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ノスタルジック・ダンジョン  作者: 敷知遠江守
第2章 魔法少女プルシェリア②

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第6話 我慢の限界

夢野真穂(魔法少女プルシェリア)

クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」

「ミラクル マジカル ラララララ! 出口を教えて!」


 マジカルスティッキの先の星の飾りがクルクル回り、そこから小さな星が一つぴょんと飛び出し、ふわふわと漂い、壁の中に吸い込まれて行った。

 もしかして、ここの壁がイリュージョンになっているとか?

 ……なわけ無いか。

 ん? よく見ると壁に縦にひびが入ってる?

 あ、これ回転扉みたいになってるんだ。


 って! じゃあ、ほんとにこの部屋に出口があったって事?

 なんか馬鹿にされたみたいで、凄いムカつくんですけど。



 ここから先はきっと、モンスターに突然襲われるなんて事もあるんだろう。慎重に慎重を期さないと。今度こそ、右手の法則で、しっかりと迷わないようにしないと。やってて良かった『世界樹〇迷宮』。


「さっきから壁をペタペタ触って何をしてるキュイ? 壁に何か気になるところでもあるのかキュイ?」

「ふふん。あなたにはわからないでしょうけどね、これはダンジョンを迷わないようにするために重要な事なのよ!」

「出口を教えてくれてるのに、プルシェリアはそれでも迷子になるのかキュイ?」


 ……確かに。こんなどう見ても細い一本道で迷子も何も無いよね。

 くっ、悔しい……こんな変なイルカに正論で殴られた。泣きそう。


 しかし、あの部屋を出てからずっと一本道ね。方向感覚が狂いそう。

 ……。

 …………。

 ………………やばい。ちょっとマズイかも。


「プルシェリア、どうかしたキュイ? かなり汗をかいてるけど、もしかして疲れたキュイ?」

「な、なんでもないわよ」


 キュイがじっとこちらを心配そうな顔で見続けている。気を紛らそうというのに、そんな態度を取られたら、余計に気になっちゃうじゃない。


「あの、この先どれだけかかるかわからないから、焦ら――」

「なんでもないって言ってるでしょ! うるさいわね!」

「そんなに強く怒らないでも良いのにキュイ……」


 ……やばい、ほんとにどうしよう。気にしないでおこうって思えば思うほど、気になってくる。一歩一歩、足を動かす振動が刺激されてキツイ。もう限界がすぐそこまできちゃってる。


 人としての尊厳を守るためにも、悔しいけどここは、こいつに相談してしまった方が良いのかも。この一度だけじゃないわけだし。本当に悔しいんだけど、本当に限界が近づいちゃってるのよ。


「ねえ、キュイ。ちょっと聞きたいんだけど」

「僕の名前は『フリッツ』キュイ!」

「ちょっと相談があるんだけど」

「僕が知っている限りで何でも答えるキュイよ!」


 腹立つなあ。全然意思疎通ができてない癖によく言うよ。でも今は一刻を争う状況。こんなの相手でも背に腹は代えられない。

 

「どうしたキュイ? ちょっと顔色が悪いキュイよ? もしかして体調が悪いキュイ?」

「えっと……その……行きたいんだけど……」

「ん? ごめんキュイ。よく聞こえなかったキュイ」


 くっ、こ、こいつめ……腹立つ!

 恥ずかしいんだから、少しは察してくれればいいのに!


「トイ……に行きたいのよ」

「もっと大きな声で言ってくれないとわからないキュイよ!」

「だから! トイレに行きたいの! もう限界なの! どうしたら良いの!」

「ちょっと、目が怖いキュイ……」


 ふぅ! ふぅ! ふぅ!

 早く! 早く! 早く!


「えっと、そこの壁を魔法で――」

「ミラクル マジカル ラララララ! トイレになれ!」

「すっ、凄い早口キュイね……」

「向こう向いてなさい! それと耳も塞いでなさい!」


 ふひぃ……間一髪セーフ。危うく人としての尊厳を失うところだったわ。便座がちょっと硬いけど、この際、贅沢は言ってられないよね。

 あっ、紙が無い。


「ミラクル マジカル ラララララ! トイレットペーパーになれ!」


 目の前の岩の壁の一部がトイレットペーパーのロールに早変わり。触った感触は完全にトイレットペーパーのそれ。キュイの話だと、変身を解くと元に戻ってしまうらしいけど、こういう使い捨ての物なら、今使用できればそれで良い。

 意外とこの魔法っていうのも便利かもしれない。


 ……今更だけど、ちゃんと扉を付ければ良かった。


「あ、終わったら魔法で元に戻す事をお勧めするキュイ」

「聞き耳立ててるんじゃないわよ! 耳を塞げって言ったでしょうが!」

「僕はイルカキュイ。そんな事を言われても耳なんて塞げないキュイ。無茶を言わないで欲しいキュイ」


 次からは音姫も付けなきゃ。


 はあ……本当に、なんでこんな変な奴しか話し相手がいないんだろう。泣きたくなってくる。あの部屋を出てからここまでずっと一本道だし。この先もずっと一本道っぽいし。もう飽きてきちゃった。しかもずっと薄暗いままだし。お腹、空いたなあ。喉も乾いたなあ。


「……あの、ごめんキュイ。僕もプルシェリアのためを思ってやってるんだキュイ。温かい目で見て欲しいんだキュイ」


 瞼を伏せこちらから顔を背け、か細い声でキュイは謝罪してきた。そんな態度を取られたら、酷い罪悪感が生まれてきちゃうじゃない。ずるいなあ。


「さっきのは、ちょっとその、切羽詰まってただけだから。傷つけちゃってたら謝るわ。ごめんね」

「僕ももっとプルシェリアの役に立てるように頑張るキュイ!」


 キュイキュイと鳴き声をあげているのを見ると、なんだかほっこりとしてしまう。

 そうだよね。イライラする事はあっても、キュイは私の使い魔なんだもん。仲良くしなきゃだよね。


「あっ! プルシェリア、見るキュイ! 食料が来たキュイよ!」


 食……料? 

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