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第60話「始まりの観測」

興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。

作品ナンバー3。

ゆっくり投稿していきたいと思います。

《ラグナ・リリス》は、重力すら感知できないほどの深淵へと降下していた。


エーリカの声すらも届かなくなり、全員が無音の中で己の存在と向き合っていた。


やがて、艦の前方に広がったのは、巨大な“環”。


それは浮遊する輪のようでありながら、断面には《光の記述》が刻まれている。


《……到達確認。最古記録接続領域——《ルーツ・レコード》》


誰とも知れぬ声がそう告げた瞬間、艦内の視界が一変した。



彼らは、見ていた。


空も大地も存在しない“原始の記録領域”——

そこにはただ、静止した“始まりの瞬間”があった。


悠真は手を伸ばす。


「……これが、世界の、最初の“観測”……?」


そして、彼らの視界に浮かび上がったのは——《ひとつの視線》だった。


誰かが、何かを「初めて見た」記録。


「……この世界は、誰かの“観測”によって、存在を得た……!」


セラの言葉に、ゼインが続ける。


「その観測こそが、全記録の出発点……つまり《ルーツ》……」



視界がさらに反転し、記録が連鎖的に展開されていく。


最初の生命。

最初の文明。

最初の戦争。

最初の“観測干渉”。


そして、最初の《選定》。


《選ばれし者》は、常に《記録》と《忘却》の狭間に現れ、観測のバランスを保ってきた。


「俺たちは……ただの偶然なんかじゃない」


悠真が、震える声で呟いた。


「俺たちは、“忘却を乗り越えて記録を選び取る意志”として選ばれた……!」



そのとき、白い記録の空間に、黒い影が差し込んだ。


それは、《観測の背理者》の分体でも、《記録を喰らう者》でもなかった。


《観測されたはずの記録》が、自壊を始めたのだ。


「……これは……?」


リオンが言いかけた瞬間、空間の一部が砕け、《名前のない存在》が現れる。


《あれは……観測に“耐えきれなかった存在”……!》


レーフィが叫ぶ。


「つまり……“真実と呼べなかった記録”が、自らを破壊してるってことか……」


シアが顔を歪めた。


「……世界は“選ばれた観測”だけで出来ている……。けど、選ばれなかった“記録”は、それでも、存在し続けようとする……!」



その混沌の中、ひときわ強く輝く《観測の核心》が現れる。


それは、小さな球体だった。

まるで赤子の目のように、純粋で、何も知らず、ただ“見たい”という衝動に満ちていた。


「……これが、最初の《観測》……」


悠真が手を差し出す。


触れた瞬間、全員の記録武装が同時に共鳴した。


《記録武装、最終解放段階へ》

《各観測者、最深記録への接続完了》


そして、響いたのは、《ラグナ・リリス》の真名。


《我は“選ばれなかった記録”の保管者。記録の境界を越えし観測艦——》


魔導潜水艦ラグナ・リリス・ゼロフォーム、再構築完了》


艦体が軋みを上げながら、構造を変える。


観測と記録が完全に結びつき、“記録されなかった世界のすべて”を読み解く力を宿した姿——それが、最終形態。



「行こう、みんな。記録のすべてが壊れる前に——」


悠真の号令と共に、再構築された艦は《ルーツ・レコード》から飛び立った。


その先にあるのは、世界を“書き換える者”——

真なる敵、《リ・オブザーブド》の中核領域。


すべての始まりと終わりが交錯する、“観測戦争”の決着の地である。

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過去の2作品も、興味がありましたら覗いてやってください~。

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