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隠れた陰謀に気づく妹

「嫌です。」


「そんなこと言わないで京香ちゃん。」


妹のはっきりとした拒絶に落ち込みが止まらない。

昨日見せた京香の涙の理由も結局わからずじまいとなってしまっていた。どうして俺に対して謝ったのか、その理由を尋ねても京香は何も話そうとしなかった。しかし、いま拒絶されているのはそれとはまったく別の要件である。俺は学校から帰り、まっ先に妹京香の部屋を訪れていた。



「でも、お兄ちゃん一人で行くの心細いし、京香ちゃんがいてくれたらすごく心強いんだけどなあ。」


「シレっとウソを言わないでください。普段から向こうの校舎には出入りしているでしょう。それにお兄様有名だし。」


「でもでも、今回は京香ちゃんのクラスの出し物の手伝いも頼まれてるし。」


「はあ?そんなの運営には関係ないでしょう。どうして高校の生徒会長であるお兄様がそのようなことをするのですか?」


「うん、だって、京香ちゃんのクラスの子に頼まれて、京香ちゃんの晴れ姿を間近でみれますよって言われちゃって。へへっ。」


「へへっ。ぢゃない!この馬鹿兄貴!」


「妹の口調が変わった!?」


「そんなのどう考えてもいいように騙されたのです。お兄様がいれば確実に集客率アップにつながります。どうせそんな魂胆にきまってるのです。」


京香はフリルのついた袖をブンブンと振りながら怒っていた。その姿がどうしようもなく可愛すぎる。


「それにね、香奈ちゃんからも頼まれたんだ。」


その名前を聞いて一瞬妹の表情が曇る。


「彼女、京香に会いたがっていたよ。」


京香が学校に行かなくなった理由は情けないがよくわからない。俺は京香のクラスの子も何人か知っているが、特別雰囲気が悪いという風ではないし、京香が別段風あたりが悪かったということも聞いていない。それどころか友人である三坂香奈からは再三京香への心配の声を聞いていた。


「わたしは別に会いたくありません。」


プイっと拗ねたようにつぶやく。一々可愛いすぎる。


「うーん。困ったなあ。どうしてもダメ?」


「そ、そんな顔をしてもダメなものはダメですっ。お兄様だった行きたくないなら行かなくていいっていいました。」


まあ確かに言った。無理やり行かせたくないのは今だって同じだ。


「そっか、とりあえず、京香ちゃんの穴は僕が埋めるか。」


「穴って。元々いない人間の穴も何もないでしょう。」


「え、でも京香ちゃんにも役割があるって言ってたよ。大事な仕事だから是非お願いしたいって言ってたし。」


「大事な仕事?そもそもうちのクラスってなにをやるんですか?」


「知らなかったんだ。コスプレ喫茶っていってたよ。京香ちゃんには可愛い洋服を着て接客してもらいたかったんだって。どうしても無理なら代わりに僕にお願いしますっていってたけど、男が接客してもあんまり華がないのにね。ははっ。」


その時のクラスの子の表情が異様に真剣だったから余計断り難くなったんだよなあ。あんなに必死で代わりを頼まれると妹の事で迷惑をかけている身としてはつらい。


「…は?コスプレ?代わり?…。」


京香は急に難しい顔をして考えこんでしまった。一人でなにやらブツブツと言っているようだが一体どうしたのだろうか。やっぱり休んでしまう責任を感じているのかもな。それにしては何やらこちらに向ける視線が少し痛い気がするな。どうして?




「本当にお兄様はクズですね。」


「な、なんで!?」


「まったく、まんまと引っ掛かるなんて…」吐き捨てるように言った言葉がおれにはうまく聞き取れなかった。


「え、今何て―」


「わかりました。私も文化祭参加します。」


「ほ、本当!?」

「お兄様一人任せるのは不安すぎますので、私が傍で監視します。」

「お兄ちゃんそんなに頼りなくないんだけどなあ。」

「そっちではありません。」

「えっ―」

「とにかく当日お兄様が手伝うことなんてありませんから。わかりましたね。」




執拗に念を押され俺は京香の部屋から追い出された。


でもいったい何で急に行く気になったんだろうなあ。


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