21、最終回
《最終回》
『国王フィリップの独占愛 ~誰にも触れさせない、彼女は俺だけの王妃~』
王宮の大広間は、かつてないほどの荘厳な光に包まれていた。
戴冠式――国王フィリップの正妃として、アリシア・フォン・レーヴェはこの日、王妃となる。
だがその裏では彼女と接した者の半数が王宮から姿を消し、
近づいた貴族令息や官僚たちは皆、次々に左遷あるいは行方不明となっていた。
それでも、アリシアの表情は穏やかだった。
――この狂気の愛に、すべてを委ねると決めたから。
◆
式が終わると同時に、フィリップはアリシアの手を取り、誰にも告げず王妃の私室へ連れ帰った。
そこには誰もいない。
警備すら置かれぬ、完全に隔絶された空間。
「やっとやっと、俺のものになったねアリシア。」
フィリップの瞳にはいつもの冷徹さも気高さもない。
あるのはただ、一人の女を愛しすぎた男の熱。
「今日、君が皆に祝福されるたび胸が焼けて死ぬかと思った。触れられるたび見つめられるたび壊したくなった。」
「我慢した。戴冠式を無血で終わらせた俺を、誰か褒めて欲しい。だがもう限界だ。」
そう言って、アリシアの肩紐を乱暴にほどく。
彼のキスは深く、噛みつくように激しい。
愛と執着が混ざった熱が、肌から骨の奥まで染みわたる。
何度も何度も確かめ合うように肌を重ね、
一つになるたび、フィリップは低く囁く。
「君は俺のすべてだ。もう逃がさない。たとえこの国が燃え尽きても、君だけは俺が抱いている。」
「ええ私も貴方となら、どこまでも堕ちられるわ。」
アリシアの指が王冠を外して彼の髪を撫でる。
「たとえこの愛が世界から狂っていると指さされても、私はあなたの王妃。
――あなたのために、何もかも捨てられる。」
フィリップの目が、艶を帯びて歪む。
彼は口づけを落とし、指先でアリシアの肌をなぞりながら、深く深く愛を刻んだ。
何度も、何度も。
そして夜明け、燃え尽きた二人が重なるベッドの中で
フィリップは囁いた。
「これから君が生むすべては、俺との結晶だ。
この世界がどうあれ、君と俺が生きている限り――それでいい。」
◆
それから数年後、フィリップは冷徹無比の統治で国を栄えさせる一方、
王妃アリシアとその子どもたちを溺愛っぷりは末代まで伝えられる。
「王妃に近づいた近衛兵が即日左遷されました。」
「宮廷画家が王妃を描きすぎて国外追放に。」
「でも王妃は、ずっと穏やかで優しく幸せそうでした。」
この国の歴史に刻まれた、狂愛と純愛の王妃物語。
――『王妃アリシアと狂王フィリップの、幸福すぎて誰も近寄れない物語』
完。




