第70話「彼方の観測者たちへ」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
世界は、再び静けさを取り戻していた。
《リコーダム・ネクサス》の崩壊から数時間後。
悠真たちは、それぞれ元の通路──《意思》《犠牲》《忘却》《真実》《記録》へと帰還していた。
その扉の先には、全員が合流する最後の区画、《観測の終端》が広がっていた。
まるで古代の天文台のようなドーム空間。
天井には無数の星のような光点が瞬いており、それぞれが「一人の存在の記録」を表していた。
「……ここが、観測の終わり?」
シアがそう呟いたとき、エリンが小さく首を横に振る。
《いいえ……“終わり”じゃない。ここから“始まる”の》
「“観測の終端”って、たぶん、“過去を見終わった場所”って意味なんだよ。……なら、未来は」
と、ゼインが言いかけたとき――空間の中央に、巨大な“鏡”が浮かび上がった。
鏡は黒く、光を吸い込むように沈んでいたが、そこに七人が近づくとゆっくりと像を結びはじめる。
映し出されたのは――《ラグナ・リリス》。
ただし、それは彼らが知る姿ではなかった。
艦体の構造が一新され、無数の魔導機関と外骨格装甲を備えた、未知の《進化体》。
その側面には、白銀の文字が刻まれていた。
《EXO-RAGNA:観測者たちによる再定義》
悠真は驚愕と共に、足を止める。
「……あれは、“これからの”ラグナ・リリス、なのか……?」
「たぶん、“再構築された運命”……今までの観測と記録を経て、未来に現れるべき形……なんだろうな」
とレーフィが言う。
そして、空間の中心に、ふたたび現れる《終末回廊》の番人。
かつて、五つの通路を案内した“声”の主だ。
『おめでとう、観測者たちよ。おまえたちは“記録される側”から、“未来を描く側”となった』
『よって、次なる旅路を開示する。』
巨大な鏡が開き、中から光の通路が伸びていく。
それは、“どこへでも行ける道”――制限なき航路だった。
『ただし、忘れるな。おまえたちが描く未来は、誰かの観測によって揺らぐこともある』
『それでも、進みたいと願うならば――』
悠真は、鏡に手を伸ばした。
「進むよ。俺たちの存在が、誰かに“意味”を与える日まで」
その背に、仲間たちが並ぶ。
セラが微笑み、シアが頷き、ゼインが静かに剣を収める。
「どこへ行こうと、もう迷わないよ」
エリンがその手を取り、歌うように言った。
《私たちは、未来の“観測者”であり、“創造者”でもあるんだから》
光が広がる。
彼らの姿は、再び《ラグナ・リリス》の中枢に戻る。
が、それは“新たな艦”の中。
全てを乗り越えた《ラグナ・リリス》は、魔導・記録・観測のすべてを統合した“意志の艦”として生まれ変わっていた。
──次なる目的地:不明。
──次なる敵:未定。
──だが、彼らの航路は確かに“観測済み”ではない。
だからこそ、希望に満ちている。
悠真が、艦の指揮卓に立つ。
「――出航だ。次は、俺たち自身が“誰かの物語”になる番だ」
――観測者たちの物語は終わらない。
それは、誰かが読み、想い、そしてまた誰かが“継ぐ”。
記録と観測の彼方へ。
航路は、解き放たれた。
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