表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/110

第82話「見えざる脅威」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

第三階層《犠牲の檻》を突破し、ラグナ・リリスは第四階層《忘却の海》へと足を踏み入れた。


そこは、あらゆるセンサーが誤作動を起こす不気味な深海だった。

濃密な魔力の霧が海中に満ち、外部カメラは常に霞み、航行にはエーリカの自動補正機能が必要不可欠となった。


《警告:第四階層“忘却の海”に進入。精神汚染率が上昇しています。過去情報の参照が困難になる恐れあり》


「……つまり、忘れるってことか」


艦橋に立つ悠真が、モニターに映る霧の波紋を見つめながらつぶやいた。


《はい。認識不能な記憶断絶、すなわち“個としてのアイデンティティの崩壊”が懸念されます》


「こっちはもう、充分にいろんなもんを忘れさせられてきたんだがな」


ゼイン=コードが自嘲気味に笑ったが、その表情には鋭さが残っていた。


彼は《犠牲の檻》で記憶の一部を手放してなお、仲間のために動くことを選び続けている。

それはただの責任感ではなく、この世界の真実に触れた者だけが持つ“戦う理由”だった。



艦内では、シア=ファルネウスが記録端末を睨んでいた。


「これは……おかしい」


彼女は長く沈黙していたが、ふいに立ち上がった。


「航行記録が、微細に改ざんされてる。誰かが、ラグナ・リリスの通った経路を外部に送信してる可能性があるわ」


「なに!?」


リオン=カーディアが顔を強張らせた。


「つまり、誰かが裏切ってるってことか?」


「それだけじゃない。データのパターンが、“艦内の存在ではない何か”と一致してる」


「……何か?」


「“人”じゃない。“意志”に近い……けど、違う。もっと無機的で、冷たい……それでいて、私たちのことをずっと見ているような――」


彼女の言葉が途切れた瞬間、艦内灯が一斉に赤に染まり、警報が鳴り響いた。


《緊急警告:艦内に不明存在を感知。侵入経路は不明。全乗員は戦闘態勢を取ってください》


「まさか……忘却の霧の中に、何かが潜んでいた……!?」


悠真が立ち上がると同時に、空間が揺れた。


その瞬間、艦内モニターに“人型”の影が映し出された。

それは、どこかで見たような姿……だが思い出せない。

記憶の靄の中にある“誰か”の影。


「これは……俺の、知ってる……?」


リオン=カーディアが額を押さえる。


「違う。これは、俺たちの“記憶”を喰って……擬態してるんだ!」


「つまり“忘却の海”自体が、敵を生み出してる……!?」


戦慄が走った。


そして、艦の通路の一角。

淡く光る霧の中から、その“影”がゆっくりと歩み出す――


「武装展開! 全員、配置に!」


悠真の号令に、艦内は即座に臨戦態勢へと移行する。


だがこの敵は、単なる物理的な脅威ではなかった。


「記憶を……壊される……!」


シアが膝をついた。

影が近づくごとに、彼女の目が虚ろになっていく。


「ダメだ、こいつは……存在そのものが、“忘れさせる”ために作られてる……!」


悠真は叫ぶ。


「だったら、“想い”で抗うしかない!」


その叫びに、ゼインとリオンも応じた。


「覚えてるぞ……お前が泣いた顔も、笑った顔も! 絶対に忘れねえ!」


「俺の名前はリオン=カーディア! そして、ここにいるみんなが、俺の誇りだ!」


言葉が、光となって艦を包む。


その瞬間、影が立ち止まった。


《共鳴信号確認。認識妨害を解除します》


モニターに、不可解な文字列が浮かび上がった。


「“試練を突破せし者たちよ、第五階層《真実の門》へ至れ”……?」



艦内の空気が、一変する。


忘却の霧が、まるで潮が引くようにゆっくりと晴れていく。

そしてその先に、荘厳な“門”が姿を現した。


「……いよいよか」


悠真は、拳を握った。


ラグナ・リリスは、ゆっくりとその門へ向かって進み始める。


“最終階層《真実の門》”――


そこには、彼らが長く追い求めてきた“核心”が待っていた。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ