第66話「記録の影──ザ・リライター」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《記録の反転、完了》
《オーバーライト・オメガ・フェイズ開始》
光が収束した先で、悠真たちは“異様な感覚”に包まれていた。
確かに打ち破ったはずの《コア・オーバーザーバー》が再起動し、彼らの記録武装を一つひとつ“分解し、再構成”していく。
《観測者たちの記録、模倣完了》
《新たなる観測存在を定義する——リライター》
白銀の空間が、七つに割れる。
それぞれの“観測空間”の中に、七人の《リライター》が現れた。
それは——彼ら自身にそっくりな姿。
だが、表情も、眼差しも、纏う気配も、どこかが歪んでいる。
まるで「もし、自分が別の選択をしていたら」という、“可能性の亡霊”のようだった。
■
【観測空間A:悠真 vs. リライター・悠真】
「俺の力を……コピーしただけじゃ、俺には勝てない」
だが、目の前の偽悠真は微笑む。
「違うさ。俺は“お前が恐れた未来”——全てを裏切る、もう一人の結城 悠真だ」
リライターの《インデックス・ゼロ》は、悠真とは違う波形で発動し、
味方の未来を“犠牲”にして、圧倒的な力を引き出すという逆転の仕様だった。
「俺は……そんな選択、絶対にしない!」
「でも、お前の中には、その可能性があった」
剣が交錯し、因果の流れが乱れるたび、
“信じた者を裏切る力”が幻影のように心を侵す。
「お前が俺に勝つには、“過去の選択”を赦さなきゃいけないんだ」
悠真は、拳を握りしめた。
「俺はもう……あの日を責めない。誰かを救えなかった過去も、全部、今の俺が抱える」
《ゼロフェイズ・レゾナンス》——
赦しと覚悟の力が、幻影を貫く光となり、リライター・悠真を打ち砕いた。
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【観測空間B:リオン vs. リライター・リオン】
「“守る”だけじゃ足りない。俺は……壊すことも選べたんだ」
偽リオンの手には、二本ではなく“無数”の剣があった。
それは彼が選ばなかった、憎しみと復讐に囚われた未来の象徴だった。
「お前は、いつまで綺麗事で縛られる?」
「違う。俺は誰かの命を“生きる理由”にしたくないだけだ!」
リオンは双剣を交差させる。
怒りではなく、願いの力で。
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【観測空間C:エリン vs. リライター・エリン】
「歌がすべてを癒せるなんて、傲慢だと思わない?」
偽エリンの詩は、人々を操る“支配の歌”。
彼女自身が傷つき、その痛みを見返りとして与えることしか信じられなかった存在。
「私は……誰かの心を“直す”んじゃない。一緒に歌いたいだけなの!」
エリンの旋律が響くたび、暗黒の詩が少しずつ崩れていった。
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【観測空間D:セラ vs. リライター・セラ】
「私は記録を壊す力を持っている。だったら、世界すべてを消してやればよかった」
セラの影は、自身の存在を完全に“抹消した”世界から来た可能性だった。
「存在を消すことは、自由でも救いでもない。私は私として……見つめられたかった」
自己存在の肯定が、彼女に新たな転移軌道をもたらし、
影のセラを観測不能の彼方へと消し去った。
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【観測空間E:シア vs. リライター・シア】
「知識だけじゃ、救えないものがある。なら、知らなければよかったって思ったこと、ある?」
偽シアは、“あらゆる記録”を知るがゆえに、孤独を極めた姿だった。
「でも私は、知らなければ出会えなかった人たちがいる。悲しみも痛みも……知って良かった」
彼女の開いた書の最後のページが、影のシアを閉じ込めた。
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【観測空間F:レーフィ vs. リライター・レーフィ】
「書き直しても、また誰かが傷つくだけ。だったら最初から、何も決めない方がいい」
リライターの彼女は、選択を放棄した記録者。
すべての可能性を拒絶し、“無”に甘えた姿。
「私は……選ぶ。たとえ間違っても、誰かに届くって信じてるから!」
“決定”とは、覚悟と希望の結晶。
レーフィの《リベル・ノート》が、再び光を帯びた。
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【観測空間G:ゼイン vs. リライター・ゼイン】
「存在しなければ、苦しまない。最初から、観測されなければよかった」
“未記録の記録者”。
ゼインの影は、自身の存在すら放棄した可能性だった。
「お前がそう思ったことがあるのは、知ってる。俺もあるから」
「でも今ここにいる俺は、もう選んだ。存在するってことを」
未記録の存在が、世界を変えるのなら——
ゼインの拳が、記録されなかった一撃として、リライター・ゼインを塵に変えた。
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七つの影は、全て消え去った。
七人は再び一つの空間に集結し、息を整えた。
「自分自身の可能性と向き合うなんて……洒落にならない試練だったわね」
セラがため息混じりに言うと、リオンが微笑む。
「でも、それを乗り越えた。もう、誰にも譲れないよな……自分の記録は」
すると、ラグナ・リリスの通信が入る。
《コア・オーバーザーバー、沈黙。しかし残留観測領域に異常反応あり》
《最終観測体──“記録の外側から来たもの”が接触を試みています》
「……まだ、何かいるってこと?」
シアの声に、悠真は頷く。
「ああ。観測は、まだ終わってなかったんだ」
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