第53話「観測なき夜明け」
興味を持って覗いていただきまして、ありがとうございます。
作品ナンバー3。
ゆっくり投稿していきたいと思います。
沈黙が戻った《終末回廊》最奥――
だがそれは、嵐の前の静けさだった。
「記録転送完了。ラグナ・リリス、全機構の同調率98.7%。エーリカ、次の指示を」
《了解。これより戦域拡張に伴い、魔導収束炉を第二臨界段階へ移行。乗員、連携フェイズBへ移行してください》
悠真たちは再び《ラグナ・リリス》へと戻っていた。
《終末回廊》の内部空間はまだ崩壊していないが、《観測されざる存在》との干渉によって、外部空間に異常が発生していた。
「……また、空がひび割れてる」
エリンが息を呑んだ。
スクリーンに映し出される外の世界――現実空間そのものが断続的にねじれ、時折、裂け目から“こちらを覗く目”が見える。
「ヤツらが……外側から、空間そのものを侵食してる」
セラが低く呟く。
彼女の視線は鋭く、《記録武装:紅碧ノ鍵》の反応を静かに確認していた。
「まだ来る気かよ……」
リオンは苦笑しつつも、艦内戦術モニターに目を走らせていた。
彼の記録武装《封剣:クレア=フェリオ》はまだ“熱”を帯びていた。
先の戦闘で使用した力は、未だ完全には戻っていない。
だが、悠真は静かに言った。
「戦うしかない。俺たちがここで止めなきゃ……観測そのものが崩れる」
その時――
《警告。外殻第七層に敵性存在、侵入兆候確認。解析不能構造体、複数体。敵性コード:リ=オブザーブド・スレッド》
「また来たか……!」
ゼインが即座に艦の制御端末に指を走らせる。
彼の記録武装《超越補正:イレギュラ・コード》が輝き、艦の情報処理層と直結した。
「敵の時間座標が崩壊してる。正面からの迎撃は……難しい。でも、やれる」
「ラグナ・リリス、迎撃モード移行。戦闘配置!」
悠真の号令と同時に、艦全体が低く震えた。
魔導推進炉が轟音をあげ、《観測加速レール》が起動。
次元震動に合わせて空間干渉兵装が展開された。
「照準、補助するわ!」
エリンが並列思考補助を担当、セラが解析した敵の干渉波をもとに射線計算を開始。
レーフィが通信干渉を制御しながら敵の動きを“言葉”として予測する。
「視えた、敵の心の軌跡……今、ここ!」
砲撃が放たれる。
超高密度の魔導圧縮弾が時空を裂き、敵性存在の一部を撃ち抜いた。
だが――
《解析不能存在、再構成開始。再生速度:通常存在比3600%》
「なんて再生速度……!」
だが、次の瞬間、リオンの《封剣》が雷をまとって起動する。
「なら、一撃で消すだけだ!」
彼の攻撃が雷の奔流となって敵の中枢部を貫いた――が、それでも“観測”は崩れない。
「……時間がない。向こうが完全に“こちら”を観測する前に、こっちが突破しなきゃ」
悠真の言葉に、全員が頷いた。
次なる目的地は、《ターミナル・ゼロ》を抜けた先――《最深域:観測境界層》。
そこには、この世界そのものを創造した存在の“意志”が封じられているという。
《エーリカより提案。魔導潜水モードによる時空層潜航を推奨。内部環境の安全が保証されないため、全乗員に精神干渉耐性の強化を》
「……行こう」
悠真が静かに言った。
「この先で、全てが繋がる」
そして――ラグナ・リリスは再び深淵へと潜航を始めた。
その先に、世界の始まりと終わりが待っていることを、まだ誰も知らなかった。
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