第65話「観測者の器──コア・オーバーザーバー」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
《観測位相:転移完了》
《コア・オーバーザーバー、本体形態へと移行開始》
蒼白く光る虚空の中心に、巨大な“瞳”が現れた。
それは星々の記録を凝視し、宇宙のあらゆる歴史を静かに測り続ける、全記録観測体の中枢。
そこから枝分かれするように、数百の光の触手が空間を織り、まるで銀河そのものが意思を持ったような威容を形作っていた。
「これが……本体か」
悠真が呟くと同時に、ラグナ・リリスが上空から全体形状を分析し、《エーリカ》が警告を発する。
《コア・オーバーザーバーの観測精度:人智を超越。干渉は即、因果律変動を伴います。各自、記録武装の最大出力を推奨します》
その声に応じ、七人の武装が一斉に変容する。
それぞれの記録を核に、最終形態へと進化を遂げる。
◆《インデックス・ゼロ:オーバーライトモード》(悠真)
「俺は……過去も未来も背負う。すべてを照らす記録の起点として!」
青白い光と共に、彼の右腕から放たれた記録粒子が空間を貫通。触れた因果を“編み直す”力が込められていた。
—
◆《ツイン・アーカイヴス:ダブルエディクト》(リオン)
「守るためなら……俺は二つの正義を背負う!」
彼の両手には、形状の異なる二振りの剣。
ひとつは過去を断ち、もうひとつは未来をつなぐ。
—
◆《グレイス・クォート:詩篇・終章解放》(エリン)
「あなたたちの声がある限り……私は何度でも歌う」
彼女の詩が響くたび、味方全員の思考と感情が繋がり、戦況をひとつの「物語」として再構成していく。
—
◆《イグジスト・コード:ラディカル・シフト》(セラ)
「もう私は観測されない。私が観測する側になるのよ」
量子跳躍を思わせる移動能力と、自己存在を“別の軸”に転写することで攻撃も干渉も無効化する、規格外の能力。
—
◆《ルーメン・クロニクル:無限開架》(シア)
「知識は力。記録は武器。私の観測領域、ここに展開!」
あらゆる事象を“参照”し、模倣・解析・再現する超記憶領域。
彼女の視線の先では、過去の戦術が自在に再演される。
—
◆《リベル・ノート:リフォージ・エディション》(レーフィ)
「書き換えてやる……お前の“決定”を!」
因果の決定を“未決定”に戻す、唯一無二の否定能力。
相手の選択を逆再生させ、未来すら塗り替える。
—
◆《パラドクス・ドライブ:シン・ゼロフォーム》(ゼイン)
「お前が定義できない存在なら、それが俺の最大の武器だ」
“存在しなかった”記録を武器に転じ、観測そのものを破壊する無軌道の力。
彼の一撃は、事象すら書き換えずに“なかったこと”にできる。
—
七つの最終記録武装。
その全てが《オーバーザーバー》の本体へと向かって一斉に動き出す。
■
「来るぞ!!」
《オーバーザーバー》の“瞳”が大きく見開かれた。
その瞬間——
光の観測線が七方向に放たれる。
それは“個別記録”の否定干渉——七人の存在を、再び“記録として解体”しようとする試みだった。
が。
「そんなもん、もう効かねぇよ!!」
ゼインの叫びとともに、“記録されていない一撃”が虚空を引き裂く。
直撃を受けた触手が、記録の外へと弾かれて消滅した。
「全員! 同時にコアを叩く!!」
悠真が号令をかけると、各記録武装が交差するように戦場を翔けた。
シアとエリンが戦場全体をリンクさせ、
セラとリオンが奇襲と防御で穴を開け、
レーフィとゼインが観測をかき乱し、
悠真がその中心で一撃を放つ。
「《終端観測・ゼロフェイズ》——撃ち抜け、《因果の瞳》!!」
七人の攻撃が同時に《コア・オーバーザーバー》へと収束する。
観測は限界を迎え、因果は軋み、
記録は今——
《異常発生:観測阻害……確認》
《全記録が——現在に到達します》
爆発的な光とともに、空間が白に染まった。
■
静寂。
七人は、光の中心に立っていた。
《コア・オーバーザーバー》は、沈黙していた。
だが——
《再定義開始》
《最終観測モード:オーバーライト・オメガ》
《記録者の力を借用し、観測領域を再生する》
次の瞬間。
彼らの“記録武装”が、ひとつ、またひとつと、逆流するように吸い込まれていく。
「……え?」
エリンが驚愕の声を上げた。
「記録そのものが……《オーバーザーバー》に奪われてる!?」
——そう、それは“観測の終わり”ではなく、
“観測者の誕生”を意味する、新たなフェーズの始まりだった。
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