事件解決後、生徒会長はお嬢様に決意表明する。
『もしもし、煌斗さん。どうなさいましたか。珍しいですね。』
電話口からはいつもの精練された声。一度デジタルデータに変換されても彼女のその上品さは損なわれていなかった。
「メーミちゃん。僕はもっと雲雀と話をしてみようと思う。」
『いえ。今も十分話しかけていると思いますわよ。ストーカーと勘違いされるくらいには』
俺の決意を聞いた芽李美の反応は冷たいものだった。
「やっぱりストーカーはいけないことだったんだね。」
『今さら気づきましたのっ!?』本気で驚いていた。
「いやあ兄として妹ともっとface-to-faceの会話をしたほうがいいと思うんだよ。」
『いままでどのような会話をされてきたのですか、あなたは』呆れていた。
「あはは。…大切な事は目を見て離さないとね。」
そう。そうしないと彼女はいつまでたっても『エムちゃん』のままなのだ。
『……そもそもどうしてそのような話を急にされたのです?』
「少し、事件を解決していてね。」
『なんですそれは。もしかして煌斗さん、まだ学校にいますの?』
「うん。これでようやく帰れるよ。」
『もう!何かあったならわたくしを呼んでもらわないと困ります!』
なぜか彼女は突然怒り出した。
「いやいや。別に生徒会の関係でなにかあったわけではないし、それにメーミちゃんはもう帰っちゃった後だったしね。」
まあ結果的には生徒会も深くかかわっていたのだが。というかすべての始まりは我が生徒会会計のイレギュラーな行動が発端だった。
『それでもです。私は副会長。あなたを補佐する役目があります。』
さすが責任感の強い彼女といったところだろうか。俺が仕事で残る時も決まって彼女は先に帰ろうとしなかった。
「そうか。じゃあ今度何かあったらメーミちゃんを頼ってもいいのかな?」
できるだけ優しく呟く。
『あ、は、はい。その…い、いつでも頼ってください。』
今度は一転取り乱していた。どうしたのだろう?
「ありがとう。それじゃあ僕もそろそろ帰ることにするよ。」
『ええ、そうした方がいいでしょう。今日は雲雀さんが夕食を作ると言っていましたわよ。煌斗さんが久しぶりに早く帰ってくるから張り切っているみたいでしたわ。』
「な、ななななな、それは本当か!?」
『わっ。いきなり大きな声を出さないでください。ええ。だから早く帰ってあげてください。』
「そ、そ、そうだね。よ、よしそうしよう。」
俺は電話を切り、直ぐに誰もいない生徒会室を後にした。