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第一夜

とある中学校のミステリー研究部。

部員は4名――男子3人タカシ、ケンジ、ユウジと女子1人ミカ。

部室は、窓の外が夕闇に沈み、蛍光灯の白い光がやけに冷たく感じられた。

彼らは机を囲み、ひそひそ声で怪談を始めていた。

「なあ、知ってるか?

この街には“アスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けるマン”って妖怪がいるんだ」

語り手のタカシが声を潜めると、周りはざわっと身を寄せる。

「いやいや、名前長すぎんだろw! 覚えられねぇよ!」

ケンジが茶化すと、部室に笑いが広がった。

「でもさ、長い名前の方が呪文みたいで怖くない?」

ミカが肩をすくめると、笑いはすぐに消え、空気が張り詰める。

タカシはわざと間を置いて、低い声で続けた。

「夜中に車を運転していると、アスファルトを纏った人型の怪異が現れる。

皮膚は黒い舗道みたいにざらついていて、腕を振り下ろしてタイヤを切り裂いてくるんだってさ」

一瞬の沈黙。誰かが小さく息を呑んだ。

「まあ、でも車に乗らなければ大丈夫そうだし、俺達には関係ないんじゃね?」

ユウジが軽く言うと、皆は「それもそうだな」と笑いながら怪談を締めくくった。

部活動が終わり、生徒たちは自転車にまたがり、笑い声を夜風に溶かしながら帰路についた。

だが――。

突然、どこからともなく音楽が流れ始めた。

「アスファルト、タイヤを切りつけながら♪」

歌声に合わせて、路面が盛り上がり、アスファルトを纏った怪異が現れた。

その姿は人型だが、皮膚は黒い舗道のようにざらつき、腕は砕けた路面の破片のように鋭い。

怪異は歌に合わせて走り出した。

やがて、追いついた怪異が腕を振り下ろし、最後列のケンジの自転車のタイヤを切り裂いた。

「うわっ!」

ケンジは自転車ごと転倒し、アスファルトに叩きつけられる。

だが怪異は倒れた彼には目もくれず、前へ逃げ続けるタカシ、ユウジ、ミカを追いかけていく。

背後から迫る足音と歌声が、その場の全員を震え上がらせた。

「なんで…止まったやつは無視なのか…!」

誰かが叫ぶ。

怪異はただ「走る者」だけを追う。

夜の街に響く歌声。

「アスファルト、タイヤを切りつけながら♪」

それは、走る者を選び、追い詰める呪いの歌だった。

笑いながら帰っていたはずの生徒たちは、今やチープなスリルに身を任せながら、暗闇の中を必死に走り抜けていた。


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