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第71話「聖域《セクター・セラフィム》突入前夜」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《ラグナ・リリス》は、虚空の彼方に浮かぶ“神域”の外縁部に辿り着いていた。


そこは《聖域セクター・セラフィム》——失われた大文明の残滓と、未知の観測構造が交錯する特異領域。

古より禁じられし“最深の知識”が封じられていると伝えられ、かつて誰も踏破した者はいない。


「まるで……呼吸しているみたいだな」


艦橋のメインスクリーンに映し出された聖域は、巨大な花弁のような浮遊構造物が幾重にも折り重なり、ゆっくりと脈動していた。

内部では、光子と記録が絡み合い、次元そのものがねじれているようにも見える。


《観測空間、極度に不安定。侵入には多層干渉シールドの構築が必須》


「つまり……ぶっつけ本番は無理ってことだな」


ゼインが腕を組み、リオンは舌打ちを漏らす。


「んじゃ、まずは“扉”を叩いてみるか……なあ、艦長」


悠真はゆっくりとうなずいた。


「ただし、今回は慎重にいく。——まずは内部構造を把握してからだ」



その夜、《ラグナ・リリス》艦内では、久しぶりの“静寂”が訪れていた。


艦の一角。訓練室で、一人、セラが魔導端末を操作していた。


「……座標変動に対する干渉式の再調整は済んでる。でも……それでも確率は——」


彼女の背後から声がかかった。


「まだ考えてるのか? おまえの計算式は、もう完璧だろ」


リオンだった。手には冷えた飲み物が二つ。


「……ありがと。けど、完璧ってのは——壊れる前提がないものに言う言葉よ」


「ま、そういうおまえが、壊れたことないのが不思議だけどな」


セラは小さく笑った。


そのとき、艦内通信が鳴る。


《艦長から全クルーへ。二〇〇〇時より、戦略会議を実施。全員、ブリーフィングルームへ集合せよ》



ブリーフィングルームでは、全員が着席し、中央の立体ホログラムがゆっくりと起動する。


浮かび上がるのは《聖域セクター・セラフィム》の断片的な構造情報。


「内部は“十二の階層”に分かれているらしい」


悠真が口を開く。


「それぞれが独立した次元構造を持ち、通過には個別の観測承認が必要だ。しかも……その都度、誰か一人が“記録媒体”として認識を担う必要がある」


「つまり、観測役を誰がやるかって話か……」


ゼインが表情を引き締める。


「だけどそれ、失敗したら……」


「その個体の記録が、存在ごと消える。戻れない、ってことだ」


艦内に沈黙が走る。


それでも、誰一人、顔を背けることはなかった。


「……やるしかないんでしょ?」


エリンが静かに、しかし力強く言った。


「この先に、“あの人たち”がいた答えがあるなら。私……行きたい」


「オレも。観測が、何かを壊すだけじゃないって……証明したい」


リオンが続く。


《私も、皆さんと共に進みます》


エーリカの声が重なり、全員の視線が前方へと向く。


悠真はゆっくりと立ち上がった。


「……明朝、侵入を開始する。目標は最深部——第十二階層、《アポステイト・コア》。そこで、この旅の全てに答えがあるはずだ」


彼の言葉に、皆が静かにうなずいた。


その夜、それぞれが想いを抱え、束の間の眠りについた。


誰もが分かっていた。


明日から始まるのは、“観測”という名の審判だ。


そして、それは終焉ではなく——


希望への道となるかもしれない。

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