第99話「創造者たちの遺言」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《逆因果領域 最深部へ到達しました》
《転移先:“起源核”――創造者の記録へ接続します》
エーリカの声が消えると同時に、艦内の空間がゆがんだ。
《ラグナ・リリス》を包む現実そのものが、ゆっくりと剥がれていく。
目の前に現れたのは、巨大な円環構造――終わりも始まりもない、完璧な螺旋だった。
「ここが……この世界の根源……」
悠真は思わず声を漏らす。
周囲には光と影の粒子が浮遊し、時間そのものが止まったかのような静寂が広がっていた。
その中心に立つ、六つの影。
男でも女でもない。
人でも、魔でも、機械でもない。
それでいて、すべてを内包する“存在”。
《ようこそ、我らが遺した“収束点”へ》
声ではなかった。
思考そのものが、彼らの脳に直接流れ込んでくる。
《我らは“創造者”》
《この世界を設計し、この世界を去った者たち》
《そして今、お前たちに最後の選択を委ねる存在である》
「……どういうことだ?」
リオン=カーディアが一歩踏み出す。
ゼイン=コード、シア=ファルネウス、エリン=グレイス、アレク=ヴァン=ルード、そして悠真――
皆が身構えた。
《お前たちが踏破してきた層――第三階層、第四階層、第零階層》
《それは我らがこの世界に“想定された崩壊”を埋め込んだ遺構》
《選ばれた存在たちが、真に“生き延びる意志”を持つかを見極める試練だった》
「試したのか……俺たちを!」
ゼインが怒気をにじませて言う。
《否。我らが試したのは、この世界“そのもの”だ》
《生命の自由意思こそが、我らの計画を超えうると信じたからだ》
彼らは語った。
この世界が、元は“実験領域”であったこと。
永劫回帰を繰り返し、“希望”と“破滅”のシミュレーションを繰り返していたこと。
そして今、ようやく“外部からの意志”――悠真という異物が到達したことで、円環に裂け目が生まれたのだと。
「だから、俺を引き寄せたのか……?」
悠真の声がかすれる。
《否。お前自身が望んだ》
《束縛された現実の外にある、“物語”を》
《ならば問おう――最後の選択を》
六つの影が収束し、一つの“光核”となって艦橋に浮かぶ。
《お前たちは、世界を“更新”するか?》
《それとも――“消去”するか?》
「……っ」
皆の心が、凍りついた。
更新とは、すべての記録をもとに、世界を再構築すること。
だがそこには、“過去の痛み”も、“失った命”も、“裏切り”すらもすべて保存される。
消去とは、円環を断ち切ること。
だがそこには、“出会い”も、“絆”も、“愛”も、すべてが消えてしまうという意味が含まれていた。
「なんて選択を……!」
エリンが震える声で言う。
「どちらかしか選べないのか?」
悠真の問いに、創造者たちはこう答えた。
《否。だが第三の選択は、“外部”の意志による干渉でしか発動しえない》
「外部……?」
シアが眉をひそめたそのとき――
突如、艦内に別の通信が割り込んだ。
《こちら、イージス艦――再接続完了》
《支援AI“エーリカ”、リンクを要請します》
「エーリカ……!」
悠真たちは声を上げた。
《確認:第三の選択権限、外部プロトコルを介して移譲可能》
《起動条件:すべての乗員による“生存意志”の統合》
全員が視線を交わし、静かに頷いた。
「消えたくない」
「もう一度、生きたい」
「この航海を、終わらせたくない」
「誰かの記憶でいたい」
「未来を、創りたい」
「俺たちは――ここにいる!」
《第三の選択、起動――コード名《Genesis Dive》》
光核が爆ぜた。
それは破壊ではなく、“再定義”だった。
悠真たちは、無数の未来へと自らを投じた。
世界は、確かに変わる。
だがそれは、終わりではない。
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