表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/110

第97話「逆因果領域《カオス・アルカ》」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《進行座標、完了。時間座標:不定。因果軸:未定義》


《ここより先は、“逆因果領域”です。進行に際して、記録の保証は行えません》


エーリカの声が、これまでで最も冷静で、それでいて緊張を孕んでいた。

《ラグナ・リリス》の視界に映し出されたのは、空間の常識を拒絶する光景――

星々が逆巻き、出来事が“未来から過去へ”と流れている。


 


「……これが、逆因果領域……」


悠真は言葉を失った。


時間は前に進まない。

むしろ、記憶の底から未来が溢れ出してくるような錯覚。

思考が“過去の自分”と同期し、何もかもがズレていく感覚。


「悠真、意識を保って!」


エリン=グレイスが彼の腕を掴んだ。

その手の温もりだけが、“いま”を引き止めてくれる。


「《ありがとう、エリン……助かる》」


 


《本領域では、記憶・存在・意思の境界が希薄化します》


《各員、自己の“定義”を強く保持してください》


 


ゼイン=コードが眉をひそめる。


「自己の定義……? 俺は、俺だ。そう言い切れないと、どうなる?」


「自分が何者か、分からなくなる。曖昧さが、“消失”に直結するのよ」


シア=ファルネウスの声は冷静だったが、その指先はわずかに震えていた。


 


《敵性存在を感知。構造:不明。属性:時間外因果干渉型》


《識別名:《オリジン・シャドウ》――あなた方自身の“可能性の廃棄体”です》


 


「……廃棄体?」


リオン=カーディアが、一歩前に出た。


「まさか、こいつら……“なれなかった自分たち”なのか?」


 


視界の先に現れたのは、彼らと“酷似した”存在だった。

だがその目は虚無で、声はなく、ただ圧倒的な敵意だけを放っていた。


「逆因果領域は、“可能性の墓場”だ」


悠真が、ぽつりと呟く。


「俺たちが選ばなかった未来、その犠牲たちがここに還ってくる……!」


 


《戦闘回避は困難。接触、不可避》


《ただし――“対話”は可能性の範疇にあります》


 


「対話、だと……?」


シアの眉が跳ね上がる。


「こんな化け物と、話が通じるっての?」


 


「いや――だからこそ、話すんだ」


悠真は艦橋の中心に立った。


「俺たちは“創文魔術”で物語を紡いできた。“語りかける”ことは、俺たちの一番の武器だ」


彼の背中に、仲間たちの視線が集まった。


「俺たちが選ばなかった可能性、捨てた願い。

 それらに“意味”を与えずして、前には進めない」


悠真は瞳を閉じ、心の奥底に触れる。


 


「――語ろう。“失われた自分”たちに」


「《俺たちは、選び、失った。だが、それを悔やむためじゃない。

 悔やんでもなお、歩くために――ここにいる》」


 


すると、“影”たちの動きが止まった。


彼らの中にも、微かに“声”が宿っているような錯覚。

廃棄されたはずの物語が、光とともに揺らぎ始める。


 


《共鳴発生。逆因果干渉により、“可能性の修復”が開始されます》


《廃棄された存在のうち、3名との“再統合”が可能です》


 


「まさか……失われた存在と、再び繋がれるのか?」


ゼインが息を呑む。


「それって……」


エリンが手を口元に当てた。


「……誰を、“迎える”かを選べってこと?」


 


《再統合の対象選定を開始してください》


《廃棄存在:記録不全の三名。詳細照合中……》


 


艦内に再び静寂が訪れる。


だがその中には、確かに“未来”への震えが宿っていた。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ