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第91話「再誕の海へ」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

白い波が、静かに打ち寄せていた。


ただ、それは“水”ではなかった。

ラグナ・リリスを包むのは、魔力と情報が融合した光の海――《再誕の海域リジェネレーション・オーシャン》。


「……空間転移、完了。周囲の次元座標、安定しています」


《エーリカ》の報告が、久々に穏やかな響きを取り戻していた。


ラグナ・リリスの艦橋では、全員がまだ静かに息を整えていた。


「……終わったんだな」


悠真がぽつりと呟く。


「“眼”を超えた先に、こんな世界が広がってたなんて……」


「終わった、というより……ここから始まるのかもしれない」


リオン=カーディアが静かに立ち上がり、スクリーンを見つめる。


見渡す限りの“情報の海”。


だがその中心に、はっきりとした構造体が浮かんでいた。


それは逆さまの塔のような形をしており、塔の一番下――つまり最深部に、球状の結晶体が輝いている。


《エーリカ》がその正体を読み取る。


《構造体識別コード確認——“オリジナル・アーカイブ”。この世界の創造記録、もしくは最初の記憶装置と推定》


「……アーカイブ?」


ゼイン=コードが眉を寄せた。


「俺たちがここまで来た理由、あの五つの通路が示していたもの……全部の答えが、そこにあるってことか」


「なら……行くしかないね」


エリン=グレイスがそっと手を握る。


その手の温かさに、悠真は静かに頷いた。


「……ああ。行こう。全てを知るために。そして、帰るために」


 



“塔”への接近は、想像以上に困難だった。


塔の周囲には渦を巻くような光の防壁が張り巡らされており、通常の航行では突破不可能。


《エーリカ》はその解析を進める中で、ひとつの真実に辿り着く。


《この塔は、“記憶”によって開かれる鍵を持っています》


「記憶……?」


シア=ファルネウスが反応する。


《五つの通路で、皆様が得た“記録”“意思”“犠牲”“忘却”“真実”。それらを統合した“自己の記憶”が、扉を開くキーです》


「……じゃあ、俺たち全員の記憶が必要ってことか」


「いや……」


ゼインが一歩、前へ出る。


「俺には、五年間の空白がある。欠けたままの記憶じゃ、“鍵”は完成しない」


沈黙が流れる。


だが、そこに一人、足音を響かせて現れた者がいた。


「だったら、あたしが補ってあげる」


そう言って笑ったのは、セラ=アーデルだった。


「ゼインの“空白”に、あたしが見てきた記憶を繋げる。五年前、あなたが何を選び、何を守ったのか……全部、あたしは知ってる」


 


彼女の言葉に、ゼインは目を見開いた。


「……お前、全部覚えてたのか?」


「ええ。黙っててごめん。でも今なら分かる。あなたが失ったものの意味も、ここに来た理由も」


セラがそっとゼインの額に触れると、記憶の断片が流れ込む。


仲間と笑い合う日々。


命を懸けて守った約束。


そして、別れの中で誓った未来。


 


全てが一つに繋がったそのとき。


塔の防壁が、音もなく崩れ落ちた。


 


《認証完了。“原初の記録”へアクセスを許可》


艦橋に、深く、静かな音が響く。


「さあ……行こう」


悠真が立ち上がる。


その視線の先には、塔の最深部へ続く、最後のゲート。


すべての始まりを知るために。

そして、すべての“帰る場所”を取り戻すために。


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過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

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