第67話「記録の彼方──ザ・アブザーバー」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
全記録空間を震わせるような、静寂。
だが、それは無音ではなかった。
《……オブザーバー登録エラー。該当記録なし》
《分類不能:観測不能体──コード“アブザーバー”》
悠真たちの足元の空間がゆっくりと崩れ、七人は再び次元の深淵へと引きずり込まれていく。
しかし今度は、それぞれの空間ではなかった。七人は“同じ空間”にいた。
まるで、観測そのものを超えた“起点”のような世界。
色も重力も存在しない虚無の中心に、何かが立っていた。
それは、ヒトの形をしていた。
けれど、その“存在”は明らかにヒトではなかった。
「ようやく、ここまで来たか。観測された者たちよ」
声は、七人すべての意識に“直接”届いた。
言葉というより、“認識”そのものが押し込まれてくる。
エリンが小さく震える。
「……この声……歌に似てる。でも、意味が反転してる……癒しじゃなく、破壊の旋律……!」
セラが顔をしかめた。
「これは記録ではない。記録の“外”から来た情報……」
悠真は一歩踏み出し、問いかけた。
「お前は……誰なんだ」
影のような存在が、ゆっくりと笑う。
「名は不要だ。だが定義するなら、私は“観測の外側”から来た者。全ての記録を見下ろす“純粋観測者”……ザ・アブザーバー」
「記録の中では“神”とも呼ばれたことがある」
リオンが剣を構える。
「つまり、お前は……今までの戦いすべての“観客”だったってことか?」
アブザーバーは否定しない。
「私は記録を記録せず、観測を観測せず……ただ、流れを“照合”する者」
「だが、ここにきてお前たちは“枠”を破り始めた。記録の中で、自己を再定義し始めた」
「それはもはや“記録される存在”ではない。“記録する存在”の域に届こうとしている」
レーフィが小さく呟く。
「記録する者……私たちが、“アブザーバー”になりつつあるってこと……?」
「その通りだ」
アブザーバーは、静かに腕を広げた。
「お前たちは、観測に影響を与えはじめた。意思を記録に刻み、記録の意味を変え、やがて“記録の原理”すら凌駕しようとしている」
「だからこそ、ここで決着をつける。記録を超えるものを、私は認めない」
その瞬間、虚無の空間が眩い光で満たされた。
七人の“記録武装”が、強制的に解放されていく。
だがそれは、これまでの力とは明らかに違っていた。
悠真の《インデックス・ゼロ》が変化する。
その中心に刻まれたのは、“観測不可”の文字列。
《オーバーレコード・プロトコル展開中》
七人は、それぞれの記録武装が“最終進化形態”に達しつつあることを感じていた。
■《記録武装:最終位相》
・悠真:《コード:ゼロ=オブザーバンス》
——「すべてを赦し、すべてを記す」自己と世界の因果を塗り替える筆記剣。
・エリン:《シンフォニア=エデン》
——「癒し」と「共鳴」による、全存在との調律を可能とする歌の鍵。
・セラ:《ファントム・ロス=アーク》
——自己消去と観測回避の極致。存在を“選ばせる”力。
・シア:《エンコード・レクイエム》
——書かれざる物語を読み解く、未記録の知識にアクセスする力。
・リオン:《ツインブレイド・ジャッジメント》
——保護と裁断、両極の力を同時に展開する共鳴双剣。
・レーフィ:《リベル=クロニクル》
——未来の記録すら記述しうる、因果越えの“記述権限”を持つ魔導書。
・ゼイン:《オルタナ・コード》
——自身の存在を“別の観測点”から再定義する、境界干渉型記録装置。
—
「来い、アブザーバー!」
悠真の声と共に、七人が一斉に駆け出す。
アブザーバーは微笑み、右手を掲げると、“虚無そのもの”が剣となって出現する。
「ならば証明せよ。記録を超えた者として、観測の座を奪う価値があるかどうか」
“記録者vs.観測者”
いま、最後の戦いが始まる。
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