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1、プロローグ
輝く朝日の中、皇太子フィリップはいつものように完璧な姿で宮廷の廊下を歩いていた。
艷やかな黒髪は撫でつけられ一本の乱れもなくセットされており
剣術で鍛え上げられ無駄のない彫刻のように美しい身体
どこから見ても品行方正、才色兼備、まさに国の宝。だが、その視線がふと廊下の隅にいる侯爵令嬢アリシアに向けられると、彼の瞳は一変する。
「アリシア、今日も君は僕の目には世界で一番美しい花として映っている。」
表向きは穏やかな微笑みを浮かべながら、彼の心の中は燃えるような情熱で満ちていた。
その日、彼は密かに彼女のために用意した小さなプレゼントを手にしていた。
「これは俺からのささやかな贈り物だ。君がもっと笑顔でいられるように。」
アリシアは戸惑いながらも、その優しい瞳に吸い込まれてしまう。
だが、その夜、二人きりになった時、皇太子の本当の姿が現れた。
「誰にも触れさせたくない。君は僕だけのものだ。そうだろ?」
月明かりに照らされた宮殿の一室。
静寂を破るのは、皇太子フィリップの低く甘い声だけだった。