第94話「外典:創造者たちの第一歩」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
眩い光の洪水が収まったとき、彼らの足元には――確かに大地があった。
湿り気を帯びた草の匂い。
どこまでも澄みきった青空。
遠くで風にたなびく樹々と、小鳥のさえずり。
「……ここが、“記録の外側”?」
リオン=カーディアがぽつりと呟いた。
「空気が……生きてる」
シア=ファルネウスが胸に手を当て、目を細める。
彼らが立っていたのは、まるで「神話のはじまり」のような、原初の世界だった。
都市も遺跡もない。
ただ無垢な自然が、すべてを包んでいる。
「完全に、情報構成が変わってる。ここは……既存の世界構造を持たない領域だ」
ゼイン=コードが周囲をスキャンしながら、低く言った。
「……じゃあ、“ここ”って……新しい世界ってこと?」
エリン=グレイスの問いに応えるように、突如、空間が波打つ。
《記録番号:∞(無限)》
《領域名:ナディア=オリジン》
《現在の観測者資格:解除》
《創造者コードへの移行を確認》
「ようこそ、“創造者たち”」
その声は、どこか懐かしく、そして深淵を覗くような音色だった。
現れたのは、白銀の外套を羽織った一人の青年――ヴェア=コード。
彼は、悠真にだけ視線を向ける。
「君たちは、輪廻の枷から抜け出した。第三周期は、もはや君たちに干渉しない」
「……ってことは、俺たちの選択が正しかったってことか?」
リオンの問いに、ヴェアは小さく首を振った。
「正しさなど存在しない。君たちが“今”を選び、“固定”を選択した。ただそれだけのことだ」
「じゃあ、俺たちはこれから何をすれば――」
言いかけた悠真に、ヴェアは静かに手を差し出す。
「君たちの前にあるのは、“何もない世界”だ。敵も、運命も、決まった結末もない」
「だが――創造者とは、“望む未来を描き出す者”を意味する」
その言葉と同時に、空が裂けた。
雷のような閃光とともに、空間の向こうから「何か」が現れる。
黒い霧。無数の眼。無秩序に歪む構造体。
「っ、敵意だ。あれは……存在の拒絶を表す概念兵器――“アンチノミア”!」
ゼインの声に反応し、仲間たちが身構える。
「“記録の外側”だからって、全部が綺麗な世界ってわけじゃなさそうね……」
シアが懐から魔導短剣を抜いた。
「創造とは、常に“崩壊”と隣り合わせだ。だが、その脅威にすら“意味”を与えるのが君たちの役割――“創造者”の責務だ」
ヴェアが言い終えると同時に、巨大な影が彼らの目前に迫る。
「来るぞ!!」
悠真が叫ぶ。
《ラグナ・リリス、接続再起動》
《魔導核再調整完了。エーリカより通達》
《“記録外戦闘モード”に移行します》
空から降りてきたのは――あの“魔導潜水艦”だった。
漆黒の機体が、異空間を破って現れると、音もなく彼らの背後に着陸した。
《お待たせしました、艦長。こちらは、何度でもあなたと共に在ります》
「……エーリカ」
悠真の胸に、確かな決意が宿る。
彼らは、記録を離れた。
そして今、新たな世界で――“創造”の戦いが始まろうとしていた。
ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!
モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!
過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。




