第98話「喪われた光、再び」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《再統合対象の照合、完了しました》
《第一候補:レフィ=シュタインベルク》
《第二候補:ミラ=クラウゼ》
《第三候補:アレク=ヴァン=ルード》
艦内に静かに響くエーリカの声。
それぞれの名は、まるで封印されていた記憶の蓋を開けるかのように、乗員たちの胸を震わせた。
「レフィ……!」
エリン=グレイスが小さく叫ぶ。
思わず席を立ちかけた彼女を、悠真がそっと手で制した。
「まずは、確認しよう。……彼らが、“どんな未来だったのか”を」
《第一候補:レフィ=シュタインベルク》
画面に映し出されたのは、かつて《真実の間》で“選ばれなかった”少女――
異端の天才。真実を求めすぎて世界から逸脱し、記録の海に沈んだ存在。
《彼女は“真実”を受け入れられなかった世界の残滓です》
《その代償として、彼女の思考は“閉鎖的知識循環”に陥り、時間軸から脱落しました》
「彼女が選ばれていれば、私たちは……知識に殉じていたかもしれない」
リオン=カーディアが呟く。
《第二候補:ミラ=クラウゼ》
現れたのは、かつて《ラグナ・リリス》に一時的に乗艦し、別の航路を辿った可能性の少女。
《彼女は“犠牲”の選択を拒否し、全員を救う未来を求めた存在です》
《しかし選択の不在は破綻を招き、全滅という“負の収束”に至りました》
「全てを救いたかっただけなのに……」
シア=ファルネウスが苦しげに顔を伏せた。
《第三候補:アレク=ヴァン=ルード》
その名を聞いた途端、艦橋に重たい沈黙が走る。
「……アレク」
ゼイン=コードが絞り出すように呟いた。
《彼は“創造”の力を持ちながら、それを破壊に転じた可能性です》
《あなた方が“共に戦う”未来を選ばなかった場合、彼は――破壊者となりました》
「俺たちが彼に信頼を与えなかった未来……か」
悠真の声に、重い悔いがにじむ。
三者三様の“選ばれなかった存在”。
その誰もが、どこかで“取りこぼしてしまった光”だった。
《再統合は最大3名のうち、1名のみ可能です》
《再統合により、戦力・知識・情動領域のいずれかが拡張されます》
《それはまた、あなた方の“終わり”に影響を与えることとなります》
選択の猶予は、短い。
だが、誰を選ぶか。それは、誰の未来に“意味”を与えるかということ。
「……俺は、ミラを選びたい」
悠真の声が、静かに響く。
「選択できなかった彼女を、選び直すこと。それが、今の俺にできることだと思う」
「私はレフィがいい」
エリンが言った。
「どんなに孤独でも、真実を求めていた。私は……その想いに、共鳴したから」
ゼインはしばし沈黙し、そして目を閉じた。
「アレクだ。……きっと、彼は赦されるべきだった。
選ばなかった俺たちが、責任を取るべきなんだ」
三者三様の希望がぶつかり合う中、リオンが、深く息を吐いた。
「全員、正しい。そして、全員、過ちだ」
「それでも――選ぶしかないんだ」
沈黙が艦橋を包む。
やがて、シアがふっと微笑んだ。
「だったら……最後は悠真が決めなさい。
今のこの物語を、誰に繋げたいか。その答えが、あんたの“存在意義”よ」
悠真は、目を閉じ、静かに答えた。
「――俺は、アレクを選ぶ」
《再統合、開始》
《対象:アレク=ヴァン=ルード》
艦内に、光が走った。
反転する因果の中で、一人の“可能性”が再び存在を取り戻す。
静かに現れた青年は、かつてよりも穏やかな瞳で、悠真に微笑みかけた。
「よう、悠真。……待たせたな」
――こうして、“捨てられた未来”は再び動き出す。
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