表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/110

第98話「喪われた光、再び」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《再統合対象の照合、完了しました》


《第一候補:レフィ=シュタインベルク》

《第二候補:ミラ=クラウゼ》

《第三候補:アレク=ヴァン=ルード》


 


艦内に静かに響くエーリカの声。

それぞれの名は、まるで封印されていた記憶の蓋を開けるかのように、乗員たちの胸を震わせた。


 


「レフィ……!」


エリン=グレイスが小さく叫ぶ。

思わず席を立ちかけた彼女を、悠真がそっと手で制した。


「まずは、確認しよう。……彼らが、“どんな未来だったのか”を」


 


《第一候補:レフィ=シュタインベルク》


画面に映し出されたのは、かつて《真実の間》で“選ばれなかった”少女――

異端の天才。真実を求めすぎて世界から逸脱し、記録の海に沈んだ存在。


《彼女は“真実”を受け入れられなかった世界の残滓です》

《その代償として、彼女の思考は“閉鎖的知識循環”に陥り、時間軸から脱落しました》


 


「彼女が選ばれていれば、私たちは……知識に殉じていたかもしれない」


リオン=カーディアが呟く。


 


《第二候補:ミラ=クラウゼ》


現れたのは、かつて《ラグナ・リリス》に一時的に乗艦し、別の航路を辿った可能性の少女。


《彼女は“犠牲”の選択を拒否し、全員を救う未来を求めた存在です》


《しかし選択の不在は破綻を招き、全滅という“負の収束”に至りました》


 


「全てを救いたかっただけなのに……」


シア=ファルネウスが苦しげに顔を伏せた。


 


《第三候補:アレク=ヴァン=ルード》


その名を聞いた途端、艦橋に重たい沈黙が走る。


「……アレク」


ゼイン=コードが絞り出すように呟いた。


《彼は“創造”の力を持ちながら、それを破壊に転じた可能性です》


《あなた方が“共に戦う”未来を選ばなかった場合、彼は――破壊者となりました》


 


「俺たちが彼に信頼を与えなかった未来……か」


悠真の声に、重い悔いがにじむ。


 


三者三様の“選ばれなかった存在”。

その誰もが、どこかで“取りこぼしてしまった光”だった。


 


《再統合は最大3名のうち、1名のみ可能です》

《再統合により、戦力・知識・情動領域のいずれかが拡張されます》


《それはまた、あなた方の“終わり”に影響を与えることとなります》


 


選択の猶予は、短い。


だが、誰を選ぶか。それは、誰の未来に“意味”を与えるかということ。


 


「……俺は、ミラを選びたい」


悠真の声が、静かに響く。


「選択できなかった彼女を、選び直すこと。それが、今の俺にできることだと思う」


 


「私はレフィがいい」


エリンが言った。


「どんなに孤独でも、真実を求めていた。私は……その想いに、共鳴したから」


 


ゼインはしばし沈黙し、そして目を閉じた。


「アレクだ。……きっと、彼は赦されるべきだった。

 選ばなかった俺たちが、責任を取るべきなんだ」


 


三者三様の希望がぶつかり合う中、リオンが、深く息を吐いた。


「全員、正しい。そして、全員、過ちだ」

「それでも――選ぶしかないんだ」


 


沈黙が艦橋を包む。


 


やがて、シアがふっと微笑んだ。


「だったら……最後は悠真が決めなさい。

 今のこの物語を、誰に繋げたいか。その答えが、あんたの“存在意義”よ」


 


悠真は、目を閉じ、静かに答えた。


「――俺は、アレクを選ぶ」


 


《再統合、開始》


《対象:アレク=ヴァン=ルード》


 


艦内に、光が走った。


反転する因果の中で、一人の“可能性”が再び存在を取り戻す。


静かに現れた青年は、かつてよりも穏やかな瞳で、悠真に微笑みかけた。


「よう、悠真。……待たせたな」


 


――こうして、“捨てられた未来”は再び動き出す。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ