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恐竜物語  作者: せりもも
スーパーおろち
1/66




 放課後、校庭でキックベースボールが始まった。本当は、一度うちへ帰らなくてはいけないのだけれど、ほんの少しだけなら、先生も多めにみてくれる。


 ナツキの蹴ったボールが、大きく弧を描いて、圭太の足元へ落ちた。



「わるーい、藤原、投げてー」

 守備チームのタツルが、大声で叫ぶ。


 ランドセルを背負ったまま、圭太はのろのろとボールを拾った。


「早く!」


 ナツキは2塁を回り、3塁へ向かって全力で走っている。

 圭太の投げたボールは、外野の柚奈ゆなのところにさえ、届かなかった。


「ちぇっ、なんだよ、へたくそ」


 乱暴な言葉でののしると、柚奈はボールが落ちた所まで走った。広い上げ、全力でホームへ投げ返す。


 しかし、すでにナツキは、ホームへ滑り込んでいだ。ホームベースの上で、ばんばん飛び跳ねながら、柚奈に向かって、舌を出している。


「ちっくしょ、藤原が愚図なせいだ!」

 悔しそうに柚奈が叫ぶのが聞こえた。



 再び、次の人が、ホームに立った。

 全力でボールをけり上げる。




 「……」


 しばらく圭太は、楽しそうに遊ぶ友達を見つめていた。


 じっとしていると、どんどん寒くなる。

 自分も、動きたい。

 みんなと一緒にボールで遊べたら、どんなに楽しいだろう。


 ……僕は、運動が苦手だけど。

 ……隅っこの方にいるだけなら、みんなに迷惑をかけないと思う。


 ここからでは、誰にも聞こえない。きっとそうだ。だから、圭太は言ってみる。

 小さな声で。


「いーれーてー」


 でも、みんなにはちゃんと聞こえている。


 タツルが振り返った。

 べろんと赤い舌を出す。


「ムリー、キョヒー、キャッカー」


 ……聞こえない方がよかったのに。


 そして、圭太は、今日も、一人で帰る。







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