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第64話「記録干渉:過去の亡霊たち」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《最終観測戦:第2段階──開始》


——全記録照合。

対象個体へ観測干渉開始。

精神軸・記憶領域・選択分岐へアクセス完了。

対象は「自己」を定義できるか。

答えよ。



「……ここは……?」


悠真は気づけば、一面の白に囲まれていた。

時間も空気も、現実味さえ希薄なその場所は——彼がかつて失った「平凡な世界」だった。


夕暮れの海辺。

釣竿と、友人の笑い声。

キャンパスの静かな日々。

そして、もう帰れない家。


「懐かしいな……」


すると、波打ち際に誰かが立っていた。

それは、もう会えないはずの人物——


「……母さん……?」


母親が静かに微笑む。


《あなたは、帰ってこなかった。あの世界に。》


《それで、良かったの? ヒーローになって、誰かを救うって……それは、“本当のあなた”?》


——心を刺すのは、外からの攻撃ではない。

観測される記録。

その深層にある、“もしも”の問い。


「……わからないよ。でも——」


悠真は《インデックス・ゼロ》を再起動させる。


「それでも、ここまで来たんだ。みんなと一緒に。エリンやセラ、シア、レーフィ、リオン、ゼイン……」


「だから、たとえこれが間違っていたとしても——俺の“選んだ道”だ!!」


空間が砕ける。

彼の“現在”が“過去の亡霊”を貫いた。



同時刻。

リオンの眼前に現れたのは、軍服を着た父だった。


「リオン。お前は“騎士”の名を汚した。命令違反。感情優先。理性なき選択」


「……知ってるさ」


だが、リオンは迷わない。


「けど、俺は間違えてない。あのとき、あの子を見殺しにしたら、もう自分が自分でいられなかった」


彼の《ツイン・アーカイヴス》が過去の記録を引き裂く。

父の幻影は消え、彼の正義が新たな軌道を描いた。



エリンの前には、小さな少女が立っていた。

それは、過去の彼女自身。


《どうせ何を言っても伝わらないよ……黙ってた方が楽なんだよ……》


かつての“諦めたエリン”が語る。

でも今の彼女は、そっと少女に寄り添う。


「ううん。言葉は届く。伝えるまで、少し時間がかかるだけ」


《……どうしてそんなこと、信じられるの?》


「信じさせてくれた人たちがいたから」


彼女の《グレイス・クォート》が詩を奏でる。

小さな彼女の肩に、未来への言葉が降り注いだ。



セラの干渉記録には、研究所の真っ白な壁が映る。

実験台に座らされる“もう一人のセラ”。


《あなたは、観測のために生まれた。感情は不要。逃げることも、愛することも》


「黙りなさい」


彼女の瞳に、恐怖はなかった。


「私は逃げた。誰かと出会い、信じ、今を戦ってる」


《ならば、それは記録の“逸脱”だ》


「それでいいわ。私は観測対象じゃない。“存在”としてここにいるの」


《イグジスト・コード》が真の輝きを放ち、空間が再構成される。



シア=ファルネウスは、学院時代の“裏切られた日”を再体験していた。

同級生が笑い、嘲る。

“お前なんか、最初から信用してなかった”という言葉が刺さる。


——でも、彼女はもう、あの頃のままではなかった。


「私は、無知だった。だけど、間違いじゃなかった」


《ルーメン・クロニクル》を開き、ページの中から新たな自分を呼び出す。


「私を信じてくれた人の声が、嘘なわけない。だから、この記録は——書き換えられる!」



レーフィが見せられたのは、幼き日の孤独。


誰にも頼れず、声をあげても無視され、理解もされなかった過去。


《強くなったように見せても、本当はまだ寂しいでしょ?》


「……ああ、そうだな。寂しいよ」


彼女は涙をこぼしながら、笑った。


「でも今は、みんながいる。ゼインも、悠真たちも。私の名前を呼んでくれる人がいる」


彼女の《リベル・ノート》が開き、今この瞬間を新しい“章”として記録する。



ゼインの記録には、“虚無”しかなかった。


ただ闇。

記録も過去も、何も残っていない空白の空間。


《お前には、記憶がない。記録される価値もなかった存在》


だが——


「……なら、これから刻むだけだろ」


彼は無から拳を放つ。

《パラドクス・ドライブ》が虚無に轟き、可能性の断片が炸裂する。


「俺は“何者でもなかった”から、何者にもなれる!」


その一撃が、虚無を打ち砕いた。



——そして、七人は再び中心に集結する。


かつての痛み、選択、喪失を乗り越えた彼らは、ひとつの軌道に向かって進む。


観測干渉——突破完了。


《オーバーザーバー》の演算がわずかに揺らぎを見せる。


七つの“今”が、“未来”へとつながりはじめる。

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