第95話「概念兵器《アンチノミア》との邂逅」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
「全員、艦に乗れ!」
悠真の指示に応じ、リオン=カーディアとシア=ファルネウス、エリン=グレイス、ゼイン=コードが次々と《ラグナ・リリス》に飛び乗った。
艦のハッチが自動で開き、滑らかな光に包まれながら彼らを受け入れる。
《主砲、展開準備完了。魔導核安定領域を再構築中》
《目標対象:《アンチノミア》。分類不能・形状変動型・言語拒絶性概念兵器》
「……分類不能だと?」
ゼインが端末を睨む。だが、すべての解析は“矛盾”として弾かれていた。
《警告:敵存在は“意味そのものの否定”により構成されています。通常兵装による干渉は無効》
「意味の……否定?」
エリンが眉をひそめる。
その瞬間、艦の視界全体を覆い尽くすように、アンチノミアが近づいた。
それは“形”を持たなかった。
流体のように揺らぎ、網膜の奥を傷つけるような“情報の崩壊”を伴っている。
「目視するだけで、概念構造にノイズが入る……っ。これは、“記録”を破壊する存在……!」
シアが咄嗟に目を伏せながら、詠唱を始める。
「――《サンクティア・ヴェイル》、視界防壁展開」
艦の内部に、淡い薄膜が張られる。
それでも、わずかに残る音の震えと波長が、仲間たちの精神に干渉していた。
「くそっ、じゃあどうやって戦えば……!」
リオンの焦りに、悠真が口を開く。
「……エーリカ。あいつに有効な手段は?」
《存在否定に対抗できるのは、“意味を紡ぐ力”――》
《創造者コードによる、《創文魔術》の発動が推奨されます》
「創文魔術……?」
《艦長の“意思”と“言葉”によって、世界に意味を与える。新たな文を紡ぎ、“敵”の否定性を上書きする魔術です》
悠真は息をのんだ。
それは、これまでの戦いの常識を根本から覆す戦術だった。
兵器も、呪文も、力の階梯すら関係ない。あるのは――「語ること」「望むこと」、ただそれだけ。
「やってやるよ。俺たちは、“意味の無いまま”じゃ終われない」
悠真は操縦席に両手を添え、息を整える。
そして、言葉を紡いだ。
「――我らが在るは、物語を刻む者。存在とは、連なる記録の灯火」
「お前がそれを塗りつぶすなら、俺は、何度でも書き換えてやる」
その瞬間、《ラグナ・リリス》の魔導核が虹色に輝いた。
艦の全体を包むように、文様が浮かび上がる。
《創文魔術、展開》
雷鳴のような咆哮と共に、アンチノミアの身を、意味ある文字の奔流が貫いた。
黒い霧が――揺らぎ、ひび割れる。
「……効いた、のか?」
リオンが呆然と呟く。
だが次の瞬間、アンチノミアの姿が“意味”を伴って再構成される。
それは、悠真自身によって与えられた“概念”の仮面をまとい――あたかも“彼”の影のような姿に変貌した。
「おい……これって……!」
ゼインが目を見開く。
「……なるほど。意味を与えれば、“敵”はそれを模倣して進化する。だが、それでもいい。――ならばこそ、次の意味を、また俺が上書きする!」
悠真の声が、艦内に響いた。
《記録外戦闘フェーズ、第二段階へ移行。創造者コード:確定》
彼らは、未知の敵と対峙していた。
だがその敵は、“恐怖”ではなく、“問いかけ”でもあった。
意味なき世界に、君はどんな物語を刻むのか――と。
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