第68話「記録の終端──ザ・セブンスコード」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
――虚無に浮かぶ決戦の舞台。
そこは観測された者と観測する者、その両者の意思が交差する、記録最深層。
ザ・アブザーバーは黒き剣をゆっくり構え、
悠真たちは七人、完全なる記録武装の最終形態で対峙していた。
その瞬間、時間が跳ねるように歪んだ。
「来るぞ――!」
悠真の叫びと同時に、アブザーバーの一撃が放たれる。
それは“斬撃”というより、“過去”そのものを断ち切る衝撃波だった。
《時間収束干渉波。過去記録との照合破棄を確認──再記述不能領域が発生》
だが、七人は退かない。
むしろ、前に出る。
セラが霧とともに姿を消し、アブザーバーの背後から再構成された。
《ファントム・ロス=アーク:記録回避──自己存在選択》
「あなたの目に、私は映らない……記録には“残さない”わ!」
だがアブザーバーは、霧すら見ずに対応する。
背後からセラを狙った“影の腕”を、リオンの双剣が叩き切った。
「俺の剣は、記録に縛られない“現在”を刻む!」
《ツインブレイド・ジャッジメント:時空位相共鳴──秩序と解放》
だがアブザーバーは笑う。
「浅い。記録の守護者ごときが、記録外を討てると思うな」
黒の剣が、リオンの右肩をかすめる。
その瞬間、彼の「記録」が裂けた。
《記録抹消……重大記憶喪失:母の笑顔》
リオンが目を見開き、苦悶に叫ぶ。だが、倒れない。
「……思い出せなくても、俺の剣は止まらない。だから……行け、ゼイン!」
ゼインが、虚空から多層的な“記録帯”を展開した。
《オルタナ・コード:境界演算開始──別観測点より補正認識を投入》
「記録が奪われても……別の可能性から、再生できる」
《観測反転完了》
ゼインの一閃が、アブザーバーの腕を裂く。
しかしその断面すら“記録不能”とされ、即座に修復される。
「なるほど。“セブンスコード”にしては上出来だ」
エリンが前に出た。
その手に抱くのは、銀の音叉――《シンフォニア=エデン》。
《全記録調律領域、起動──》
「この空間に響く音が、誰かの心を砕くのなら――私が“新しい旋律”を奏でる」
天使の歌声のような音が、虚無に響いた。
その音は、虚無の記録すら一瞬だけ“明るく染めた”。
だがアブザーバーの目が細められる。
「……ふむ。“観測対象の歌声”が、観測の法則に“揺らぎ”を生んだか」
「ならば次は、その歌を“無音”で上書きしよう」
アブザーバーが手をかざすと、音が世界から消えていく。
それは音ではない“消音”──記録されるべき振動すら拒否する黒い圧。
その時、レーフィが静かに詠唱を始めた。
《リベル=クロニクル:未来記述展開──可能性領域、因果上書き》
「未来は、まだ書き終わってない……私が、記すの」
レーフィの開いた魔導書が、アブザーバーの黒い圧力に抗うように光を放ち、再び音を紡ぎ始める。
「未来が見える。わたしたちは――負けない」
その一言で、音が戻る。
世界に“記録”が再生された。
「……見事だ」
アブザーバーが静かに笑う。
「この戦いが終われば、君たちは“観測される存在”ではなくなる。すなわち、君たちは“記録されざる真理”へと至る」
「だがその領域には、一つだけ、扉がある。その鍵は――お前だ、悠真」
すべての視線が、悠真へと向けられる。
悠真は静かに前へ歩み出る。
「じゃあ、その鍵ってやつを……俺が“開く”しかないんだな」
手にした《コード:ゼロ=オブザーバンス》が、光を放つ。
観測と記録、意志と存在。すべてを束ねる“記録の筆”。
「だったら――俺たちで、この記録に終わりを与えよう」
アブザーバーが剣を構える。
「ならば書いてみせよ。観測を超える物語を」
記録の筆と、観測の剣。
いま、最後の“筆記”が始まる――
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