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第76話「白銀の選択」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《支払い申請を受理。詳細確認中……》


ラグナ・リリス艦内の空気は、一瞬にして張り詰めたものへと変わった。


艦橋に立つシア=ファルネウスは、顔色ひとつ変えず、じっと前を見据えている。


蒼銀の髪が揺れる。機械音が脈打つたび、彼女の中にある決意が、無言の圧となって艦橋を包み込んでいた。


《確認完了。シア=ファルネウス、支払い候補として承認》


《対象項目:感情共有領域の遮断。以後、他者とのエンパシー接続が不可能となります》


「……感情の遮断?」


エリンが小さくつぶやく。


「それって、つまり……誰かと心を通わせることができなくなるってこと……?」


《その通りです。対象の感情共有機能は、過去の記憶に関連する“情動トリガー”も含めて完全に封鎖されます》


「シア、そんなの……それじゃあ……君が、君でなくなる」


悠真の声は、どこか震えていた。


リオンも言葉を失い、ただシアを見つめる。


だが彼女は静かに、首を振った。


「私は……この艦に来るまで、ずっと“孤独”だった。でも、ここで出会ったみんなと過ごすうちに、“誰かと心を通わせる”ことの重みを、知ったの」


「だったらなおさら、そんな代償を——!」


「だからこそ、払うの」


シアはゆっくりと悠真を見つめた。


「もし、これ以上の支払いを誰かに強いるなら、私のこの感情も、絆も、全部……無意味になる」


彼女の言葉は静かだったが、その芯は鋼よりも強く、誰も口を挟めなかった。


《最終確認:シア=ファルネウス、支払い対象を承認しますか?》


「はい。これが、私の選択です」



淡い光が彼女を包み、次の瞬間——


その瞳から、微細な揺らぎが消えた。


まるで、感情という“色”を塗りつぶされたように。

無機質な静けさが、シアの中に広がっていた。


「……終わりました」


いつも通りの口調。だが、そこにあったはずの微笑みも、戸惑いも、何もない。


エリンが恐る恐る近づいたが、シアはまっすぐに見返すだけで、何の反応も示さない。


「……シア……?」


「はい。必要があれば、作戦行動に戻れます」


完全な遮断。だが、彼女の意思で選ばれたこと。

それが、なおさら痛みを増していた。



静まり返った艦橋に、エリカの声が再び響いた。


《第四周期、支払い完了。次の遷移準備に入ります》


「……なあ、もうやめよう。こんなの……おかしいだろ」


リオンが、低くつぶやいた。


「進むために、何かを失い続けるなんて……そんなの、“勝ち”じゃない」


「それでも、行かなきゃならない場所があるんだ」


悠真の声もまた、静かだった。


「この艦に隠された真実……この世界の成り立ち……何より、こんな選択を“強いる何か”を止めない限り、終わらない」


リオンは言い返せなかった。


それは事実だった。

だがその“事実”は、あまりにも残酷すぎる。



艦が深層回廊へと再び潜行する。

終末回廊、第五通路《真実》——その核心へ。


そしてその先で、待ち受けるのは——


――彼らがいま、もっとも見たくなかった“過去の姿”。


《アクセス開始:記録サブ層・コア領域——アーカイブ・エオス》


エリカの声が告げたその言葉に、全員の目がわずかに見開かれた。


「アーカイブ・エオス……?」


「それって……記録の、根幹……?」


だが次の瞬間。


艦内に、微かな音が響いた。


ポタ……ポタ……。


液体の落ちる音——血のような、涙のような、それでいてどこか、記憶を滴らせるような。


そして、そこに現れたのは——


「やあ……ようこそ、僕たちの“原罪”へ」


血塗れの白衣をまとい、片目に魔導レンズをつけた“少年”が立っていた。


「君たちが何を失おうと、辿り着くことはできないよ。だって君たちは、選ばれなかったのだから」


——第五通路《真実》。ついに開かれる、最も忌まわしき真相。

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過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

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