第62話「選ばれなかった声」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
観測槍が撃ち込まれた瞬間、《リ・オブザーブド》は核を揺らがせ、異形の構造体が崩壊し始めていた。
しかし、それは終わりではなかった。
むしろそれこそが、すべての始まりだった。
空間が静止し、世界がまるで「深呼吸」をするかのように間を置いた後——
——それは現れた。
《オーバーザーバー》。
空間の“奥”、観測すら届かなかった裏側から出現したそれは、形を持たなかった。
ある者には、白いローブを纏った賢者に見え、
ある者には、鏡のような何かに見え、
そして悠真には——
「……俺自身?」
——全く同じ顔をした《もう一人の結城 悠真》に見えた。
《観測の全記録を確認。記録、重複。世界線干渉の最大値を超過——是正行動へ移行》
無機質な声で語るその存在は、だが明らかに“人間ではなかった”。
「お前は……何者だ」
《我は選定者にして調律者。全記録の補完存在。観測されたすべての是非を判定し、超越の可能性を閉じる者》
エーリカが驚愕の声を漏らす。
《……“観測の終端補佐”プログラム。観測そのものを終わらせる、最終プロトコル……!》
それは、すべての選択肢の「収束」を強制する存在だった。
分岐も揺らぎも、失敗も後悔も許されない。観測の意味を、永遠に「固定」してしまう存在——
「……そんなの、世界の死だ」
セラが呟いた。
◆
そのとき、崩れかけた《リ・オブザーブド》の構造体の一部が、まるで“名乗るように”人の形を取った。
それは、少年だった。
ゼインが驚きに目を見開く。
「お前……! あの時、俺が……!」
「僕は、“選ばれなかったゼイン”。君の中で否定された存在。だけど、今はもう、怒っていない」
穏やかな声。
だが、その言葉は世界を揺るがす重みを持っていた。
「僕たちは、《リ・オブザーブド》から離れる」
《オーバーザーバー》が微かに反応する。
《観測存在の逸脱行動。矛盾拡大中》
だが、少年は構わず言葉を続けた。
「選ばれなくても、価値がある。意味がある。“なかったこと”にしなくていい」
「だから、僕たちは——君たちを、“応援”する側に回るよ」
その瞬間、残された《リ・オブザーブド》の記録群が、七色の光へと変わり、《ラグナ・リリス・ゼロフォーム》の艦体を包み込んだ。
記録武装たちが、さらに進化を始める。
◆
《インデックス・ゼロ:第2段階、開示》
悠真の記録槍が分裂し、それぞれの仲間たちの手元へと導かれる。
レーフィが、新たな刀型記録武装を構える。
シアが魔導書を展開し、あらゆる光を解析・操る。
リオンは双銃を携え、反射する未来を撃ち抜く。
ゼインの拳が再構築され、《パラドクス・ドライブ》が形を成す。
セラは封印していた過去の全記録を融合させ、《イグジスト・コード》を発動。
そしてエリンの手には、観測そのものを録音する純白の羽ペン《グレイス・クォート》が握られていた。
それぞれが、記録の意思そのものを武器として手にし、《オーバーザーバー》の眼前に立ちはだかる。
「お前の“正しさ”には、未来がない。だから俺たちは——違う未来を、選び直す!」
悠真が叫び、ゼロフォームが加速する。
—
《全戦闘記録、次元固定開始。観測最終戦闘、開幕》
《対“オーバーザーバー”、第一段階戦闘領域、転写完了》
空間が多重に折り重なり、戦いの舞台が整えられた。
“観測された世界”のすべてが、今、武器となる。
そして物語は、ついに終局へと踏み出した。
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