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第89話「最後の螺旋(スパイラル)へ」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

深海のような静寂に包まれた空間を、ラグナ・リリスが漂う。


全艦に微かな振動が走り、次元構造が緩やかに反転していく。


《最終階層ラスト・スパイラルへ移行中。各機能の次元最適化を完了しました》


《エーリカ》の冷静な声が響き、艦内に残った緊張をほぐすように、艦橋へと人影が集まる。


悠真は指先に微かな痺れを感じながら、掌を見つめていた。


「……これが、最後の扉か」


「最後の、じゃないよ」


そっと横から、エリンが彼の袖をつかむ。

微笑はどこか不安げだが、確かな意志を宿していた。


「本当の始まりになるかもしれない」


「そうかもな……」


悠真はその言葉に頷く。

過去を見つめ、今を知り、それでも前を向くために。


そこへ、シア=ファルネウスが通信デバイスを手に小走りで入ってきた。


「艦外との交信は……まだ完全に遮断されてるみたい。だけど、何かが動き出してる。魔力濃度の偏差が大きすぎる」


「つまり、“何か”がこの先に待ってるってことか」


リオン=カーディアが苦笑交じりに言う。


「《記録》《意思》《犠牲》《忘却》《真実》……全部通ってきた。その先に、“まだ何かある”ってことだろ」


「何が来ても驚かないさ」


ゼイン=コードが、いつになく静かな声音で言った。


「ここまで来て、誰一人欠けてない。……それだけで、きっともう充分だ」


言葉は簡潔だったが、その背にある重みを皆が理解していた。



《最終階層ラスト・スパイラルへ到達。扉、開放》


エーリカの声と同時に、艦の前方にある空間が音もなく開く。


そこは空でも海でもなく、まるで虚空そのものが渦を巻くような空間だった。


悠真は、息をのみつつも前に進む。


「エーリカ、舵を最前へ。全速……いや、ゆっくりでいい。目を逸らさず、真っ直ぐ突っ込もう」


《了解。艦首を最終座標へ固定。重力制御を開始》


艦が進むにつれ、周囲の景色が万華鏡のように歪んでいく。


そこには“空”も“地”もなく、ただ彼らの存在だけが浮かんでいる。


「ここ……やっぱり、普通の次元じゃない。観測すればするほど、構造が変わっていく……!」


シアの声がわずかに震える。


エリンが肩に手を添えた。


「……大丈夫。わたしたち、もう“壊れない”」


「うん」



そして、ついに——


螺旋の中心に、その“核心”が見えた。


それは、構造物ですらなかった。


ただ、巨大な“目”だった。


空間そのものが、彼らを見つめ返している。


《観測対象、次元同調体に認定》


《再構成を開始します》


エーリカの声が一瞬、かすれる。


「——エーリカ?」


《干渉を受信。AIコア保全モードに移行します》


艦内の灯が落ち、一瞬、闇がすべてを包んだ。


その時——


「この目……見覚えがある」


ゼインが口を開く。


「これは……俺の、記憶の中にある。“世界の終わり”を映してた、あの幻だ」


言葉が、空間を震わせた。


それが“何か”を呼び起こしたのかもしれない。


悠真は前を向いた。誰よりも強く。


「来るぞ。……こいつが、最後の試練だ!」


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過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

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