第69話「記録を超えて──エグゾ・レコード」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
虚空に浮かぶ《リコーダム・ネクサス》。
悠真の手にあるのは、すべての観測記録を束ねる筆記装置《コード:ゼロ=オブザーバンス》。
アブザーバーの手にあるのは、記録を拒絶し、観測を断つ黒き刃。
――そして今、七人の物語は終わりではなく、“定義”に至ろうとしていた。
「観測とは、記録された“結果”の累積にすぎん」
アブザーバーは語る。
その声は、静かで、それでいて“すべてを見てきた者”のようだった。
「記録とは、選ばれた“意味”にすぎん。だが、お前たちは“意味のない奇跡”を信じた。だから、お前は此処に立つ」
悠真は、筆記装置を静かに構える。
「意味なんて、あとから誰かが決める。だから――俺たちは“まだ書ける”」
その声とともに、七人が動いた。
シアの結界がアブザーバーの空間干渉を斬り裂き、
レーフィがその背後に“未来の光”を投射する。
《クロノ・リフレクター:確定していない未来の再記述、開始》
「未来は、君の目で“まだ見えていない”。だから、私が“示す”!」
その光の下、セラが虚無を疾走する。
記録すら曖昧な“思考と感情”の霧の中で、彼女は“確信”を放った。
《霧状観測:深層心理映像化──記録不確定領域の上書き挿入》
「なら、私は“気持ち”で書く。記録よりも、観測よりも、強い“想い”で!」
アブザーバーが一歩後退する。
その刃に、一瞬の揺らぎが走った。
そこに、リオンが突撃する。
「想いを受け取って、今を斬る……! 俺たちは、止まらねぇ!」
彼の双剣が、“記録を超える行動”として軌跡を描く。
《オーバーコード:行動未観測の奇跡──現在の再定義》
そして、ゼインが静かに語った。
「俺は、観測者でも被観測者でもない。だからこそ、君の法則に左右されない存在だ」
彼の周囲に無数の“視点”が展開される。
《パラドキサル・レンジ:観測無効化領域/多次観測遮断》
「君は“すべてを見ている”と言ったけど、俺たちの内側までは“見えてない”」
そして、エリンの歌が始まる。
それは、かつて《セレディア》の大聖堂で一度だけ歌われたという、
“真実を導く旋律”──伝承の中にしかないはずの曲。
《リリス・ソング:全記録領域に共鳴する最終解放歌》
その旋律が虚無を満たし、アブザーバーの身体がわずかに崩れた。
「これは……記録外の……共鳴、だと?」
悠真はその一瞬の隙を逃さず、記録筆を大きく振るう。
《ゼロ・オブザーバンス──すべての観測記録を束ね、再定義する》
「俺たちの存在は、記録じゃ決まらない。観測されても、定義されても、意味なんか“あとから書く”!」
筆から光が奔り、七人の存在を貫いた。
それは、“ただの筆記”ではなかった。
七人それぞれが、己の生きた証を、記すという行為そのものだった。
そして、アブザーバーの身体が、ひとつずつ欠けていく。
それは敗北ではない。
存在の“定義の上書き”だった。
「……なるほど。お前たちは、もはや記録される側ではない。自らを“記す者”となったか」
アブザーバーが最後に微笑み、虚無に還る。
「ならば、この観測の座を……譲ろう。新たなる……記録者たちよ」
──その瞬間、虚空が解けていく。
《リコーダム・ネクサス》が崩壊し、七人はそれぞれの“観測点”へと還っていく。
世界は、いま再び書き始められた。
そして、悠真は最後に一言、記録へ書き込む。
「――ここからが、本当の物語だ」
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