の勝利というわけだ。


 逆に言えば、審判に勝負有りと思わせなければいいということになる。


(この魔術、鬱陶しいな……!)


 俺はまるで蝿みたいに周りを飛び回る魔力弾に内心で舌打ちする。

 どうやら、『撃ち出した弾を戻せる』ではなく、『自在に操作出来る』ようだ。


 今俺は、その魔術を衝撃波を出してなんとか凌いでいる。悪く言えば防戦一方だ。

(こいつらをまずどうにかしないと、埒があかない!)


 今、宙を飛び回る魔力弾は約六つ。だが、もたもたしていたら。もっと増えるだろう。


 決勝戦で、まさか消耗戦を狙ってくるとは思わなかった。最後の勝負くらい派手にやりたいというのは多分俺の願望でしかないのだろうが。

 襲い来る魔力弾を衝撃波で撃ち落とす度に、ルーシャは次々と新たな魔力弾を撃ってくる。これじゃあいたちごっこだ。

 俺は反撃をしようと、隙を見つけて衝撃波をルーシャに向けて撃つ。


 が、それも魔力弾によってあっさりと阻まれてしまう。


(くそっ!)

 彼女は俺から距離を開き、近づこうとしない。しかも俺の魔術の予備動作は読まれてしまい、例え撃てたとしても彼女に届く前にさっきのように防がれてしまう。


(いっそのこと至近距離で撃ってくれればいいのに……!)



 そこまで思ったところで、何かが引っ掛かった。


(待てよ、もしかして……)


 俺はあることを思い至る。


(とにかく、俺のやり易い距離まで!)

 俺は地面を思いっきり蹴る。

 その瞬間に同じく衝撃波を使い、一気に加速する。


「!」


 ルーシャは合計七つの魔力弾を総動員する。

 だが、俺は止まらない。既にあの距離は俺の土俵ではないと分かったのだ。ならば、無理矢理にでも。


 俺が距離を縮めるにつれ、ルーシャの目の色が変わっていく。 それに比例するように、魔力弾の追撃も激しさを増す。


 だが俺はそれらを確実に撃墜していく。



 遂に、彼女との距離は後三メートル。あと一歩の長さだ。



 が、次の瞬間、俺の背中に衝撃が走り抜けた。

 後ろに回り込んだ魔力弾が俺を撃ち抜いたようだった。


「がっ……!」


 俺の膝ががくりと折れる。一発でかなりの威力だ。

 が、




 俺はそのまま、更に一歩を踏み出す。



「なっ!」

 ルーシャは驚きの声を上げる。


 その瞬間、確かに今まで高速で飛び回っていた複数の魔力弾が、ほんの一瞬“止まった”。


 彼女はそのまま、再び距離を取ろうと後ろへと退こうとする。


 が、もう遅い。

 俺は彼女の身体に掌を押し付ける。

「なっ、あっ……!」


「あんたも、強かったよ」


 衝撃波を放つ。


 彼女の身体は、あっさりと地面へと転んだ。



「……あれだけの数の魔力弾を操作してるんだ。自分への被弾を恐れて、動きが鈍くなるかと思ったんだ。当たって良かった」

 そう言うと、彼女は倒れたまま悔しそうに唇を曲げた。


 と、俺とルーシャに試合終了の合図の音がが降ってきた。




 誰が勝者かは、俺が聞くまでもない。



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