第5話 行き止まり?
「食べ物無いって、どうすれば良いのよ! 私、餓死しちゃうわよ!」
この洞窟に来て、いきなりひもじい餓死だなんて、そんなのあんまりだよ。まさか、あの年増女神、嫌がらせをしてきたって事? 人の命を何だと思ってるんだ、あいつ!
「大丈夫キュイ! 落ち着くキュイ! 洞窟の中にも食べ物はあるキュイ!」
「嫌よ! そんな落ちてる物を拾って食べるだなんて。それこそお腹壊しちゃうわよ」
「ならば一旦洞窟の外に出るんだキュイ! そうすれば食べ物は一杯あるキュイ!」
「うん。で、どうやったら洞窟から出られるの?」
「そんなの簡単キュイ! 出口向かって歩いて行けば良いキュイ!」
こいつ……、電化製品のマニュアルの最後のページみたいな事言いやがって。ああ、一発殴りたい! 思わず拳握っちゃうじゃん。
「どうしたキュイ? 早く洞窟の出口に向かおうキュイ!」
「そうね。で、出口はどこ?」
「この部屋の出口ならすでに見えているキュイ! ……やっ、止めるキュイ! 暴力を振わないで欲しいキュイ! 僕は魔力の塊だから攻撃しても無駄キュイ!」
「はあ、はあ、はあ……ふざけた事言ってるんじゃないわよ! この洞窟の出口に決まってるでしょ!」
……もう嫌。こいつと喋ってると頭痛くなってくる。なんでこんなポンコツAIみたいなのと会話しないといけないの? というか、なんで会話相手がこんな奴しかいないわけ?
「申し訳ないキュイ。この洞窟の出口がどこか、それは僕にはわからないキュイ」
「でも、外に出ないと食べ物無いんでしょ? じゃあ私、野垂れ死にじゃない。それとも、モンスターでも食べてここで生活しろって言うの?」
「さっきも言ったけど、モンスターはここの洞窟の魔石から生まれているキュイ。多くのモンスターは、食べても美味しくは無いキュイ」
つまり、餓死する前にこの洞窟から脱出しないといけないって事ね。普通に喉も渇いてきたし、お腹も空いてきちゃった。
「ねえ、この洞窟って私以外の人っているのかな?」
「洞窟の状況は、残念ながら僕にはわからないキュイ」
「でしょうね。何となくそう言われる気がした」
思わずため息が漏れる。下を見ても土。横を見ても土。上を見ても土。明かりは手元の子供じみた玩具だけ。
……ん? 待てよ。
「ねえ。確か私の魔法って物質を変換できるのよね? この天井を変換して穴を開けていったら、そのまま地上に出れたりしないの?」
「できるかもしれないけど、お薦めはしないキュイ」
「なんで? 理論的にはできそうじゃない」
「この洞窟は自然の存在。ある意味、生きているんだキュイ。きっとプルシェリアを外敵と認識して排除しようとしてくるキュイ」
えっと……ちょっと何言ってるのかわからなかった。どういう事なんだろ? 私を異物認定して洞窟そのものが襲ってくるって事なのかな?
「ねえ、今の、もう少し詳しく教えてくれないかな?」
「わかったキュイ。この洞窟はプルシェリアの体と同じキュイ。小さい傷なら問題無いキュイ、だけど、大きな傷だと痒みを感じるキュイ。そしてもっと大きな傷だと強い痛みを感じるキュイ!」
「無茶をして外に出ようとすると、最悪の場合、洞窟が崩れちゃうかもしれないって事? だとしたら、もしそんな事になったら、この洞窟にいる人は全員生き埋めになっちゃうわね」
だとしたら、歩いて餓死する前に自力で出口を探るか、人を探して食べ物を別けてもらうしかないって事じゃない。そうとわかれば長居は無用。
「じゃあ、キュイ。出口を探しに行きましょう!」
「僕の名前は『フリッツ』キュイ」
この部屋は結構広いから、もしかしたらここをキャンプ地にするという手はあるかもしれない。確か、こういうダンジョンの場合、『右手の法則』というのが使えたはず。大昔『世界樹〇迷宮』ってゲームをやってた時に攻略サイトに書いてあったのよね。
右手を壁に付けた状態で、真っ直ぐ歩いて行く。もし分岐があった場合、全て右に曲がれば、いずれは出口に辿り着くという、そういう理論だったはず。
……なんだけど、結構歩いてきたはずなんだけど、分岐が無いんですけど?
ひたすら一本道で、色々と不安になってきちゃうんですけど。実はただ単に地上から横穴掘っただけだったり?
……へ?
「プルシェリア、ここで行き止まりキュイ!」
「えっと……どういう事?」
「見ての通り、行き止まりキュイ! 別の出口を探すキュイ!」
「あんただって見てきたでしょうが! ここまで一本道だったでしょうが! 閉じ込められちゃってるのよ、私たちは!」
ふぅ、ふぅ、ふぅ。落ち着け、落ち着け私。
もし、閉じ込められているとして、それならば空気も薄くなるんじゃないかな。ここまで歩いてきて、この洞窟はどこか新鮮な空気が入り込んでいる気がする。
だけど、こうして壁を触ってみても、普通の壁にしか見えない。じゃあ、さっきのゴブリンはどこから来たの?
……あれ? これって、もしかしてゲームでいうチュートリアル部屋みたいな感じだったりする?
だとしたら、この道を戻ってさっきの部屋に戻ると見落としていた何かが見つかったりして。
とりあえず戻ってみよう。
もしかすると、実は天井に吹き抜けがあったんでしたってオチかもだから、上も慎重に見ながら。
ここ、通路にしては意外と天井高いよね。
……ううむ。普通に最初の部屋に戻って来ただけで、特におかしなところは無しか。やばい。早速詰んだ。
「ねえ、プルシェリア。魔法で出口を探ろうとはしないキュイか?」
「……それを最初に言いなさいよ!!」
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