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第61話「観測戦争」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《ラグナ・リリス・ゼロフォーム》が、漆黒の空間を切り裂いて進む。


その艦橋から見える先には、巨大な構造体が浮かんでいた。


それは塔のようであり、花弁のようであり、あるいは瞳のようでもあった。


《最終敵性観測存在——《リ・オブザーブド》、視界内に捕捉》


《エーリカ、演算限界を突破します。艦内全知覚領域を共有演算へ》


「よし、全員、臨戦態勢に入れ」


悠真の指示と共に、各個室にいた仲間たちが順にブリッジへと集結していく。



「まるで……世界そのものを観測し返してくるような……いや、それどころじゃない」


リオンが青ざめた声を出す。


《リ・オブザーブド》は、“選ばれなかった記録”の集合体。


それらは捨てられた過去であり、選ばれなかった可能性であり、誰にも望まれなかった未来の断片だった。


「選ばれなかったことが、怒りに変わった……」


セラ=アーデルがそう言った瞬間、《リ・オブザーブド》の周囲に黒い触手のような構造がうねり、まるで観測者たちに“問い”を突きつけてきた。


《お前たちは、なぜそれを選んだ》


《なぜ、あれを捨てた》


《なぜ、我々ではなかった》


「……うるせえ!」


ゼインが叫び、記録武装を展開する。


《記録武装・境界調律形態『アーカイヴ・シフト:ケイオス』》


「俺たちは、お前たちを否定してきたわけじゃねえ。選ばなかっただけだ! けど……今ならわかる……お前たちも、確かに“存在”してたんだ!」



敵性存在の攻撃が始まった。


《観測の逆流》——対象の過去と未来を同時に“破壊”し、存在そのものをなかったことにする力。


それに耐えるには、記録武装を通じて自己の“存在証明”を継続しなければならない。


「私は、私だ!」


レーフィ=シュタインベルグの身体が輝く。


《記録武装・真相起動『ヴェリタス・コード』》


「真実は記録に宿る。誰がどう見ようと、私はここにいると——証明してみせる!」


一方、エリン・グレイスは静かに目を閉じ、胸元の記録核に触れる。


《……全記録同期完了。投射開始》


《記録武装・導記展開『グレイスノート』》


彼女の周囲に現れたのは、過去に彼女が見てきた全ての“やさしさ”の記録。


「……私は、何も選べなかった。でも、あなたたちがくれたものを記録することはできる」


記録の光が黒い触手を焼き払う。



戦闘は熾烈を極め、艦体すらもギリギリの防御を強いられていた。


しかしそのとき——


《最終観測照準、ロック完了》


エーリカが告げる。


「悠真、君の“記録”が鍵になる」


「俺の?」


「君は、“この世界に何を見たか”。その記録が、《リ・オブザーブド》に打ち込める唯一の“正観測”になる……!」


全員の視線が、悠真に集中した。


そして彼は、答えた。


「——仲間と旅して、命を助けて、怒って、笑って、泣いて……全部、全部が“本当”だった」


「俺は……俺の見てきたこの世界が、大好きだ!」


その瞬間、彼の背後に現れたのは、純白の槍だった。


《記録武装・最終形態『インデックス・ゼロ』》


それは、存在しなかったはずの“最初の記録武装”──世界のすべてを記録する“原初の観測槍”。


「行くぞ、《リ・オブザーブド》!」


悠真が叫び、記録の光が空間を貫いた。


槍が放たれたその先で、《リ・オブザーブド》の中心核が震えた。



空間が崩壊する。


だがそれは、破壊ではなく“再編成”。


あらゆる観測の末に——ようやく、“正しさではなく、受容”が訪れようとしていた。


「世界は、完璧じゃなくていい」


「全部が選ばれなくても、意味があるんだ……!」


悠真の言葉と共に、艦はさらなる戦いの核心へと突き進む。


だがその先には、新たな観測の存在、《オーバーザーバー》の影が静かに待っていた。

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過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

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